外国人採用

「日本のあたりまえが崩れる」8割が外国籍社員のグローバル企業AnyMindのCHROが語る、事業展開を加速させる組織構築

シンガポールで2016年4月にスタートしてから、東南アジアを含めた世界13ヶ国に900名以上の規模で事業を展開するAnyMind Group。2020年度の「すごいベンチャー100」にも選出。ユニコーン候補企業として評判の同社。また、みずほ銀行が主催のMizuho Innovation AwardやForbes Japan誌が選ぶ「日本の起業家ランキング」にも、2020/2021年と2年連続で選出されている。

数多くの受賞歴がある同社ですが、特に素晴らしいと思う点が、売上比率が日本より海外が高く、グローバルで成功をおさめている数少ないスタートアップ企業であるということです。

元リンクアンドモチベーション取締役 ・JAM代表取締役で、AnyMind JapanのCHROである水谷 健彦氏が、2021年6月にAnyMind Group全体のマネージングディレクターに就任し、組織文化・体制強化を通じた企業価値向上と事業展開をさらに加速されるとのニュースがあり、どのような組織を構築しているのかとても気になっていたところです。

今回は、直接その水谷 健彦様にお話をお伺いしました。
取材の中で、グローバルな組織を活性化させるポイントや、世界クラスで優秀な方々が定着され続けているポイントなどをお伺い出来たので、ぜひ今後グローバルな企業にしていきたい方々や、グローバルな組織づくりをされる予定の方々へ必見の内容となっております。

【AnyMind Group株式会社様について】

会社名   :AnyMind Group株式会社
本社所在地 :東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー31F
代表者   :CEO 十河 宏輔
URL    :https://anymindgroup.com/

 

ーーまず初めに、現在の従業員数や外国籍社員の方が占める割合などを教えていただけますか。

グループ全体では、現在900名以上、その内、25カ国の外国籍社員が全体で72%在籍しています。また、日本オフィスには、12カ国の外国籍社員が勤務しています。

 

ーー各国での拠点展開のスピード感、ものすごい勢いだと思うのですが、海外拠点は全てゼロから立ち上げをされているのでしょうか。

海外の拠点は自分たちでゼロから事業を立ち上げた国もありますが、M&Aで新たに機能強化をした国も多くあります。

 

ーーグローバルな企業で様々な国籍の方がいるようにお見受けしました。外国人と一緒に働くことによる「気づき」があったと思う点はどんなことでしょうか。

当社の場合は、8割が外国籍社員なのでそもそも日本人社員がマジョリティではありません。また、国ごとで見たときには、そこまで多国籍になっているということではないのですが、「気づき」という点では、「日本のあたりまえが崩れる」ということでしょうか。

例えば、日本のベンチャー企業で働いている方々には「仕事にコミットしよう」とか、「会社のフィロソフィーやビジョンが大事」など、なんとなく形成されたあたりまえ(常識)があると思います。

当社はM&Aを通じて規模が拡大した背景もありますが、海外のメンバー本人たちにしてみると「会社のフィロソフィー?ビジョン?それらは自分にはあまり関係ない」といった考えも持っていたりします。そういった外国籍社員の考えに「ベンチャー企業で働いてるのにどうして」と日本人である私は思ってしまう場面もあります。

このような、日本の「あたりまえ」があると思うんですが、それは「日本のあたりまえ」であって東南アジア界隈に我々が出て行ったときにはそれは「あたりまえ」ではなくなると思います。

「日本で仕事をして日本で生きていく」というのが、今までの日本人にはあたりまえだったかもしれませんが、現在はそれが確実ではないですし、東南アジアと比較したときに日本の環境はマイノリティになりますよね。

今後、会社がグローバルになればなるほど、日本のあたりまえで会社の経営をしていくべきではないということをいち早く感じ取れますし、それを経営戦略方針の中に取り入れていくということが進んでいきます。それは一番大きな気づきであったと思っています。

 

ーーCHROに水谷様が就任されて、変えようとしているところや、取り組んで良かったと思うところはどんなことでしょうか?

