はじめに
グローバル化がますます進行する現代社会。
国際競争力がますます高まる昨今の現代社会においては、海外の優秀な人材をいかに獲得するかが焦点となっています。
本シリーズでは「外国人数のTOP7国別の特徴や接し方と日本語指導方法」と題し、日本に留学、永住、特定技能実習生として活躍する外国人材の国別の特徴や接し方と日本語指導方法をご紹介しています。
第三回目は「韓国人材編」です。
韓国人就労者の在留資格別では、特別永住者が最も多く、次いで永住者、技術・人文知識・国際業務、留学、日本人の配偶者、家族滞在と続きます。
隣国の韓国との友好的な関係を築いていくことが何より大切なのは言うまでもありません。
本記事では、前半で韓国人の特徴や仕事観を、後半で韓国人に効果的な日本語指導方法を解説していきます。
目次
はじめに
①韓国人から聞いた韓国人の特徴や考え方
1-1 韓国人は勤勉でスピード感がある
1-2 韓国人は自分の意見を譲らない
1-3 韓国人は上下関係を軸に人間関係を築いていく
②韓国人に日本語を教える上での有効的な方法
2-1 韓国語との類似点を指導する(文法、表記、語彙、助詞、敬語)
2-2「ザ行」「ツ」「ヅ」の発音を指導する
まとめ
①韓国人から聞いた韓国人の特徴や考え方
1-1 韓国人は勤勉でスピード感がある
韓国人は日本人同様勤勉で、こと仕事においてはスピード感があります。
ご存じの方も多いと思いますが、韓国は言わずと知れた学歴社会。
名門大学に入学し、一流企業に入社することが何よりのステータスですので、韓国では大学受験に向けた準備を中学3年生の頃から始めます。
また、日本の会社以上に残業時間が多い韓国社会では、入社後もより高い稼ぎやポストを獲得するために、仕事に打ち込む人が多いと聞きます。
スピード感については、例えば、何かのプロジェクトがあったとして、日本人は事前準備からしっかり計画を立て、石橋を叩いて渡るように時間をかけて進めます。
対する韓国人は、いち早くプロジェクトを始動し、問題が起こったら都度解決するというやり方です。
これは、韓国の「빨리빨리(パルリパルリ/早く早く)」という言葉から来ていると言われています。何事もスピード感を持って、素早く物事を進めることが韓国人の価値観です。
ポイント:韓国人は勤勉でスピード感がある人が多いです
1-2 自分の意見をはっきり主張する人が多い
韓国人は自分の意見を通し、はっきり主張する人が多いです。
韓国人ははっきりと自分の意見を言うので、仲間との協調性を大切にする日本人にとっては、真逆の考え方になります。
勿論、日本の会社内でも、時には強く意見しなければならない時もありますから、韓国人特有の意見の仕方が決して悪いということではありません。
ポイント:自分の意見をはっきり主張する人が多い
1-3 韓国人は上下関係を軸に人間関係を築いていく
韓国人は日本人以上に、上下関係を軸として人間関係を構築しています。
仕事やプライベートで年長者を敬うのはもとより、家族間でも尊敬語を使って話す習慣があるほどです。
まず韓国人は初対面の時に年齢を確認し合うことで知られています。
相手が一つでも年齢が上だとわかれば、その時点から尊敬語を使うのです。
日本語にも尊敬語はありますが、家族や会社などの「ウチの関係」に使いません。
韓国人の上下関係は日本人が考える以上に律儀です。
ポイント:韓国人は上下関係を大切にしている人が多いです
②韓国人に日本語を教える上での有効的な方法
2-1 韓国語との類似点を指導する(文法、表記、語彙、助詞、敬語)
韓国語と日本語はよく似ています。
文法構造、文字表記、語彙それぞれを取り上げますが、韓日両言語が似ているからこそ、韓国人は日本語を習得しやすいと言えるでしょう。
両言語の類似する部分が学習上で有利に働くよう、指導することが大切です。
文法構造
韓国語と日本語の文法構造は同じです。
両言語共に、主語(S)+目的語(O)+動詞(V)の構造であることがわかります。
- 主語(S) 目的語(O) 動詞(V)
日本語: 私は 日本語を 勉強しています。
韓国語: 저는 일본어를 공부하고있습니다.
