インタビュー

「考えてから行動する」を学んだ技能実習

「考えてから行動する」を学んだ技能実習

高校卒業後、技能実習生として日本で働き、2ヵ月前にベトナムに帰国したばかりのPham Van luong(ファム バン ルオン)さん。技能実習生としての生活はどのようなものだったのでしょうか。luongさん、そしてluongさんを送り出した日本語センターの恩師T先生と一緒にお話しをうかがいました。

ベトナムの田舎の人は日本で稼ぎたい

――日本に興味を持ったきっかけを教えてください。

luongさん:小さい頃から日本の漫画やアニメをよく見ていました。ベトナム語訳ではなくて日本語で作品を見られるようになりたいと思い、日本語の勉強を始めました。テレビでニュースを見るのが好きで、日本のニュースも見ていました。日本が好きだから、チャンスがあればずっと行きたいと思っていました。

留学という選択肢も考えましたが、留学するために必要な日本語要件は高かったです。お金がなかったわけではないですが、稼ぎたいと思いインターネットで調べて技能実習生として日本へ行くことを選びました。

――なぜ、技能実習生として日本に行こうと思ったのでしょうか。

luongさん:理由は2つあります。

1つ目はお金のためです。田舎の人はみんなそうですが、まずは家族を養うためにお金を稼ぎたかった。

そして2つ目は、日本で仕事の経験を積みたかったからです。日本の経済は発展していて、ベトナムと全然違います。きっとベトナムとは働き方が違うんだろうなと考えていたので、実際に経験してみたかったのです。

――家族の反応はどうでしたか。

luongさん:父には反対されました。私の実家は農家なのですが、兄弟は誰も後を継がなかったので手伝いをしてほしかったみたいです。「ベトナムで働けばいいじゃないか」と何度も説得されました。ただ私も一度決めたら譲らない性格なので、絶対日本へ行きたいと伝えたら、父と言い争いになりました。母は許してくれたので、父に反対されたまま内緒で日本語センターに入学しました。(笑)

父は、その後もなかなか許してくれませんでした。

何度も、母、兄弟、友達からたくさん話をしてもらい、みんなで父を説得した結果、ようやく許してもらうことができました。最後は、健康に気を付けて、と送り出してくれました。

「とにかく日本に行きたい」寮に住み込みで日本語学習

――日本に行くまでの流れを教えてください。

luongさん:まず、送り出し機関で面接を受けます。その後、送り出し機関の職員から求人について連絡がきます。給料、勤務地、企業名、仕事内容、残業の有無などを伝えられ、希望があれば面接に参加します。

私の場合は、技能実習先の職種や勤務地を選ぶことができました。場所は特に希望はなく、お金がたくさん稼げる残業の多い会社を条件に求人を選びました。みなお金が目的なので「残業の多い会社」が人気でした。建設系は外の作業が大変そうなので、工場内で仕事ができることも条件の一つでした。

会社面接の1週間前から、面接対策として日本語の簡単な自己紹介と技能の練習をして、面接に臨みます。面接では計算のテストをはじめ、溶接を実際に行って完成品の質をみる試験がありました。溶接は簡単でした。面接には毎回6~9人の候補者が参加し、合格率は30~50%くらいでした。私は3回目の面接で無事合格しました。面接に来た社長は親切そうだなあという印象でした。

――日本へ行くまでは、どのような準備をしましたか。

luongさん:面接に合格後は、日本語センターで半年間日本語を勉強しました。寮に住み込み、他の実習生たちと共同生活を送ります。授業は9~17時までで、空き時間は自分で勉強をします。

課題ができなければ、休み時間や週末に特訓があります。週末はみんな実家に帰るのですが、成績が悪いと帰ることができません。

授業前には携帯電話を預け、ルールを守らないと罰金、授業中に寝たり、あくびをするのも罰金でした。

T先生:日本語センターでの生活は大変ですが、ここできちんと日本語を勉強しておかないと、結局日本で大変な思いをすることになってしまいます。彼もよく週末、特訓してましたね。(笑)

