外国人採用

19か国の外国籍従業員を抱えるBEENOSグループのCHRO・人事担当者に聞いたキャリア成長し続けられる組織づくりとは?

いち早く外国人材の重要性に気付き、採用に踏み切られていたBEENOS株式会社様。
なぜ外国籍社員を採用するのか。常務執行役員CHROの宮坂 英三様と、人事の船戸 麻美子様にお伺いしました。
取材前のお打ち合わせで「国籍など関係なくガラスの天井がないんですよ」というお言葉に、どのような社内体制を取っているのか大変
気になっていました。
多くの企業様では、様々な理由によって社員のキャリア成長というものが難しくもあるのではないでしょうか。
ぜひ、今回の取材内容から社内でのお取り組みの参考にしていただければと思いますし、外国人採用のきっかけとなれば嬉しく思います。

BEENOS株式会社様について

縮小する1億の国内マーケットから
拡大する74億のグローバルマーケットへ

BEENOSグループは、人・モノ・体験を「日本から海外へ」、「海外から日本へ」と双方向に繋ぐ架け橋となる、”グローバルプラットフォーム”を企業や個人に提供することで、国境を越えたビジネス展開を支援しています。

BEENOS株式会社様_ロゴマーク

会社名  : BEENOS株式会社
本社所在地:〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー7F
代表者  :代表取締役 執行役員社長 兼 グループCEO 直井聖太
URL      :https://beenos.com/

 

ーー外国人採用のきっかけはどのようなものでしょうか。

宮坂様:
BEENOSグループは、越境ECをサポートする代理購入サービス「Buyee(バイイー) http://buyee.jp/」を展開しています。そもそも外国人の方をターゲットとしているので、カスタマーサポートなどネイティブの方が対応したほうがいいということが採用のきっかけでした。事業を始めた初期のころの話です。

 

ーーどのように優秀な外国人の方々を採用されているのでしょうか。

船戸様:
ターゲットの国やエリアの出身者で応募をかけることもありますが、事業自体がグローバルをメインに展開しているため、自然と彼らの方から応募が来ます。例えば、台湾での認知度が高かったり、マーケットの調子が良いと、台湾の方から日本と台湾の懸け橋になりたいと応募が来ることもありました。
会社や事業に紐づいて応募が来ていると思います。

【船戸様】

 

ーー日本を含めて19カ国の外国籍社員の方がいらっしゃるとのことですが、外国籍社員の方の主な業務内容を教えてください。

船戸様:
弊社では、国籍関係なく幅広く採用をしています。何かに特化しているから「この職種に就いて欲しい」ということではなく、ゼネラリストとして働いてもらっています。

マーケティングを担う方もいれば、カスタマーサポートで多言語対応をしている方もいますし、事業企画やサービス企画、エンジニアとして活躍されている社員もいます。

 

ーー外国籍社員のキャリアアップはどのようなものでしょうか。

宮坂様:
外国籍の方だと基本的には日本の経理についての知識はないと思います。しかし、サポート部門の事務スタッフから経理部にキャリアアップした女性社員もいます。

現在エンジニアとして勤務している男性社員の中には、実は元々弊社の1階にあったコンビニで勤務されていた方もいますね。黎明期ですが、弊社代表とよく話すようになり、エンジニア志望で来日したということがわかりました。その時は経験もありませんでしたが、カスタマーサポートから経験していただき、もともと持っていたホスピタリティで非常に活躍してくれました。最終的には彼自身が独学で勉強を重ねていた努力が実り、エンジニアとしてキャリアアップした例もあります。今も所属していますよ。

 

ーーキャリアパスは個人に寄り添って対応しているのでしょうか。

宮坂様:
弊社は多くの事業ドメインを保有していますし、事業創造をDNAに持ち、新規事業にも積極的です。新しく事業ができたり、無くなったり、時にはくっついたりすることもあるので、ある程度組織として柔軟に対応したいと考えています。

外国人採用をする1番のメリットは彼らが持っている言語や技術だと思います。しかし、それを強みにすることは逆に彼らを1つのポジションに依存させてしまう状況となり、別のことを経験したくてもそれが叶わず、結果キャリアの衝突に繋がってしまうと思っています。

「希望があれば他のことも経験できます」と実行するためには事業成長が欠かせません。よって、オーダーメイドのようにキャリアパスが描きやすい組織を意図的に作っています。結果としてそれが定着率の高さにも繋がっていると感じていますし、会社の成長にも繋がっていると思います。

 

ーーどのような評価制度を設けているのでしょうか。

宮坂様:
評価基準は「能力」「パフォーマンス」「行動評価」の3つで評価しており、給与と賞与に反映しています。

弊社では、パフォーマンスが高ければ行動評価も高く、連動するようにはなっているのですが、時にはパフォーマンスが高くても行動評価としてはそこまで高くないという場合もあります。そのようなケースでは、給与は上がりますがポジションの昇格は難しいです。しかし、本人にフィードバックし理解をしてもらい、行動評価も高くなるよう努力してもらうか、もしくはプレイヤーとして磨いていくなど、評価制度だけでなく働き方を選択できるようにしています。