文法構造が同じなので、韓国人は文単位で日本語をアウトプットしやすいです。
主語(S)が「私は」の場合、日本語と同様に韓国語も省略することができます。
表記
韓国語と日本語に共通している文字表記は、漢字です。
1948年「ハングル専用法」が制定されたことにより、公文書はハングルで書くことが定められ漢字は廃止になりました。
親世代では読み書きができても、多くの若者は漢字をよく知らないのはこのハングルナショナリズムが背景にあります。
しかしながら、韓国語から漢字表記が全く消えたわけではありません。
現に韓国の中学校や高等学校では漢文の授業で扱われています。
また、最近の韓国国内では「小学校や中学校の教科書の中にハングルと併用して漢字表記も載せるべきだ」との意見も出ているそうです。
語彙
韓国語と日本語の語彙の発音は、似ているものが多いです。
日本語 | 韓国語 |
気分 | 기분 (発音:キブン) |
無理 | 무리 (発音:ムリ) |
道具 | 도구 (発音:ドグ) |
速度 | 속도 (発音:ソクド) |
かばん | 가방 (発音:カバン) |
韓国語を発音するときは、韓国語特有の口の形があるので、日本語の発音と全く同じというわけではありません。
しかし、上記の発音は限りなく日本語に近い音だと言えます。
両言語の発音が似ていることは、日本語を学ぶ韓国人にとって非常に有利です。
助詞
韓国語にも日本語と同様、助詞があります。
「が」「は」「を」「と」「で」「に」「の」「から」「も」「の」などの助詞が韓国語にも存在しますが、韓国語の助詞の数は日本語よりも多いです。
以下で、日本語よりも韓国語のほうが数が多い助詞を紹介します。
日本語の助詞 | 韓国語の助詞 |
が | 이(イ)/가(ガ) |
は | 은(ウン)/는(ヌン) |
を | 을(ウル)/를(ルル) |
と | 와(ワ)/과(グォワ) 랑(ラン)/이랑(イラン) |
で | 로(ロ)/으로(ウロ) |
韓国語の助詞の数が多い理由として、助詞の直前に来る名詞次第で助詞の活用が変わることや文語体か口語体かで使うべき助詞が変わることが挙げられます。
次項で取り上げますが、助詞によっては尊敬語が存在するものもあり、日本語以上に韓国語の助詞は複雑です。
敬語
韓国語にも日本語と同様、敬語があります。
尊敬語、謙譲語、丁寧語それぞれありますが、韓国語に限っては、下記の二点が日本語の敬語と異なります。
- 韓国語は親族や身内にも尊敬語を使う
- 韓国語はウチである社内の者に謙譲語を使わない
「絶対敬語」と呼ばれる韓国の尊敬語は日本語と大きく異なります。
自分より年上あるいは立場が上の者に対しては、尊敬語を使わなければならないというのが韓国語のルールです。
また、韓国語の助詞にも尊敬語があります。
日本語の助詞 | 韓国語の尊敬語 |
が | 께서(ケソ) |
は | 께서는(ケソヌン) |
に | 께(ケ) |
そもそも日本語の助詞に敬語はないですから、韓国語の敬語は日本語以上に複雑です。
日本語の敬語は韓国人にとって覚えることも少なくて済むので、韓国人は習得しやすいと言えるでしょう。
2-2 「ザ行」「ツ」「ヅ」の発音を指導する
韓国語には日本語の「ザ行」「ツ」「ヅ」に当たる音がありません。正確に言うと、「ザ行」の2番目「ジ」(同音の「ヂ」も同様に扱う)は日本語の発音とほぼ同じです。
本記事では「ザ」「ズ」「ゼ」「ゾ」と「ツ」「ヅ」に焦点をあてて見ていきます。
日本語発音 | ⇒ | 韓国人発音 |
ピザ | ⇒ | ピジャ |
スズキ(鈴木) | ⇒ | スジュキ |
ゼンゼン(全然) | ⇒ | ジェンジェン |
カゾク(家族) | ⇒ | カジョク |
ヒトツ(一つ) | ⇒ | ヒトチュ |
シマヅ(島津) | ⇒ | シマヂュ |
日本語発音「ザ」を韓国人が発音すると「ジャ」、「ズ」は「ジュ」、「ゼ」は「ジェ」、「ゾ」は「ジョ」、そして「ツ」は「チュ」、「ヅ」は「ヂュ」になりがちです。
これらの音を重点的に発音指導すれば、韓国人の話す日本語を、より日本人らしい発音に近づけることができます。
これらは韓国語に存在しない音なので、教師は根気強く指導していくことが必要です。
まとめ
本日は、韓国人材の特徴や接し方、韓国人の日本語指導方法についてお話してきました。
韓国人から聞いた韓国人の特徴や考え方は?
- 韓国人は勤勉でスピード感がある
- 韓国人は自分の意見を主張する方が多い
- 韓国人は上下関係を軸に人間関係を築いていく
韓国人に日本語を教える上での有効的な方法は?
- 韓国語との類似点を指導する(文法、表記、語彙、助詞、敬語)
- 「ザ行」「ツ」「ヅ」の発音を指導する
雇用主と韓国人材雇用者が円滑に仕事をしていけることが何より大切です。
韓国人材とコミュニケーションを取りながら、日々の業務を進めていきましょう。
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