インタビュー

企業と実習生を対等につなぐ。技能実習生管理者として再び日本を目指す

技能実習生への差別をなくすため、日本へ

技能実習生として日本で働き、差別を受けた経験を持つLe Thi Xuan Trang(レ ティ スアン チャン)さん。「技能実習生への差別をなくしたい」と再度日本を目指すTrangさんへ、お話を伺いました。

日本で働ければどんな仕事でもいい

――日本で働くまでの経緯を教えてください

子供の時にみたアニメが日本を知るきっかけでした。テレビで見る日本のたくさんの観光名所に心を奪われ、いつしか日本に行きたいと思うようになりました。

ベトナムの短期大学卒業後、両親から「早く結婚をしなさい」とあまりに言われるので、それが嫌になったのもあり逃げるように日本に向かうことを決めました。笑

日本に行くことを決めた時、両親は「自分の将来のために好きなようにしなさい」と前向きに応援してくれました。それから結婚を急かすことは言われなくなりましたね。

最初は、日本で働ければどんな仕事でもいいと思っていたんです。そこで、友達に送り出し機関を教えてもらい、8ヶ月訓練を受けました。最終的に岐阜県に配属が決まり、3年間技能実習生として働くことになりました。

――日本語はいつから勉強をはじめましたか

技能実習生として、日本に行くことが決まると同時に勉強を始めました。

それまでは、日本語は学習していませんでした。送り出し機関でカタカナとひらがなを勉強したのみです。ですので日本に行ってから、漢字が読めず、さらには会話もできなかったのでかなり苦労しました。

――それは、苦労されましたね。技能実習生に関することや日本での仕事について事前に知っていましたか

いいえ。日本に行く前までに、技能実習生に関することは一つも調べずに行きました。日本でどんな仕事につくかも、私自身全く知らなかったんです。送り出し機関では、仕事の種類を自分で選べなかったので、日本に行くまで、自分がどんな仕事につくのかわかりませんでした。とにかく日本に行ければどんな仕事でもいいと思っていたんです。

長時間労働、絶えない差別

技能実習生への差別をなくすため、日本へ

――日本で働いてみてどうでしたか?

想像と全く違いましたね。

ベトナムにいる時は、一生懸命日本語を勉強したら、日本で働く時にもっとたくさんの日本人と話ができるチャンスがあると思っていました。しかし、日本人と技能実習生は、働く時間も場所も違いました。普段日本人従業員と会うことはほとんどなく、もちろん日本語を話す機会さえありませんでした。唯一関わりがあったのは、指示を出してくださる日本人の部長でした。

また、日本に行く前に行った仕事の研修は、袋詰め作業の練習だけでした。てっきり、このまま日本に行ってもこの同じ作業をすると思い込んでいたのですが、実際は加工業務を全般的に任されました。新しいことを学べて嬉しいという気持ちよりも「思っていた作業と違った」とがっかりしてしまいました。

――日本人の部長さんはどんな印象でしたか

「日本人から差別されている」という印象を受けました。

軽作業は日本人、重労働は外国人技能実習生の私たちに任せられました。勤務時間も日本人は1日4時間で終わります。その時に、自分がもう少し日本語を話すことができれば何か変わっていたかもしれないと後悔しました。

帰国する前、もう一度同じ会社で2年間仕事を延長できると言われましたが、もうその会社で働きたくないと感じていたので延長を断ることにしました。

――とくに辛かったことはなんですか

いちばんは、長時間労働に対して休みがないことです。朝4時から19時までの週6日勤務で働いていたため、疲労はどんどん溜まっていきました。私は仕事が終わるとすぐに寝ていました。週に1回ある休日があっても外出することはなく、疲れを取るために家でずっと休んでいました。

私の同期には、体調が悪くなり倒れこんでしまうメンバーもいたんです。しかし一度倒れて30分休んだら、そのまま作業を再開していました。倒れて休んでもその時間の給料は出ないからです。そうしたら無理がたたってまた倒れてしまったんです…。

