日本語教育

日本語能力試験(JLPT)N1合格率は?採用で気をつけるポイントは?

日本語能力試験(JLPT)は世界で最も受験者数の多い日本語の試験です。最高レベル(N1)を持っていると評価や採用に有利な教育機関や企業も多く、メリットが多いため、日本語能力試験の受験者数は年々増えています。

ここでは日本語能力試験とはどんなテストか、またN1レベルの合格率や難易度、受験者数の多い国と地域、日本語能力試験を採用に利用するとき、とくに気をつけたいポイントをまとめました。

日本語能力試験とは?

日本語能力試験とは、「日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験」です。略称はJLPT(Japanese-Language Proficiency Testの略)といい、1984年に誕生以来、35年以上の歴史があります。世界で最も受験者数の多い日本語の試験です。

日本語能力試験を評価の指標としている教育機関や企業は多く、在留資格(就労ビザ)の中にはN1やN2取得が条件となっているものもあります。

日本語能力試験を受験するメリット

日本語能力試験を受験するメリットには、以下のようなものがあります。

日本語能力試験を受験するメリット

① 出入国管理上の優遇措置に関わるポイントの取得(N1、N2)
② 日本の国家資格試験に挑戦するための受験資格取得(N1)
③ 学校での単位や卒業資格の認定に使われる
④ 大学入学試験での提出書類として利用できる
⑤ 企業での評価に利用される

日本語能力試験公式サイトのアンケートで受験者の約6割は、日本語能力試験のメリットとして「進学や就職昇進に有利」であることを挙げています。

受験者が感じている受験のメリット(日本語能力試験公式サイトより)

教育機関での入学や能力証明に必要である(26.6%)
就職や昇進昇級に役立つ(33.4%)
自分の実力がわかる(33.2%)

日本語能力試験公式サイト「図で見る日本語能力試験 」より「受験理由」グラフ 抜粋

日本語能力試験の主催者は?

日本語能力試験は、公益財団法人日本国際教育支援協会独立行政法人国際交流基金が共催しています。日本国内での試験は日本国際教育支援協会が実施し、海外での試験は国際交流基金が実施しています。

日本語検定との違いは?

日本語能力試験のほかに日本語検定という試験がありますが、まったく別の試験で、その目的も異なります。日本語検定は、生活の中で日本語を使う人の「思わぬ勘違いや思い違い」をただし、「日本語を正しく使えるようになるため」の試験です。このため受験者のほとんどは日本人となっています。日本語検定の主催者はNPO日本語検定委員会です。

日本語能力試験の受験者数推移

日本語能力試験の受験者数推移を、日本語能力試験公式サイトに公表されているグラフで見てみましょう。国内受験者数、海外受験者数、実施都市数ともに右肩上がりで推移しています。

日本語能力試験公式サイト「過去の試験のデータ 」より「IV 2010年からの実施状況(2019年12月時点データ)」から受験者数グラフ 抜粋日本語能力試験公式サイト「過去の試験のデータ 」より「IV 2010年からの実施状況(2019年12月時点データ)」から受験者数グラフ 抜粋

日本語能力試験の地域別受験者数

前出の日本語能力試験公式サイト「過去の試験のデータ」を利用して、地域別受験者数のグラフを作成したのが以下です。日本国内での受験者数(47都道府県)と東アジアの受験者数が突出して多く、続いて東南アジアが続きます。東南アジアは近年ベトナム、タイ、インドネシア、ミャンマーなど、留学や就労といった長期滞在の来日者数が多い地域です。

日本国内(47都道府県)、東アジア、東南アジアでの受験者数だけで全受験者数の9割以上を占めていることがわかります。

日本語能力試験公式サイト公表「過去のデータ」2019年 第2回(12月)データより 外国人採用ナビ作成日本語能力試験公式サイト公表「過去のデータ」2019年 第2回(12月)データより 外国人採用ナビ作成

日本語能力試験のN1レベルとは?難易度は?

