日本の製造業でCADエンジニア(技術者)が不足しています。多くの日本企業がCADオペレーターの派遣を受け入れたり、海外でのオフショア開発をするなどの努力をしていますが、こういったやり方にもリスクがあるとご存知でしょうか。
ここではCADエンジニア不足の原因と解決策についてまとめました。CADエンジニアとCADオペレーターの違い、日本で人気のCADソフトウェアについても解説します。
2DCADと3DCADの違いは?利用されている業界は?
CADとはComputer-aided Designの頭文字を取った略称で、設計製図のためのコンピューター支援ツールを意味します。身の回りの工業製品や建築、電子機器の内部設計など、幅広い分野の製造業において不可欠なツールです。
CADの長所と利用のメリット
CADを利用する長所として、設計時の初歩的な計算ミスを回避できる、設計修正が簡単、大量の設計図でもデータのため(紙と違って)場所を取らない、データ化された設計図は共有や転送が簡単である、などが挙げられます。
CADの種類は大きく2つ
CADには大きく分けて2D(二次元)CADと3D(三次元)CADがあります。2DCADは平面作図に使われ、3DCADは立体作図に使われます。
3DCADは重量計算、強度設計なども行い、ソフトウェアにはハイエンドからローエンドまでさまざまなタイプがあります。一般的に3Dの利用料は2Dよりも高額で、ハイエンドになるほど利用料は高くなります。
CADが利用される業界はおもに3つ
CADが設計に利用される業界は、大きく分けると建築、機械、電子の3つです。汎用CADと呼ばれるCADソフトウェアは一応すべてに対応しますが、業界ごとにきめ細かく対応するCADソフトウェアもあり、それぞれ建築用CAD、機械用CAD、電子用CADと分類されます。
日本企業に人気のCADソフトウェア6選
CADの有名ソフトウェアには、AutoCAD、IJCAD、CATIA、SOLIDWORKS、NX、Inventor、VectorWorksなどがありますが、ここでは日本企業に人気のあるCADソフトウェアを6つ取り上げます。
Auto CADとJW CAD
Auto CADとJW CADは互換性が高く、どちらかを経験していれば、もう一方も操作できるといわれます。
- AutoCAD
AutoCADは米国AUTODESK社が開発したCADソフトウェアです。CADソフトウェアの草分け的存在であり、操作が簡単で汎用性が高く、アプリケーションも多数あるため、圧倒的なシェアを誇っています。AutoCADの3Dの操作経験者は2D経験者に比べると少なく、実務経験があるAutoCADの3D操作経験者はさらに少なくなります。
- JW CAD
JW CADは日本で開発された汎用2DCADのフリーソフトウェアです。日本企業の製図オフショア拠点などでよく利用されています。最大の利用メリットはCADのNo.1シェアを持つAutoCADと互換性があることです。
RevitとTekla
RevitとTeklaに直接の互換性はないのですが、どちらかのソフトウェアの操作経験者なら、トレーニング次第でもう一方も操作出来るようになる、とみなされることも多いようです。
- Revit
Revitは建設業界で近年利用されるBIM系3Dソフトウェアです。BIMとは、Building Information Modelingの略で、設計だけでなく建築工程および建造物のライフサイクルまで一貫して管理する建設向け3Dソフトウェアです。開発元はAutoCADと同じ米国AUTODESK社です。海外のエンジニアリング系大学でも学習者が多く、卒業後の専門学校(3~6か月で修了する)でも教えられています。
- Tekla
Teklaは大手鉄鋼グループ、ゼネコンなどが使っているBIM系3Dソフトウェアで、米国Trimble社が所有しています(Trimble社は2011年にフィンランドのTekla Corporationを友好的に買収しました)。インフラストラクチャーの建設や、エネルギー産業の施設など、巨大で複雑な建築物の設計製図を得意とします。
SOLIDWORKSとInventor
SOLIDWORKSとInventorはどちらもメジャーな機械用CADであると同時に、電気用CADにも連携できる特徴があります。
- SOLIDWORKS
SOLIDWORKSは米国ダッソー・システムズ社の開発した3DCADソフトウェアです。ダッソー・システムズ社は1981年創立の 機械系CADのメジャーブランドであり、SOLIDWORKSはIBMやメルセデスベンツ、ホンダ、ボーイング社といった、コンピューターから自動車、航空機まで幅広い製造業のクライアントに利用されています。
- Inventor
Inventorは米国AUTODESK社が開発した製造業向けの3DCADです。Inventorの最大の強みは、同社の発売するAutoCADで引いた設計図も読み込めることです。オートデスク社のAutoCADはCADの黎明期からのトップブランドであるため、過去にAutoCADを利用して作った設計図を読み込むニーズは根強いものがあります。
CADエンジニア(技術者)とCADオペレーターとの違いは?
