日本語教育

ベトナム人の日本語学習熱と人気のオンライン日本語4選

ベトナム人のあいだで日本語学習熱が高まっているのをご存知でしょうか。ベトナムの公立学校で日本語は第一外国語として選択学習できます。国際交流基金の「2018年度 海外日本語教育機関調査」によれば、ベトナムの日本語学習者数は17万4521人で世界6位です。2015年の学習者数は6万4863人でしたから、たった3年間で約2.7倍も増えたことになります。

ここではベトナムの日本語教育事情と、現地で人気のオンライン日本語学習「dungmori(ズンモリ)」「Edura(エデュラ)」「Inazuma(イナズマ)」「Dora(ドーラ)」の4つをご紹介します。また、ベトナムの日本語学習熱の背景についてもご説明します。

ベトナムにおける日本語学習の現状

国際交流基金の「2018年度 海外日本語教育機関調査」によれば、ベトナムの日本語学習者数は17万4521人です。これは中国、インドネシア、韓国、オーストラリア、タイに次いで、世界6位の日本語学習者数です。また、ベトナム国内には正式に確認されているだけでも818カ所の日本語教育機関(世界7位)があり、7030人の日本語教員(世界3位)がいます。

学校教育で日本語を学ぶ人は34.1%、私設日本語学校など学校教育外での学習者が約65.9%となっています。

ベトナムの教育制度における日本語学習

日本語は2007年からベトナムの高等学校において単位がとれる正式な外国語科目となりました。ベトナムの学校教育において、英語、ロシア語、フランス語、中国語に次ぐ5つ目の公式外国語科目です。日本語は卒業試験や一部の大学の入試科目としても利用可能です。

学校で日本語を学ぶベトナム人学習者の内訳は、初等教育での日本語学習者が2054人(学習者全体の約1.2%)、中等教育での学習者が2万6239人約15.0%)、高等教育での学習者が3万1271人約17.9%)となっています。

ベトナム政府の日本語教育重視政策

ベトナムで急速に日本語が普及している背景には、ベトナム政府の日本語教育重視政策があります。ベトナムの学校教育における日本語導入の簡単な年表をまとめました。

2003年ベトナム外国語能力フレームワーク(KNLNN)とよばれる外国語教育の強化政策開始。ベトナムの中学校と高等学校における日本語教育プロジェクトが導入され、2013年まで10年間継続される
2007年日本語がベトナムの高等学校における公式科目として採用される。大学入試(ベトナムセンター試験)にも日本語が登場
2016年ベトナムの10年教育(小学校3年生~高等学校卒業までのこと)において、日本語を第一外国語とするパイロットプログラムが開始
2018年2003年~20018年の間にベトナム国内の2万5000人の中学生と高校生が7年間の日本語プログラムに参加。第一外国語または第二外国語として日本語を学んだ
2020年日本語がベトナムの中学校で公式科目(第二外国語)として採用される

データ出典:ベトナム教育訓練省「National Foreign Language Project」公式ホームページより、外国人採用ナビ作成

ベトナムの日本語教育推進は外国語教育強化政策の一環として行われましたが、高い成果を挙げて拡大を続けており、2020年からは中学校の公式科目としても採用されています。

ベトナムの義務教育制度や学制などについてはこちらの記事でくわしくまとめてありますので、御覧ください。

日本語能力試験から見るベトナム人学習者

ベトナムの日本語学習者の増加は日本語能力試験の受験数の推移からも見て取れます。ここからは日本語能力試験公式ホームページに掲載された統計データから作成されたグラフを使ってみていきましょう。

ベトナム人の日本語能力試験受験数の推移

ベトナムにおける日本語能力試験の受験者数の推移を、グラフにしたものが以下になります。日本語能力試験の受験者は世界的にも増加しているため、左目盛りの折れ線グラフで世界の受験者数、右目盛りの棒グラフでベトナム国内受験者数を表しました。