【画像】BEENOS_宮坂様
【宮坂様】

 

ーー「自立和尊」という行動評価がありますが、評価に繋がりやすいポイントはどのようなことでしょうか。

宮坂様:
まず「自立」はシンプルに「依存しない」ということです。
現在、弊社の事業ではアジアのマーケットがある程度のシェアを保有していますが、依存はしません。他の国でもマーケットを伸ばすために施策を行っています。
「依存しない」という考え方は事業だけではなく個人に対しても同じで、会社に依存してしまう人材を育ててしまうと、事業や会社が変わった時に個人がパフォーマンスを発揮できず、幸せになれないということに繋がってしまうと思います。
事業や会社、そして個人としても可能性を拡げ、「自立」を目指すという価値観を大切にしています。

また、EコマースやITの仕事は1人でできる仕事はなく、チームワークがどうしても必要となります。そういった面で、自身の主張もしますが、お互いをリスペクトしたり意思疎通を図るなどの「和尊」も大事にしています。

 

ーー貴社では特に国籍を気にせず、働くことが当たり前のような印象を持っておりますが、多国籍のメンバーと一緒に働く上で感じるメリットなどがあれば教えていただけますでしょうか。

船戸様:
大きく分けて2つあると思っています。

1つは海外に向けて事業転換する中でターゲットとなる国の出身者の意見を聞くことは成功する上でとても貴重だと思っています。しかし1個人だけに意見を聞いてしまうと、その国出身独特の考え方なのか、その人自身の考え方なのかはわからないため、2名以上の意見を聞いた上でいただいた意見を参考にするようにしています。

2つ目は、働き方そのものが全然違うことが強みになります。
前提として、外国籍だからこう、ということはなく、個人によって強みや性格は全く異なります。そのためひとくくりにせずその方を見ることが大切ですし、強みを活かすマネジメントが重要です。ですが傾向はあるのかなと思います。例えば中国の方だと、考えながら仕事を進めるスタイルでとても仕事が早いのですが、修正が必要になることもあったりします。
一方で欧米の方は全体把握をしてから動き出すので走り出しはゆっくりですが、きっちりと慎重にやっているというような特徴があったりします。
欠点かなと思うようなことが逆に強みだったりするので、そういったことを活かしきった際に、組織としてパフォーマンスが上がることがメリットでもあると思っています。

マネージャー陣も外国籍社員、日本人社員関係なく、彼らの強みを活かせるようにマネジメントしています。

 

ーー反対にデメリットなどはありますか?またどのように解決されていますか。

宮坂様:

うまく意思疎通ができず業務が進まないことがあると思います。全ての原因が言語とは限りませんが、場合によっては通訳を入れることがあります。

船戸様:
言語の問題や情報格差が起りやすい点があると思っています。ここはマネージャー陣が大変気を配っているところだと思います。ミーティングは基本的に日本語で進行していくので、どのくらい理解できているのかというところは確認をしなければなりません。決定した内容を復唱したり、議事録を共有したり、逆に議事録の作成を依頼するマネージャーもいます。
また、月例会などを開催してチームメンバーの情報格差をなくすことを意識しているマネージャーもいます。

エンジニアだと、従業員ではないのですが、海外に住んでいる方と一緒に業務にあたることもあります。その場合は時差の関係で夕方しかミーティングに参加できない場合もあるため、それぞれ対応することもあります。
なかなか時間が合わずチャットだけになるなど、お互いの顔を見てコミュニケーションが取れずさらに意思疎通を取ることが難しいようですが、翻訳ツールを使用し工夫しているチームもあります。

ーー貴社では日本人に限らず外国籍社員も定着率が良いと伺っております。定着するために意識して行なっている取り組みはありますか?

宮坂様:
従業員調査を行っており、毎月本人たちのエンゲージメントやスコアをグラフで見れるようにしています。
どちらかというと健康診断のようなものに近く、何か問題が起こってから対処するのではなく、問題の兆候を早くから把握するために行っています。

以前は、半年や3ヶ月に1回実施していたのですが、気づかないうちにストレスが溜まってしまっていたり、成長実感や達成感が減ってしまっているケースも少なくありませんでしたし、大丈夫だと思っていた方が翌月に突然辞職してしまうこともありました。
この内容も完璧ではないので、頻度を上げて月に1回のペースでチェックできるようにしようとなりました。一長一短ではあると思うので場合によってはまた3ヶ月に戻すこともあるかもしれません。

 

ーーアンケート項目の中には、どのようなものがあるのでしょうか、お答えできる範囲で教えていただけますか。

宮坂様:
スコア項目としては主に5つに分けています。

・仕事
・メンタル
・報酬
・評価
・人間関係

仕事をする上で、成長実感がなかったり給与に不満があったら辞めてしまうことが多いと思うのですが、意外と人間関係のスコアが高い方が残るケースが多いです。

ある一定のものが高ければ、全体のスコアも一連に上がっていくのですが、人間関係だけは別軸で、他スコアが高くても人間関係のスコアが低い場合には辞職してしまうケースもあります。