CADエンジニア(技術者)とCADオペレーターの違いは、設計知識の有無や技術への理解度の違いとされます。基本的にはCADエンジニアが設計をしたものをCADオペレーターがトレース(製図)しますが、CADオペレーターの中には設計者の指示通りの作業だけでなく、かなり技術的なことまで理解、判断できる能力が高い人もいます。
CADの資格や検定は?
日本で有名なCADの資格試験に、一般社団法人コンピューター教育振興協会が主宰する「CAD利用者技術者試験」があります。CAD利用者技術者試験では以下の3つの試験が行われています。
- 3次元CAD利用技術者試験
- 2次元CAD利用技術者試験
- 2次元CAD利用技術者試験基礎
CADエンジニアやオペレーターの中には、現場のOJTでCADを習得した人も多く、資格取得だけでなく、実務経験を重視して採用を行う企業も多いようです。
CAD人材が人手不足の原因とは?
CADエンジニアとCADオペレーターは、特定の業界に限らず人手不足です。建築用CAD、機械用CAD、電子用CAD、すべてのCAD技術者が足りていないのはなぜでしょうか。
理系人材の減少と若手エンジニア不足
日本では少子化と理系離れにより、エンジニアを目指す人材数が減っています。エンジニア育成の裾野が小さくなることで、CADを扱えるハイレベルな技術エンジニアも減っています。
CADスキル+複合的な能力の要求
CAD人材とスキルのミスマッチも起きています。CADのスキルが高いだけではなく、技術的なバックグラウンドと実務経験を兼ね備えた人材が欲しいという、高い要求もしばしばみうけられます。
たとえば「土木建築の現場監督経験、施工経験、事務管理、プラスCADスキルがほしい」など、複合的な要求があるケースも少なくありません。
コストとCADスキルが見合わない
2DCADを使った製図などでは、コストは削減したいが、ある程度以上のCADスキルは譲れない、といったコスト重視のニーズもあります。
日本人の中堅~ベテラン設計技術者やプロジェクトマネージャーが製図までやってしまうと、スキルもコストもオーバーしてしまいます。製図を低コストで要領よくサポートしてくれる若手人材がいればチーム効率が高まります。
CAD人材不足を解決するためには?
ここまで見てきたようなCAD人材不足を解決するため、多くの日本企業がCADオペレーターの派遣を受け入れる、海外でのオフショア開発をする、などの努力をしている現状です。しかし、これらには企業として看過できないリスクがあるのもご存知でしょうか。
CADオペレーター派遣の契約満了後リスク
派遣のCADオペレーターでも能力が高いと認められれば、技術にかかわる重要なところまで任せてしまいがちです。しかし派遣社員は当然ながら、契約期間が切れたらクライアント対応する義務はありません。契約期間満了後に何か起きたとき、対応してくれませんから、企業としてのリスクは高いといえます。
正社員ではない派遣社員に細かなノウハウを引き継がせることも難しいといえます。
海外のオフショア開発拠点は離職率が高い
CAD人材を海外のオフショア開発拠点で雇用する日本企業も増えていますが、中心となる人材を日本に招聘し、数年間トレーニングして送り返すなどの工夫が必要です。また、現地スタッフの離職率の高さも覚悟しておかないといけません。
海外IT業界のオフショア開発人員は引く手あまたのため、1年~2年で仕事内容や待遇への不満を感じて離職してしまうのは普通です。海外では転職への心理的ハードルも低いため、チームマネジメントのコストはばかになりません。
外国人CADエンジニアの正社員採用という解決策
日本人CADエンジニアが人手不足、海外オフショア開発もエンジニア離職率が高い…という悩みを解決するのが、ミャンマーやベトナムなどの海外からCADエンジニアを正社員採用することです。
とくにミャンマーでは国策としてCADエンジニア育成を行っており、能力の高い大卒エンジニアがCAD操作も学んでいます。若手のうちに日本国内で勤務してもらい、日本の企業文化を若いうちに経験させることで、離職率が低くなることも期待されます。
CADエンジニアの就労ビザ(在留資格)は?