日本語能力試験受験者数推移 出展:日本語能力試験公式サイトデータより外国人採用ナビ作成日本語能力試験受験者数推移 出展:日本語能力試験公式サイトデータより外国人採用ナビ作成

日本語能力試験受験者の約9割は日本国内、東アジア、東南アジアの3地域の受験者です。なかでもベトナムの受験者は全体の6.7%を占めており、受験者の15人に1人はベトナム人受験者という状況です(2019年12月開催試験の受験者データより)。

日本国内にも40万人以上のベトナム人がいるため、日本国内で行われる日本語能力試験の受験者にもベトナム人が多数含まれると考えられます。

ベトナム人の日本語能力試験の受験レベルは?

ベトナム人は日本語能力試験のどのレベルを多く受験しているのでしょうか?以下はベトナムにおける日本語能力試験の受験レベルをグラフにしたものです。(N5~N1のうち、難易度がもっとも高いのはN1となっています。)

出典:日本語能力試験公式サイトより外国人採用ナビ作成「ベトナムの日本語能力試験受験者数推移グラフ」出典:日本語能力試験公式サイトより外国人採用ナビ作成「ベトナムの日本語能力試験受験者数推移グラフ」

上のグラフを見ると、入門レベルのN5は横ばい、N4~N1各レベルの受験者数は5年間で約2倍に増加しています。このことから、日本語の初級学習者数(N5受験者数)は安定しており、勉強を続けながら順調にレベルアップしている中級~上級学習者も多いと推測されます。

読み書きより会話が得意なベトナムの学習者

年2回の日本語能力試験はベトナム人の日本語学習者にとって大きな目標と励みになっており、2020年7月に予定されていた最新の試験が新型コロナウイルスの流行によりキャンセルされたことにがっかりしているベトナム人学習者も多いようです。

日本語能力試験で気を付けたいのは、日常生活でほとんど漢字に接しない東南アジアの受験者は、漢字圏出身者よりも得点ハンデがあるということです。上級レベルであるN1やN2では「漢字力」が試されますが、これがベトナム人にとっては大きなハードルとなっています。

ベトナムのような非漢字圏の学習者は一般的に「読み書き」よりも「話す聞く」というコミュニケーション能力のほうが早く高まるといわれます。日本語能力試験の結果だけで会話力まで判断しないようにしたいものです。

日本語能力試験について詳しく書いた記事はこちら

ベトナムで人気のオンライン日本語4選

ベトナムで人気の日本語学習法がオンライン学習です。ここからはベトナムで人気のオンライン日本語学習を4つご紹介します。

dungmori(ズンモリ)

「ズンモリ」TOPページより。中央が創設者の「ズン先生」「ズンモリ」公式サイトTOPページより。中央が創設者の「ズン先生」

dungmori(ズンモリ)はベトナム最大級のオンライン日本語学習で、創設者は若いベトナム人起業家の「ズン先生」です。ベトナム語を使って日本語を教える、というコンセプトのオンライン学習で、ベトナムで知らない人がいないほどの知名度があります。

ズン先生は「何をしていいかわからなかった自分(ズン先生)が、日本語学習と日本留学で人生変わった」という、ベトナムの若者の日本への憧れをかきたてるようなメッセージを発信しています。ズン先生の生き方や考え方がベトナムの若者に支持され、日本語学習熱や日本留学熱を高めているともいえるでしょう。

ズンモリのFacebookに掲載された動画は「ギヤさん」というベトナムで人気のユーチューバーが制作をサポートしており、非常に面白いコンテンツが多いと評判です。ズンモリは日本語を教えている先生や教材のレベルも高く、動画もレベルが高いオンライン学習です。

Edura(エデュラ)

https://edura.vn/公式サイトより。https://edura.vn/公式サイトより。

Edura(エデュラ)は日本語や中国語といった語学だけでなく、ビジネスや趣味のクラスをオンラインで受講できる総合的なWEB学習サービスとしてベトナムで人気です。同サイト内で受講のためのチケットを購入してクラスを予約します。