授業はベトナム人の担任と日本人の先生がサポートにつくことがほとんどです。でも現状として、日本人の先生は足りていません。

実習生たちにとって日本は夢物語、ジャパニーズドリームです。行く前は日本の良い面しか知りません。そこで日本人の先生に実際の日本を教えてほしいと思います。

luongさん:日本語センターでは、日本のルールや生活についても学びます。オリエンテーションで、元技能実習生の先生に日本の生活について教えてもらう機会があったんですが、聞いても結局イメージがわきません。

T先生がおっしゃったように、行く前は「とにかく日本に行きたい」という気持ちだけなので、地に足がついていないというか、他のことはあまり気にしていなかったんですよね。実際に日本へ行ってから、問題はたくさんありました。

職場は関西弁。指示の意味がわからない

「考えてから行動する」を学んだ技能実習

――どうしても行きたかった日本。行ってみてギャップはありましたか。

luongさん:聞いていた内容と全く違いました。日本人はみんな親切で良い人だと思っていました。

仕事を始めた時は、日本人から指示されたことの意味がわかりませんでした。当時は、日本語もN4相当で何とか日常会話が成立する程度でした。配属先は大阪だったので、会話は関西弁です。方言はベトナムで習ったこともないし、会話のスピードがとにかく速い。全くついていけませんでした。

わからなくても聞くのが恥ずかしいので自分流でやります。そして失敗をして叱られました。そのようなベトナム人は多いんじゃないかな。まあ、怒られたらもっと恥ずかしい思いをするんですけどね。(苦笑)

分からないときは正直に「わかりません」と言って教えてもらうこと。失敗をしたら「すみません」とすぐに謝り、同じミスを繰り返さないようにすること。このようなことが当時できていたらと後悔をしています。

――日本での仕事はどうでしたか?

luongさん:想像以上に大変でした。鉄製のロッカーや駐車場の券売機などの溶接の仕事を担当しました。サンダー(やすり)機械と手で鉄を磨きますが、腕が疲れて動かなくなりました。溶接はメガネをしても目がいたくなる。日焼けみたいに顔がむけたり、病院に行くこともありました。

職場にはベトナム人の技能実習生の先輩たちがいたので、どうしてもわからないときは、別の部署の先輩に通訳に入ってもらい仕事を教えてもらいました。

――日本人との関わりはありましたか?

luongさん:休憩時間はできる限り日本人と話すよう心掛けていました。仕事の内容や、生活で困っていることなど、いろいろと質問したり、相談に乗ってもいました。

ただ、一番仲の良かった日本人の先輩が会社を辞めてしまい、それからは休憩時間はベトナム人で固まるようになってしまって日本語を使う機会は減ってしまいました。それからはあまり日本語は上達しなくなったと思います。

勤務先の社長はとても親切な人でした。休みの日は、社長が私たち技能実習生をつれて色々な所へ遊びに連れて行ってくれました。ユニバーサルスタジオジャパンやサッカー観戦、お寺にも観光に行きました。たまに寮にあそびに来てくれることもありました。

日本語能力試験前には「みんな頑張れ」と応援してくれたり、ご飯に連れて行ってもらえたり、

私たちに一生懸命勉強してほしいから、日本語能力試験の資格を取ると基本給がアップするという制度も作ってくれました。社長は本当に親切で大好きです。

でも他の日本人社員はあまり仲良くなれませんでした。仕事中は日本人と話すことはほとんどありませんでした。すぐ怒る人もいました。ミスをすると「何でできないの」と怖い顔で怒られることもたくさんありました。

殴られたり、道具で叩かれることもありました。社長は「みんなと仲良くしてね」と日本人社員に言ってくれていましたけど、なかなか改善されませんでした。

そのため、実習生たちで社長に相談をしました。1か月に1回は監理団体の職員が様子を見に来ます。そこで実習生と社長と集まって困ったことを相談しました。監理団体の職員は渋い顔をしていましたが、ベトナム人の職員が一緒にきて改善策を話し合うことができました。

日本人とベトナム人お互いが意識して気を付けることで、少しずつ改善されていくものだと思います。

私たちが気を付けた方が良いことは、後輩たちにも伝えるように心掛けました。制服はちゃんと着ること。会社の人に会ったらすぐ挨拶をすること。休憩のときは日本語で話すこと。何か問題があればすぐに先輩に報告すること。わからなければ「ゆっくり話してください、もう一度お願いします」ということ。メモを取ること。

