外国人材を社内に迎え入れる際の事前準備にお困りではありませんか。
実際に外国人材を受け入れるとなった場合、何から始めればいいのか、受け入れ体制はどのように整えればいいのか、具体的な方法を知りたい方も多いのではないでしょうか。
当記事では、社内に外国人材を受け入れる際の具体的な支援方法について、出入国在留管理庁の最新資料「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策(令和3年度改定)」参考に、具体的な取り組み、先進的な取り組みを実務レベルまで落とし込み、解説します。
外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策とは何か?
外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策(以下、「総合的対応策」)とは、日本政府が、外国人材の受入れ・共生のための取組を、より強力に、かつ、包括的に推進していく観点から、平成30年12月に決定しました。令和2年、令和3年と、これまで2度改定されています。
以下、総合的対応策の基本的な考え方です。
「総合的対応策は、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するため、外国人材の受入れ・共生に関して、目指すべき方向性を示すものである。」
「政府としては、条約難民や第三国定住難民を含め、在留資格を有する全ての外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れていくという視点に立ち、外国人が日本人と同様に公共サービスを享受し安心して生活することができる環境を全力で整備していく。」
全ての外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れていく、というのが総合的対応策の肝要です。共生社会の実現について、受け入れる側の日本人と、受け入れられる側の外国人が、たがいに共生の理念、日本の風土・文化を理解することが必要不可欠であると説いています。
総合的対応策には6つのカテゴリーがある
総合的対応策の6つのカテゴリーがあります。
- 外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等
- 円滑なコミュニケーション・ 情報収集のための支援
- ライフステージ・生活シーンに応じた支援
- 非常時における外国人向けの セーフティネット・支援等
- 外国人材の円滑かつ適正な受入れ
- 共生社会の基盤としての在留管理体制の構築
それぞれに具体的な施策が掲げられていますが、以下では6つのカテゴリーそれぞれの現状認識・課題についてまとめていきます。
1.外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等
(1)国民及び外国人の声を聴く仕組みづくりの現状認識・課題
外国人との共生社会を実現するためには、国民や外国人の意見に耳を傾け、仕組みづくりを構築し、客観的なデータを収集することが必要です。
しかしながら、国民及び外国人の意見に耳を傾けることが不十分であるため、施策の企画・立案・実施に反映させる仕組み構築に時間がかかっています。
加えて、我が国に在留する外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れるという視点に立つこともより一層求められています。
(2)啓発活動等の実施の現状認識・課題
外国人との共生社会を実現するためには、外国人との共生の必要性や意義についての国民の幅広い理解が必要です。
とはいえ、言語、宗教、慣習等の違いに起因する様々な問題の発生が懸念されます。
各種啓発活動を推進し、地方公共団体や企業、地域コミュニティ等の意識の向上を図り、法務省の人権 擁護機関における人権相談等の取組の周知を図る必要がありそうです。
2.円滑なコミュニケーション・ 情報収集のための支援
(1)行政・生活情報の多言語・やさしい日本語化、相談体制の整備の現状認識・課題
外国人が我が国で生活するに当たっては、社会生活上のルール等について、分かりやすい形で迅速に情報を入手できることが必要です。
しかしながら、多言語・やさしい日本語化による情報提供・発信が現状広く行き届いている状態であるとは言い切れません。外国人からの生活相談等についても、よりきめ細かなサポート体制構築が必要です。
多言語対応支援をすると同時に、SNS活用していくことは必要不可欠でしょう。
(2)日本語教育の充実(円滑なコミュニケーションの実現)の現状認識・課題
外国人が我が国において生活していく中で、日本語能力が不十分な場合、様々な場面において支障が生じ得ます。
日本で働くに当たっては、業務上必要となる専門的な日本語のほか、生活に必要な日本語を身に付けることが求められますが、外国人にとってはまだまだ負担が大きいです。
外国人に対する日本語教育の取組を大幅に拡充し、円滑にコミュニケーションできる環境を整備することが求められます。
3.ライフステージ・生活シーンに応じた支援
(1)地域における多文化共生の取組の促進・支援の現状認識・課題
人口減少や高齢化が進行する中、地域経済を支える重要な構成員として、外国人住民の役割は重要性を増しています。
しかしながら、地方公共団体における多文化共生の取組はまだまだ不十分です。外国人が安心して生活や就労を開始できるようにするため、地域においては、外国人の支援に携わる機関・個人に対する適切な支援等行う必要がありそうです。
(2)生活サービス環境の改善等の現状認識・課題
外国人が安心して医療サービス等を受けられる環境の整備を図ることが必要でありながら、現状、支援が行き届いているとは言い難いです。また、外国人が日本の交通ルール・マナーを的確に理解できているかといえば、自国の感覚で行動しがちです。
