技能実習生として、日本へ行ったNhan(ニャン)さん。日本での仕事経験をもとに、ベトナム人に日本の働き方を伝えたいと考えるNhan(ニャン)さんへお話を伺いました。
海外への憧れ
――日本に行くまでの経緯を教えてください
高校卒業してからすぐに、ベトナムの製造会社で3年間働いていましたが、海外で働いてみたいと強く興味を持つようになりました。その後は送り出し機関で6ヶ月、日本語とマナーを中心に勉強し、日本で3年間実習生として働きました。
――海外に興味を持つようになったきっかけは
きっかけは3つありました。
1つ目は、父親の友人が韓国に実習生として行った話を聞いて、父親から「海外に行ってみないか?」と提案されたことです。海外へ行く憧れがあって、自然と「行きたい」という気持ちに変わっていきました。
2つ目は、海外で働いて、今よりも自分の貯金を増やすことです。
3つ目は、その国の言語を勉強するだけではなく、働き方を勉強したいと思ったからです。
――日本を選んだ理由を教えてください
日本と韓国で迷っていました。そこで一度、韓国に行こうと決めて、韓国語を勉強していました。しかし数カ月たったころ、世界金融危機が原因で、韓国側が実習生の受け入れを中止することになってしまったんです。
そこで、実習生の枠があった日本に「行きたい」と強く思い選びました。日本に決まったことは、「なにか運命があるかもしれない」と思いました。
働き方を学びに
――実際、日本で働いてみてどうでしたか
本当に楽しかったです。職場の方はとても温かく、家族のようでした。以前から、私は仕事をすることが大好きなんです。休日なんていらないから仕事をさせてほしい、そう思うときもあるんですよ。
日本の職場では土曜日は1ヶ月2回が休日、日曜日は必ず休日があって、私には仕事の休みが多く感じました。給料についても、日本入国前から伝えられた通りで、残業代も支払っていただきました。
――仕事のどのようなところが楽しかったですか
仕事は毎日、確かに同じかもしれない。しかし、必ず仕事中に問題が起きます。
その問題を解決できれば、これまでよりもずっと前に進むことができる。
それが本当に楽しいと思うんです。解決につながるたびに、私の心が喜びに変わります。
――仕事の問題解決で、心がけていたことはありますか
簡単なことは自分で見直して解決します。機械がおかしい、物の品質が悪いと気づいたり、自分で解決できない難しい問題が起こった時に、すぐに上司に報告することを心がけていました。
――報告に対して、上司はどういう対応でしたか?
「すぐに報告してくれてありがとう」と毎回感謝してくれました。
報告や、相談を一番多くした私が2年目になったときは、ときどき、課長から新たな問題を相談されることがありました。
「これ、どうするべきだと思う?」と、意見を聞いてくれることがあったんです。その時、自分が信頼されている気がして本当に嬉しかったです。
一緒に仕事をして、任せてもらい、信頼しあえる環境があることが、仕事が大好きな理由です。
――問題が発生したときに、気を付けていたことはどんなことでしたか
問題が発生するたびに、ベトナム人の自分と、課長とリーダー、必ず全員で集まり、解決法を話し合っていました。日本人だけで集まって解決することはなかったと思います。気を付けていたのは、どんなことも日本語で話す努力をするということです。
当初はN4くらいでしたが、日本にいる時は、休日は必ず日本語教室に毎週勉強しに行っていました。ずっとかかさず会話から勉強し、仕事場でも日本語で話す練習を積極的に行いました。結果、帰国後にはN3を取得することができました。
――すばらしいですね。職場で印象に残っている人はいましたか
課長はとにかく優しかったです。私がとても信頼する人です。よく、ベトナム人実習生をご飯につれていってくれました。
優しい人ですが、仕事では怖く、真剣なイメージでした。しかし、決して私に怒ったりはしませんでした。
最初から愛情で包んでくれ、普段からのコミュニケーションをどこまでも大切にしてくれました。これが日本の働き方なのだと感じました。
「信頼されているな」という事実が嬉しかったんです。偽りなく、ありのままでお互いに話していました。