小さなことを毎日意識してやっていくことで、状況は少しずつ改善されました。

――日本語の勉強はどのようにしましたか?

luongさん:会社であまり日本語を使う機会がなく、日本語を勉強する機会が欲しかったので、どこか勉強出来るところはないかと、ベトナムにいたときの日本語の先生に聞きました。そうしたら毎週末行われている日本語ボランティア教室を教えてもらい、暇のあるときは参加するようにしました。そこで日本人の友達もできました。

お年寄りの方が多いですが、日本人の大学生もいます。勉強だけではなくて、みんなでアイディアを出し1か月に1-2回どこかへ遊びに行ったり、料理をつくったりもしました。

ベトナムの日本語センターの先生は信頼できる人なので、日本へ行ってからもよく連絡していました。困ったときにも相談することが多く、先生には本当にお世話になりました。

――日本とベトナムで考え方が違うと感じたところはありましたか。

luongさん:あります。働き方についてです。

日本ではお年寄りになるまで、みんな働いていることにびっくりしました。日本人は仕事が一番大切だから、仕事ばかりしていたら、気づいたらお年寄りになってしまい、結婚しない人が多いんだなと思いました。私は仕事も大切ですが、家族も大切なので、まさにカルチャーショックです。

仕事の進め方に関しては、やはりベトナムとは全然違いましたね。ベトナムでの仕事はそんなに厳しくもなく楽です。

日本人はいつも厳しくて、うるさいと思っていましたが、品質を守る上では大切なことだということが今ならわかります。

「考えてから行動する」を学ぶ

――いちばん楽しかったことはどんなことでしたか。

luongさん:3年目に、T先生が私たちの実習先に遊びに来てくれたことです。みんなで遊びに行ったり、一緒に料理をつくってパーティーをしたりして楽しかったです。

T先生:日本に行ったときは、できるだけ送り出した実習生たちへ会いに行くようにしています。

ちゃんと仕事を頑張れているか、日本語も上達しているのか、心配なのです。そして、彼らも先生に会いたいと言ってくれるので、色んな駅をまわって実習生と合流し、みんなで出かけました。

「考えてから行動する」を学んだ技能実習

――苦労したこと・辛かったことはどんなことでしたか。

luongさん:仕事と日本語学習の両立でしょうか。

自分で残業が多い仕事を選んだのですが、やはり残業はしんどかったです。両立できる人ももちろんいますが、仕事が終わって疲れた中で勉強を続けるというのはやはり大変なことです。

――日本に行ってよかったと思いますか?

luongさん:日本へ行って良かったです。自分自身、厳しい環境で働くこともでき、成長できたと思います。一番学んだのは「考えてから動く」ということです。

日本人は必ず動く前に考えます。仕事も手をつける前にまず計画をします。そして手順を決め、ゴールがイメージできた状態で進めます。

私がそうだったのですが、日本に行く前は何にも考えていなかったんですよ。ただ「日本に行きたい」という気持ちだけでした。日本に行く前にいろいろ考えればよかったと思いました。

また日本へ行きたいかと聞かれると、行きたい気持ちが半分です。ベトナムで良い仕事が見つかれば、もちろん日本には行きません。3年間もベトナムを離れていたので、ベトナムの友達はみんな結婚していました。

完全に置いて行かれてしまったので、私も自分と家族のためにも、そろそろ結婚を視野にいれていかないとと思っています。(笑)

――これから日本へ行く人へのアドバイスはありますか。

luongさん:私の経験からアドバイスするなら、日本に行く前によく考えてください。ということです。まず何のために日本に行くのか、自分にはどんな仕事が合っていて、帰国後はどうするのか。

よく考えた上で決めてください。

――インタビューメモ――

luongさんとT先生の信頼関係がよく伝わってきました。 

 

ABOUT ME
鈴木萌
鈴木萌
すずきもえ・ライター | 旅行と空芯菜炒めをこよなく愛す。ベトナム好きが高じて大学在学中にOne Terraceベトナムで1年間インターン。復学した現在も、ベトナムを中心に、日本と関わりながら働く外国人のリアルを取材しています。
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