私が当社に参画してまだ6ヶ月経っていませんので、現在の取り組みを中心にお伝えさせていただきます。まず就任して初めに取り組んだこととしては、「あなたはなぜAnyMind Groupで働いているのか?」という調査を行いました。

「何が理由でこの会社にいるのか」、「何を一番に求めているのか」、「何に一番満足しているのか」などを下記5つの項目に基づいて、グループ全社員に統計をとりました。

 

・「Profession」ー個人の成長ー

・「Privilege」ー給与・福利厚生ー

・「Person・People」 ー働く人ー

・「Philosophy」ーミッション・バリュー

・「Product」ー事業の領域・戦略ー

 

調査結果を見てみると、国ごとに違いが出た項目があったことと、グループ全体で統一されて回答があったことがわかりました。

グループ全体で統一されていた回答が「Profession」で、一番期待していて、かつ一番満足しているという結果が出ました。これは、会社としても理想的で良い傾向です。
つまり、日本にいるメンバーは成長したいと思って当社に在籍しており、タイやフィリピンなどの海外メンバーもみんな成長したいと思っているということがわかりました。

各国で違いが出た結果としては「Privilege」と「Person・People」でした。

「Privilege(給与・福利厚生)」の重要度については高い国もあれば低い国もありました。相対的にみると日本の「Privilege」の重要度についてはそこまで高くない結果となっています。

次に「Person・People」というのが一緒に働く仲間や上司を指しますが、これも各国で差があり、一番高かったのが日本でした。
日本では、「自分の成長と良い仲間」を求めていて、国ごとに違いますが、グループ全体としては「Profession 個人の成長」と「Privilege 給与・福利厚生」を求めている、という傾向の違いが見えてきました。

海外のオフィスにおいてはM&Aも多く、また海外で採用する際のコミュニケーションにそこまで関わることができていなかったので、ばらつきが予想されましたが、結果として揃っていたということがわかりました。

これらの調査を踏まえて、「それだけ成長を求めているのであれば、より個人が成長できるような環境を提供していきましょう」ということで、まず取り組めることとして、トレーニングの導入を行っています。

「Privilege」ですが、例えば、「給与がすごい欲しい」と言われて「では払いますよ」ということはなかなか難しいことですので、それ以外の魅力を高めていくことをしようと思っております。それはこれから取り組んでいく予定です。
また、今現在は新型コロナウイルスが蔓延している状況ですので実施出来ておりませんが、国を跨いだ異動、いわゆるキャリアとしての機会をどれだけ提供し、満足度を満たしていくかも大事だと思っています。

 

ーー「Profession(個人の成長)」に繋がるようなトレーニングとは具体的に、どのようなことをされているのでしょうか。

当社は、日本の事業だけでも、インフルエンサーマーケティングの事業であったり、多岐にわたっています。従い、各論の具体的なスキルを学ぶというよりも、抽象度の高い汎用性のあるスキルを学べるようにしています。

日本だけでなく各国でも共通して行っているのですが、まずは日本オフィスで教材としてプレゼンテーションスライドを作成し、それを元に日本のマネージャー向けのトレーニングを実施しています。その文面を英語化して各国に展開しています。具体的には組織マネジメントの知識やスキルを高めるトレーニングで、今後インドネシア、フィリピンで展開していく予定です。

日本では私がマネージャー向けに実施し、海外オフィスではカントリーマネージャーから各国のマネージャーに話して行ってもらいます。
もちろんスライドだけでは具体的な内容までは分からないと思うので、私が実際に日本のマネージャーに話した内容を英語のテキストに直し、カントリーマネージャーと質疑応答を行った上で展開しています。

カントリーマネージャーから各国のマネージャーに展開をしてもらう際に、大きく内容が変わることは困りますが、原理原則は同じなら2〜3割は違ってもいいと思います。それについてはカントリーマネージャーの判断に委ねています。

 

ーー海外オフィスとのコミュケーションを普段からされていると思うのですが、日本人だけの会社に比べて、コミュニケーションの違いや困ったことはありますか?

言語の違いが大きいのではないかと思っています。

日本人が第二言語で習得した英語と、東南アジアの社員たちが第二言語として習得した英語同士で会話をしているんですが、母国語同士で話した時の深さと同じ深さを維持できるかというと難しいものがあるかと思います。

例えば、何かの話題で議論になったときに、母国語同士で話すと深い位置でお互い合意できるものが、第二言語の英語での話し合いになると、なんとなく抽象度の高いところで「まぁ、いいかな」という感じで終わってしまうことがよくあります。

コミュニケーション頻度を増やすことで、ある程度はカバーできますが、最終的には表現力を持たないと説明・解決できないものだと思っています。
当社では、海外チームは英語能力も非常に高く、密に議論しており、お互いが高い英語レベルでやりとりしているので特に問題は生じていません。