予防接種、感染症対策、福祉サービスの充実、防犯対策、消費者トラブル、法律トラブル、人権問題等にも適切に対処する必要がありそうです。
外国人が生活していくにあたり、住宅の確保が極めて重要なのは言うまでもありません。受け入れ企業が住宅確保を行い、保証人として入居サポートしていくことが求められます。
家賃や公共料金の支払いは、銀行口座を開設しておく必要があります。携帯電話等の日常で使う通信サービスを支援も求められます。
(3)外国人の子どもに係る対策、(4)留学生の就職等の支援は、当記事内では省略します。
(5)適正な労働環境等の確保の現状認識・課題
外国人労働者についても、日本人労働者の場合と同様、適正な労働条件等の確保が極めて重要ですが、外国人労働者は、日本の労働関係法令等に関する知識が十分でない場合も多いのは否めません。
労働条件等に関する問題が生じやすいので、適正な労働条件と雇用管理の確保、併せて、労働安全衛生の確保に努めていく必要がありそうです。
また、ハローワークにおける相談対応の多言語化を図ると同時に、就労の安定を図ることも求められています。
(6)社会保険への加入促進等の現状認識・課題
外国人が生活する上で、社会保険は重要なセーフティネットですが、社会保険への加入手続を行っていない外国人が一定程度存在しているのが現状です。医療保険の利用についても、適正な利用の確保にむけて取り組んでいく必要があります。
4.非常時における外国人向けの セーフティネット・支援等
(1)災害時等の非常時における情報発信・支援の現状認識・課題
非常時に、外国人が 的確な支援を受けられるような体制を構築は依然として不十分です。大規模災害が発生した際には、在留外国人の安否確認等に困難が伴うことから、在京大使館、関係省庁、地方公共団体等の円滑な情報連絡体制構築も必要になります。
(2)新型コロナウイルス感染症の感染予防・円滑なワクチン接種支援等の現状認識・課題
新型コロナウイルス感染症の影響により生活に困難を抱えている外国人に対しては、必要な情報にアクセスできるように情報発信・相談体制を整える必要があります。
5.外国人材の円滑かつ適正な受け入れについては、特定技能制度に特化しているため、当記事内では省略します。
6.共生社会の基盤としての在留管理体制の構築
(1)在留資格手続の円滑化・迅速化の現状認識・課題
地方出入国在留管理官署の窓口が混雑し、在留諸申請のための待ち時間が長時間に及んでいるのは否めません。外国人の負担軽減を 図るとともに、在留資格手続の円滑化・迅速化を図るため、申請手続の合理化を進める必要があります。
(2)在留管理基盤の強化の現状認識・課題
現状では、いずれの省庁の統計においても、どの業種・職種に外国人がどの程度受け入れられているかを正確に把握することができない状況です。
在留資格についての確実な在留審査を実施する必要があり、機能的な在留管理等を実施するためには、法務省の体制を整備することも求められています。
(3)留学生の在籍管理の徹底、(4)技能実習制度の更なる適正化、(5)不法滞在者等への対策強化について、当記事内では省略します。
外国人材を受け入れるための先進的な取組みを紹介
外国人材を受け入れるための具体的で、先進的な取り組みをご紹介します。
入国前後に研修プログラムを取り入れる
入国前後に研修プログラムを取り入れることで、より深い教育支援ができるようになります。外国人材側も入社前に必要な準備ができますし、入社後も仕事上のコミュニケーションが上手くいきやすくなります
安価な社宅費にて借上げ住宅を提供する
住居支援があるかどうかは外国人材にとって重要です。その職場で働くかどうかの判断材料の1つになります。
地域のイベントや社員旅行に参画してもらう
地域のイベントや社員旅行を通じて、外国人材がその土地になじみやすくなりそうです。
休日に市営グラウンドや体育館を借用手配する
市営グラウンドや体育館の手配については、入社当初は、日本人が代わりに手配してあげるといいかもしれません。
母語を理解できる常勤社員が指導担当社員と一緒に安全面・技能面の指導を行う
特定の国の外国人採用が多いのであれば、外国人材の母語を理解できる社員に通訳をお願いし、指導する立場の社員と二人三脚で協力しながら、仕事を支援します。
4~5名に対し1人の専任インストラクターを任命し、日常生活における指導等も含めて支援する
少人数制で管理することで、コミュニケーションが取りやすくなります。専任1対入社した社員全員ではなく、出来る限りで少人数制を導入したほうがいいです。
支援責任者が本人と毎月定期的に面談を実施して、職場や生活上の要望・相談などを聞き取りする
職場や生活上の要望・相談を定例面談するといいです。入社したばかりの頃は、月1回ではなく、週に1回とするなど、頻度を増やしてもいいかもしれません。
個人別の目標の設定と、上長による定期的な評価フィード バックを実施する
設定した個人目標を上長が評価するのは有効です。その際は、評価基準に沿って、フィードバックを返すようにします。評価基準結果を給与に反映させると、外国人材のモチベーション向上につながります。
社内評価試験に合格すると基本給が昇給する賃金改定規程がある
社内評価試験に合格できたかどうかで昇給有無を決める賃金改定規定は、誰が見ても一目瞭然です。社内評価試験とは別枠で、日本語検定を保持しているかどうかも評価項目に設けるのもよいでしょう。
まとめ
今回は、社内の外国人受け入れ体制を構築する具体的な支援方法について、出入国在留管理庁の最新資料を参考に解説してきました。
外国人材が安心して働けるように、政府、企業、組織レベルで取り組むべきことは異なりますが、日本に来ることを選んだ外国人材が日本社会に広く貢献できるよう、会社に尽力したいと思えるよう、支援を整えることが必要です。
初めての外国人採用、外国人雇い入れ時に読む冊子シリーズ、人事向けビジネス英語フレーズなどのお役立ち資料をご自由にダウンロードいただけます。
資料についてのご質問はお問い合わせぺージよりご連絡ください。