アンケート結果をマネジメントの改善に活かしており、 私たちで対応できる部分についてはフォローできるようにしています。

 

ーー外国籍社員のキャリアについてオーダーメイドでしっかりと考えてくださる企業様はなかなかいないと思います。なぜ、このようなことができるのでしょうか。

船戸様:
そうですね、一般的な企業様だとポジションに対しての募集も多く、「言語を活かしてこのポジションで働いてください」という採用をされていると思うのですが、弊社ではポジションを絞って採用をしているわけではないので、彼らがキャリアの限界を迎えてしまうということはないと思います。実際に活躍されているハイパフォーマーの方にも、「BEENOSはガラスの天井がない」と友人にも勧めている、という話を頂いたことがあります。

宮坂様:
外国籍社員に限らずですが、私たちの会社は常に新しく事業が変わっていくので、従業員を型にはめてしまうと結果会社にとってもマイナスになると考えています。色んなものが自動化されたりなど現状のままでいくと、いずれ我々の仕事は無くなってしまうと思います。

しかし、そこを強みに変えて自分たちの仕事をなくしていく方向で企画し、なくなった分は売り上げを上げる為に次のことにチャレンジするということにシフトしないといけないと考えています。

 

ーー貴社ではやりたいことを自由にできる社風とお伺いしています。どのように社員の方から意見を取り上げ仕組みなどあるのでしょうか。

船戸様:
仕組みというよりは文化に近いと思うのですが、目標設定の中にも「会社目標」と「チーム目標」があって、個人の目標に落とし込んでいくのですが、ゴールの共有をしっかりと行うようにしています。
そこに辿り着くまでのプロセスは個人で考えることを求められる文化だと思っています。社内の会話の中でも「どうしていきたい?」などのコミュニケーションが普通にあります。
あとはマネージャー陣もコミュニケーションを積極的に取るように意識していると思います

BEENOS様_話し合う宮坂様と船戸様

ーー外国籍社員の方から見た貴社の魅力はなんでしょうか。

船戸様:
私たち自身が「外国籍」ということを気にしていないということもありますが、他の社員たちも同じように感じているようで、実績を出せばちゃんと評価してもらえることや、権限が持てるということに魅力を感じているようです。
また、日本の会社の主観やBEENOSのルールに合わせるというよりも、その人の個性を活かせたり、バランスよく「会社にとって自身が刺激となっているのではないか」と感じてくれているようです。
弊社で働く上で自分が外国人であるということを感じる瞬間は少ないのではないかと思っています。

弊社代表は社員からの、「これがやりたいです!」という意見に対し、すぐに「やってみよう!」と決定が早かったりするので、会社としての意思決定が早いのも魅力の一つなのではないかと感じています。

 

ーー外国人とともに働くことに関してあと一歩を踏み出せない企業様が多いのが現状です。そんな企業様にアドバイスを頂けませんか。

船戸様:
弊社も初めから上手くいっていたわけではありませんが、それぞれの文化を活かした強みを発揮できることは企業にとって大きいと思います。

外国出身の方は、日本で働いている日本人よりも自分の考え方が会社に受け入れられているのかということをすごく気にする方が多いと感じます。一方で、会社は「その考え方は事業に紐づいているものなのか」ということを重視しますが、日本のルールや会社のやり方などで縛りすぎてしまうと彼らを活かすことができないと思います。弊社でも突然離職してしまうという経験がありました。
しかし、その経験があったからこそ、個々の発想やスピード感、全体を把握する力などそれぞれの強みを活かしていく方向にチェンジしていきました。コミュニケーションを図ることも大事です。

その国の核となるような人がいると、そこからの意見が取り入れやすくなったり、アイディアが多く出てくるということもあると思います。
信頼できる人を1人でも採用ができれば、会社にとって心強いのではないかと思います。

宮坂様:
外国人の採用に向き合うということは、お客様を広げていくことと近い気がします。お客様の支持を受けるためには、事業に対する自分たちの強い意志があっても時には曲げないといけないですし、どんどんと新しい意見にも向き合わざるを得ないと思います。

国や世代のギャップがある中で、放っておいても人口は減っていきます。
いずれ海外のマーケットや、世代間のギャップにはどの企業も向き合わなくてはいけなくなると思います。やらざるを得ない状況になってから無理矢理対応するよりも、今から対応していった方がいいと思います。
そこで外国人採用をするかどうかはわかりませんが、少なからず外国のお客様に自社の製品であったりサービスを使ってもらうということは必ず起こることだと思います。

どのような制度を用いるかは企業様によって違うと思いますが、10年前に比べると外国人とのやりとりもとても増えてきていますし、リアルに向き合わなくてはいけない時代になってきたと感じています。

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