流石に同期は休ませる判断になり寮に戻っていきましたが、それほど一人ひとりにかかる疲労は大きかったと思います。

――苦労や問題を誰かに相談することはできましたか

送り出し機関にそのことも含め直接伝えたこともありましたが、「今から職場を変えることはできないよ。」と告げられ、解決はしませんでした。

その時はベトナムに戻りたいと心から思いました。しかし、家族のためにと思い、我慢していました。組合からは、「同じ会社の人には言っていいけど、会社の外には仕事の内容も話してはいけません」と指示されていたので、会社の外で仕事の相談をすることはできなかったです。

もし話してしまうと、日本の組合にいるベトナム人に叱られ、強制帰国の可能性があります。それだけは避けたいので、どんな仕事内容や差別に関する文句も、絶対言わないように我慢をしていました。相談したい時は同期同士で母国語で話していました。仕事に慣れず、職場から逃げ出すことを考えている後輩もいました。

―― 一緒に働く実習生との関係はどうでしたか

技能実習生の同期は、ベトナム人が18人、中国人が2人の合計20人でしたが、一人でやるには大変な業務を中国人から代わってほしいと言われていました。「肩が痛い」「手が痛い」などの言い訳をつけられてです。

最初は、「なぜ交代しないといけないのだろう」と思いながら、自分の担当もはっきりわかっておらず代わっていました。しかし後々聞くと、やらなくてもいい仕事まで渡されてたことに気づいて、どうして私がと驚きました。

私が残業したくなかった理由も、人間関係にあったんです。夏の時期は忙しく、残業は全員参加でしたが、基本は、残業するかどうかは自分で選択することができます。残業をすることでより高い給料をもらうことができるので、みんな必死に残業をしていました。しかし私は、お金のことよりもわがままな実習生と一緒に働きたくない気持ちが大きかったので残業はしませんでした。

それでもベトナム実習生を支えたい

技能実習生への差別をなくすため、日本へ

――技能実習を終えて、今はどのように過ごしていますか

日本で差別を受けていましたが、ベトナムに帰国した今も日本語の勉強を続けています。将来、日本で仕事を探そうと思っているんです。

――どうして、差別を受けたと感じているのに日本にもう一度行きたいと思うのですか

技能実習の職場にいた日本人は、酷いと感じました。でも、もっと日本語を学習し、会話ができるようになればもっといい日本人に会えるだろうと思いました。

技能実習生時代に自分の受けた差別をなくすために、技能実習生管理の仕事をしたいと思っているんです。普通の会社だったら、技能実習生はなにかあったら会社と組合と技能実習生3人でいっしょに相談できます。

でも、私の会社の場合は、なにか技能実習生に問題があっても会社と組合の間だけで解決していました。組合側は技能実習生を叱るだけです。私は叱られることを恐れて我慢していました。

そのような場合、誰かが間に入らないと直接意見も通らないし、何も伝えられないじゃないですか。なので私が技能実習生管理の仕事について間に入って、公平な立場で会社にしっかり伝えられるようになりたいと思っています。両方から意見を聞き、相談しながら技能実習生の立場になって問題を解決できるような人材になりたいと考えています。

 

――インタビューメモ――

インタビューをする中で”我慢した”という言葉に強い印象を受けた。

Trangさんの3年間もの我慢は想像を超えるものだったのだと思う。

誰にも相談することもできず、文句を言うと叱られ強制帰国。そんな選択肢しかない中で働かれていたTrangさんが、次は、自分と同じような立場になってしまうベトナム人を救おうとしている姿に感銘を受けた。

指導者が、働く側に多大な影響を与えていることが伝わった。

この問題を解決しない限り、変わっていかない。だからこそ、Trangさんのように、差別に疑問を持ち、公平な立場にたって、問題を解決していこうとする指導者が今後重要になってくるのではないでしょうか。

ABOUT ME
渡邊 春
旅行で行ったベトナムがきっかけで東南アジアの魅力を知る。 7ヶ月ホーチミン経営大学にて留学するほど、ベトナムに虜。 好きなベトナム料理は、ブンチャージオ(春巻きが乗ったまぜそば)。
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