日本語のコースはEduraの人気ランキングで常に上位となっており、Eduraを利用して日本語のオンライン学習をしている人がかなりいることがわかります。

Inazuma(イナズマ)

イナズマTOPページより。動画を活用したネット広告戦略を持つイナズマTOPページより。動画を活用したネット広告戦略を持つ

イナズマはズンモリの後発の日本語学習サービスで、この2~3年でベトナム国内での認知度が高くなっています。ズンモリに比べると初心者向けの日本語学習レベルで、日常会話のトレーニングが中心です。

Facebookのライブストリームには日本人の人気女性キャストが登場しています。ネット上での宣伝戦略が上手で、TiktokやYoutubeも活用して若者の心をつかんでいます。

Dora(ドーラ)

Doraのスマートホン版画面Doraのスマートホン版画面

Dora(ドーラ)は日本に留学経験のあるグエン・チュン・ドゥック(Nguyen Trung Duc)氏が立ち上げた日本語オンラインクラスです。日本で働いた経験から「どこにいても日本語が勉強できるように」というのがコンセプトです。

日本国内にいるベトナム人、特に技能実習生などは、地方にいて日本語学習の機会がなかなか得られず、受講料も高すぎると悩んでおり、そんな同胞のために開発したサービスだそうです。Doraとは、ベトナムの子供も大好きな青いネコ型ロボットから名付けたとのこと。

外国人採用ナビがドゥックさんをインタビューしました。Dora設立の背景はこちら

なぜベトナム人は日本語を学ぶのか?

ベトナムで日本語学習が推進されている理由はなんでしょうか?背景には3つの経済の動きがあります。

日本によるベトナムへの活発な投資活動

ベトナム政府による日本語教育推進の背景にあるのは、日本企業によるベトナムへの活発な経済進出です。日本のベトナムへの投資額は世界2位で、2019年末までに4190案件、金額にして579億USドルの投資を行っています。ベトナムで経済活動を行う日本の企業数は約2000社以上、ベトナム企業と提携する日系企業もどんどん増えています。これら日本企業の活動によって、ベトナムで日本語を話せる人材ニーズが高まっています。

ベトナムの若者の日本就職

近年では日本の人材不足から、日本語が堪能な大卒ベトナム人材を日本国内で雇用する動きも活発になっています。ベトナムの若者にとっても、機械、電気電子、土木、介護などの領域はベトナム国内で就職するより、日本で就職したほうが給与待遇が良いため、日本での就職は魅力的な選択肢の一つです。

ベトナムへの日本人旅行者の増加

ベトナムへの日本人旅行者の増加も、ベトナム人に日本語の仕事のチャンスを増やしています。2018年にベトナムを訪れた日本人旅行者の数は82万6674人で、前年度比3.6%増加しています。2019年の1月から8月までにベトナムを訪れた日本人旅行者の総数は62万人を超え、前年同時期比で13.7%増加しました。

日本語学習は日本とベトナムの両国関係にも貢献

ベトナムはアジアでも親日感情が高く、経済的な発展も著しい国です。日本語がたくさんのベトナム人学習者に学ばれることは、今後の両国関係にも大きく貢献することが予想されます。

日本で暮らして苦労をしたベトナム出身者の多くは「言葉が通じない」ことにより、日本人とのコミュニケーションや仕事に支障があったと感じているようです。日本で人材不足が待ったなしとなり、ベトナムからの人材採用を行うことも増えているいま、雇用する日本企業や社会もしっかりとした日本語教育を行うことが求められています。

ベトナム人エンジニア(日本語能力試験N3レベル)の日本語会話力を動画でチェック!

ABOUT ME
松岡 由布子 (株式会社OneTerrace ベトナム支社GM)
福岡出身の富山育ち。2017年からホーチミン在住。前職は採用コンサルタントとして東京、タイ、ベトナム、台湾での勤務を経験。ベトナム人が高度人材として日本で働き、正当に評価されることをスタンダードにしたい。通称ずこさん(ベトナム人は「ゆ」の発音が苦手)
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