日本語能力試験はN1~N5までの5つのレベルがあり、難易度がもっとも高いのがN1です。各レベルの目安を、日本語能力試験公式サイトの記述から具体的に確認してみましょう。

レベル「読む」「聞く」という言語行動
N1幅広い場面で使われる日本語を理解することができる現実の生活の幅広い場面での日本語の理解(上級レベル)
N2日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるN1~N2(上級レベル)とN4~N5(初級~基本レベル)の中間となるレベル
N4基本的な日本語を理解することができる教室内での基本的な日本語の理解(初級~基本レベル)
N5基本的な日本語をある程度理解することができる

日本語能力試験で問われるのは「日本語の理解」であり、各レベルの認定の目安は「読む」「聞く」という言語行動で表されていることがわかります。

日本語能力試験の各レベルの試験内容

試験はすべてマークシート方式の多肢選択で、4つの選択肢があります。筆記試験(言語知識と読解)とリスニング(聴解)があります。

レベル 試験科目 <試験時間>
N1言語知識(文字・語彙・文法)と読解 110分聴解 60分
N2言語知識(文字・語彙・文法)と読解 105分聴解 50分
N3言語知識(文字・語彙) 30分言語知識(文法)と読解 70分聴解 40分
N4言語知識(文字・語彙) 30分言語知識(文法)と読解 60分聴解 35分
N5言語知識(文字・語彙) 25分言語知識(文法)と読解 50分聴解 30分

日本語能力試験公式サイトにはレベルごとの問題例が掲載されていますので、これに目を通せば各レベルの難易度がよくわかります。

各Nレベルの合格点は?

認定される合格点についても確認しておきましょう。

レベル総合得点合格点合格のための正答率(%)
N118010056
N21809050
N31809553
N41809050
N51808045

総合得点に占める合格点の割合は、45%~56%ですが、各得点区分(言語知識、読解、聴解)に基準点が設けられており、これらの基準点をそれぞれすべてクリアしないと足切りされてしまいます。

日本人でもN1でパーフェクトは取りづらい

日本語能力試験のN1で満点を取るのは、日本人でもなかなか難しいといわれます。日本語の語順や表現には「Aが正解だが、Bでも通じる」というものが多いため、日本語ネイティブでも厳密に正誤をつけると100点は取りづらいのです。

N1レベルの出題にはビジネスで使う堅い表現だけでなく、うちとけた口語表現も出題されるため、合格するには日本での生活経験があったり、日本人とのやり取りが多い環境にいると有利と考えられます。

N1レベルの合格率は?

日本語能力試験の公式サイトに公表された最新情報(2019年12月試験のデータ)によると、N1レベルの合格率は以下のようになっています。合格率は国内受験者より、海外の受験者のほうが高い現状です。

N1レベルの合格率(認定率)
受験者数認定者数認定率
国内5万2147人1万4359人27.5%
海外7万5681人2万4953人33.0%
国内海外合計12万7828人3万9312人30.8%

国内受験者は日本語に囲まれた環境で暮らしているのに、海外受験者よりもN1合格率が低いのは不思議に感じられます。この理由を見ていきましょう。

N1レベル合格者が多いのはどの国?

N1レベル合格者が多いのはどの国なのでしょうか?

日本語能力試験公式サイトで国別のN1レベル保有者数は公表されていません。このため受験者数とN1レベルの受験者割合に注目していきましょう。

日本語能力試験公式サイト公表「過去のデータ」2019年 第2回(12月)データより 外国人採用ナビ作成日本語能力試験公式サイト公表「過去のデータ」2019年 第2回(12月)データより 外国人採用ナビ作成

 

受験者数は日本国内(47都道府県)と東アジア地域が特に多いのですが、両地域のN1レベル受験者数の割合を比較すると、東アジア地域のほうが多いことがわかります。

東アジアのN1レベル受験者数は中国(香港、マカオ含む)が圧倒的に多く、韓国と台湾がそれに続いています。注目すべきは、韓国とモンゴルを除く約8割以上が漢字圏の受験者となっていることです。

東アジアの出身国別N1受験者数 ※太字は漢字圏
国名またはエリア名N1受験者数東アジアに占める割合
中国4万4775人約67%
韓国1万2218人約18%
台湾8374人約13%
香港1190人約2%
マカオ104人約0.2%
モンゴル158人約0.2%
漢字圏合計5万4443人約81.5%

出典元:日本語能力試験公式サイト公表「過去のデータ」2019年 第2回(12月)データより 外国人採用ナビ作成

日本国内の受験者はどの国出身が多い?