外国人採用となれば、まず気になるのはビザの種類です。CADエンジニアの場合、短大、大学、大学院の卒業資格があれば「技術・人文・国際業務」という就労ビザ(在留資格)で日本での就労が可能です。
「技術・人文知識・国際業務」での来日であれば、技能実習生や特定技能とは異なり、外国人も日本人と同じように長期勤務することが可能です(日本人正社員と同じレベルの給与待遇で正社員雇用することが前提となります)。家族の滞在も許可されています。
日本の就労ビザは何種類?2020年最新情報を行政書士が解説!
外国人CADエンジニアの日本語力は?
前出の「技術・人文・国際業務」という就労ビザの取得条件には、日本語で就労するのにじゅうぶんな日本語能力も求められます。外国人CADエンジニアはどれぐらい日本語ができるのでしょうか?
CADエンジニアを多く輩出するベトナムやミャンマーといった東南アジアの出身者は、一般的に「読み書き」に慣れていません。漢字があまり得意でない人が多く、日本語能力試験のレベルでいうとN3~N4保有がほとんどです。
しかし「読み書き」よりも「話す、聞く」といった対面コミュニケーションが得意な人が多く、勉強熱心で上達も早いといわれます。
ミャンマー人の性格や特徴について
ミャンマー人は性格的にも日本企業と親和性が高いといわれます。ミャンマー人は真面目で優しい性格で、仏教文化で育つため上下関係を重んじ、不正を嫌います。日本企業内で組織を作る上でもきちんと自分の役割を理解し、協力してくれる傾向があります。
旧英国領であったミャンマーのエンジニアは英語表記に強く、英語圏で開発されたCADソフトウェアとの相性もいいといえます。
外国人エンジニアのCADスキルチェックはどうする?
外国人CADエンジニアを採用するにあたって、スキルチェックはどうすればいいのでしょうか?海外ではソフトウェア専門学校(日本でいえばソフトウェア教室)の修了証明書(Certificate)が提出されることが多いのですが、これは大学の卒業証書などとは違い、スキルの証明になるものではありません。
ミャンマー人CADエンジニアを紹介している株式会社OneTerraceのミャンマー支社では、候補者に試験用のPC環境を用意し、制限時間内でCAD製図を行う実技試験を受けてもらっています。
日本企業の技術部門長やプロジェクトマネージャーによる最終面談前にこの実技試験を受けてもらい、試験後の面談でさらに技術の理解度を確認します。
株式会社OneTerraceが優秀なミャンマー人CADエンジニア採用をお手伝い
株式会社OneTerraceミャンマー支社では、日本の製造業を支えるCADエンジニアを正社員として育てたい、という企業様のご要望に応えるため、ミャンマーの難関大学出身のCADエンジニアをご紹介します。
ミャンマー支社GMの横山は2015年からミャンマー在住で、採用担当者様に豊富な現地情報や現地事情をご提供することが可能です。ご質問やご相談は日本語で承ります。お気軽にご連絡ください!
【ミャンマー人材採用のご相談はこちら】
hiroaki.yokoyama@oneterrace.jp(担当:横山)
03-3527-9841(株式会社One Terrace東京本社)
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