日本で働くことに嫌な気持ちになったことはないです。私は今でも、日本で仕事がしたいと思っているくらいですよ。
心に情熱を持つ
――帰国後、日本とベトナムで職場環境の違いはどう感じましたか。
もちろん個人差がありますが、特にベトナム人の若者は仕事に対して情熱があまりないように感じます。現在、私はオペレーターとしてベトナム人のまとめ役をしているので、ベトナム人からの話はよくききます。
私の職場のベトナム人は皆、「仕事はだいたいでいい、お金を稼げたらいい」と思っているようです。人から言われた仕事を、ただそのまま行動するだけの機械として動いているだけで、心からの情熱で仕事をしたがりません。
理由は、仕事に対する感謝や役割を理解できていないところと、給料だけのことを考えて働くしかないと思っていることがあります。
しかし一方で私が日本で感じたのは、日本人は仕事にどこまでも自信があり追求心があり、情熱をもって働いているように感じました。
とにかく、仕事は安全を大切にすることが重要です。わからないこと、不安はすぐに先輩に聞いて、自分で勝手に判断しないように気をつけるなど、なにか問題が起きたらすぐに相談するなどです。
当たり前のことですが、この基準がとても大事ということがわかりました。みんなできているようで、ベトナム人にとってこれが難しいんですよ。
私の周りの日本人はそうやって努力を続ける方ばかりだったので、ベトナム人をどうやったら日本人のようにできるかということを考えました。
――ベトナムの職場環境について、どのような部分を改善したいと考えていますか
日本に行き、働き方を勉強しましたが、ベトナムに戻った今、日本での当たり前はベトナムでの当たり前ではないから、仕事場は汚くてもそのまま、やる気がみられない働き方などを目撃し、いろいろ改善したいと思ったんです。
私は、仕事に対して一人ひとりが持つべき使命を教えたいと思っています。具体的には、小さいことから伝えていくように心がけます。みんなが理解できるまでそれを続けていくことで習慣化されていくのです。
また、日本の働き方とは違う部分を指摘し、丁寧に説明をしています。わからないと言われれば、何度でも説明をしました。それをなんども繰り返して、できるまで直していく丁寧な作業がベトナム人従業員にとって大切であると感じました。
あとは職場環境についてですかね。
日本の製造業などの会社には、「5S(「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字をとった言葉)」という習慣があります。
日本の会社が、ごみをわけて現場を綺麗にするという規則があり、職場環境が綺麗になるだけで、生産性や効率性があがります。それを懸命に教えようとしてますが、現場は全く気にしてないので、その部分をどうやって説明して、理解してもらえるかということを考えています。
すぐにできないので、できるかぎり全員を毎日チェックし、できないことが起これば、全員を集めて一緒に見直しをしたり、時々2回目のチェックをします。この作業も日本人から教えてもらいました。
日本人が私に教えてくれたこと、その上で家族のように接してくれたあの温かさを感じ、ベトナム人のみんなにも感じたことをそのまま伝えられたらと思っています。
――これからのベトナムと日本の関係性について、理想を教えてください。
家族や兄弟みたいな存在になっていくことを望んでいます。日本人の働き方をもっとたくさんのベトナム人に伝えて心から仕事を楽しむことの大切さ、使命について教えていってあげたいと思います。
今でも、課長と連絡を取り合っています。お互いの近況など、仕事の相談をされることもあります。
そうやって今でも信頼関係があります。時が経っても、日本人は真心をもって今も接してくださいます。本当にもう一度機会があれば、日本で働きたいと思います。
――今後の目標はありますか
起業したいと思っています。購買会社を立ち上げて、日本の製品を購買したいんです。
日本に関するものが好きだから、これからも日本のことを知ってほしいと感じています。
本当は、ベトナムで作って日本に売りたいなぁとも考えましたが、これからの課題です。
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