日本国内の日本語能力試験受験者は、留学生や日本で働く外国人と考えられます。

留学生の出身国籍を、独立行政法人日本学生支援機構の発表した「留学生の国籍別データ(2018年5月1日現在)」で確認すると、日本にいる留学生で漢字圏出身者は4割程度です。

日本に留学生が多い国ランキング(太字は漢字圏)

1位 中国       38.4%
2位 ベトナム     24.2%
3位 ネパール     8.1%
4位 韓国       5.7%
5位 台湾       3.2%
6位 スリランカ    2.8%
7位 インドネシア   2.1%
8位 ミャンマー    2.0%

日本で働いている外国人の出身国籍は、厚生労働省発表「外国人雇用状況の届出状況一覧」によると、2019年10月末現在で以下となっています。

日本で働く外国人が多い国ランキング(太字は漢字圏)

1位 中国       25.2%
2位 ベトナム     24.2%
3位 フィリピン    10.8%
4位 ブラジル     8.2%
5位 ネパール     5.5%
6位 韓国       4.2%

日本国内にいる外国人は、留学生、社会人ともに、漢字圏出身者の割合がそれほど高くないことがわかります。

日本語能力試験の利用で気をつけたいポイント

日本語能力試験を利用するときに気をつけたいのは、試験の特性を理解して上手に使うことです。ここからは日本語能力試験の結果を、外国人採用などに利用するときのポイントについて説明します。

日本語能力試験で測るのは「読む、聞く」という能力

言語能力は一般的に「読む、聞く、書く、話す」4つのスキルで成り立っています。「読む、聞く」は受容能力、「書く、話す」は産出能力と言います。

「読む、聞く」…受容能力 →日本語能力試験で測定
「書く、話す」…産出能力 →日本語能力試験で測定しない

日本語能力試験では「読む、聞く」という受容能力だけを測定します。マークシートによる回答のため「書く、話す」という産出能力は測定していません。このため、日本語によるコミュニケーション能力を総合的に表しているとは言いきれないところがあります。

日本語の試験はどれも漢字圏出身者と相性がいい

言語学習では一般的に「読む、聞く」という受容能力のほうが早く身につくとされています。「読んで話の内容はわかるけど、書けない」「聞くとだいたいわかるけど、話せない」といったケースです。

しかし漢字圏の日本語学習者には「もともと漢字がわかるので読解や筆記は得意、でも会話は苦手」というタイプの人もみられます。漢字圏の学習者にとって日本語の漢字の多くは母語と共通しているため(多少書き方や意味が違ったりしますが)、漢字の意味が最初からわかるのです。

Nレベルが高いほど「漢字力」が試される

外国人の日本語学習における最大の壁は漢字です。とくに非漢字圏の学習者の場合、漢字に初めて触れ、「形、意味、読み方」をすべてゼロから習得しなければなりません。問題なく日本語の会話ができるのに、読解や筆記が苦手という学習者は、漢字が読めていないケースが多いのです。

漢字圏出身者か、そうでないかによる学習成果の違いは、特に中級レベル以上の日本語学習者に顕著になります。これはN1、N2レベルの受験結果にも影響していると考えられます。

日本語能力試験では、Nレベルが高くなるにつれて漢字語彙が多くなります。また、N5~N3には漢字に「ふりがな」がふってありますが、N1とN2レベルになると出題中の漢字に「ふりがな」がふってありません。これも非漢字圏の学習者にとって得点が難しくなる要因です。

日本で働く外国人全員が日本語能力試験のN1保有者でなくていい

日本企業が外国人社員に求める日本語レベルは非常に高いのが一般的で、株式会社ディスコの「2020 年度 外国人留学生の就職活動に関する調査結果」によると、日本企業に雇用される外国人の6割が日本語能力試験N1保有者です。

しかし、パーフェクトな日本語能力を求めすぎるあまり、職務上必要な能力を持っている人材の採用に至らないのは本末転倒といえます。外国人全員にN1が必要なのかは、職種(技術職かクライアント担当か)や出身国(漢字圏か非漢字圏か)などの条件を個別にみていく必要があるでしょう。

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