 

ーーちなみに、一般的に日本の会社では、飲み会や喫煙所でのコミュニケーションなど、会議室以外のアナログな場での合意形成などがあると思うのですが、グローバルな企業ではオンライン会議が主流となる為、合意形成を行うための会議の時間が長くなったりしませんか。

グローバルなコミュニケーションの機会でいうと、上位メンバーになるほど海外メンバーとのミーティングが多くなりますが、「会議室を出た後のアナログな場での話し合い」はそもそも会社全体として行っていません。というのも、他の国のメンバーを含めてオンライン会議で合意した内容を、その会議以外の場で別途合意形成が行われてしまうと、信頼を損なってしまうからです。

もちろん言語能力で困る可能性もありますが、「コミュニケーションが難しいので会議時間が長くなる」ということはないかと思います。

 

ーー各国にオフィスがあるとマネジメントが大変だと思いますが、各国のマネジメントをうまくさせるために、水谷様が気を付けていることや、会社として工夫していることはありますか。

当社の拠点は東南アジアが多いのですが、各国で組織的な強みや抱えている課題感は異なります。

各国のカントリーマネージャーとやりとりをする中で感じたことが、「国の文化の違い」よりも、カントリーマネージャーの能力やキャラクターが大きく組織に影響を与える為、カントリーマネージャーの採用や育成が大事ということです。

各国ごとにコミュニケーションを行い、出た課題をその国でどのように解決し、どのように活かしていくのか、それを我々がサポートしていきます。
その積み重ねが、結果的にカントリーマネージャーの育成に繋がっていると思います。

統一するものは一貫して統一し、それ以外の各国でアレンジが必要なものについては、各国のカントリーマネージャーの判断で工夫をし、自国を動かしてもらいます。そのため、その選別をするために、各国のカントリーマネージャーと密にコミュニケーションを取るようにしています。

例えば、何かの改善方法について、カントリーマネージャーに任せて、提案内容が良ければそのまま改善してもらっていますし、日本からの意見が欲しいということであれば、私からアドバイスをさせてもらっています。
というのも、仮に、ベトナムのオフィスでベトナム人スタッフが100人在籍していて、カントリーマネージャー自身もベトナム人である場合、ヘッドクォーター的な存在で日本人が何かを伝えるという行為はあまり意味をなさないと思いますし、言語だけでなく様々な意味でお互いが理解できない恐れがあります。

私はカントリーマネージャーにいろんな話をしますし、意見を聞くようにしています。その上で、困っているときには「こちら側からこういったサポートができる」というコミュニケーションをとり、情報伝達において役割を明確にしています。

 

ーー等級制度はグループで統一されているのでしょうか。

ベースとなる会社の等級制度は各国統一しています。ただし、等級に紐づく賃金などは各国の現地通貨などに連動しています。
昇降格については、各国のカントリーマネージャーとグループの経営ボードとMTGを行い一緒に話し合って決定しています。

年に2回、各国と1時間ずつMTGを実施しています。多くの時間を割く必要がありその時期は多忙となりますが、それだけ時間をかけて行っているので、どこかの国だけズレているということは防げていると思います。

 

ーー日本ではまだまだ外国籍社員を受け入れ難い、不安だという企業様も多くありますが、多くの外国籍社員と働く御社から見てどのように感じますか?

我々の会社はグローバルにビジネスをしたいので、海外に拠点をもち、その国のスタッフにやりがいと満足を提供するのは当たり前のことだと思っています。

この質問に関しては私個人の一意見ですが、今の現状のままで「企業として生き延びられるのか」と問う必要が企業にはあると考えます。
日本の人口が減っている中で、今後はさらに労働力の奪い合いになるでしょう。その状況下で多くの日本人を継続して採用することが困難となる企業も出てくると思います。例えば、既にコンビニのアルバイトスタッフは日本人スタッフがすでにマイノリティとなり、多くの外国人スタッフが採用されています。

企業の産業によっては「将来的に日本人の雇用力を保てるのだろうか」と考えるべきで、保てないのであればいち早く外国籍社員の採用に取り組むことが会社の継続にも繋がると思います。

 

ーー日本に住んでいて、今後も日本で働きたいと思っている外国人に一言いただけますでしょうか

AnyMind Groupは、グローバルでビジネスを展開していて、商品の生産からEC周り、そして物流からマーケティングまでの幅広い領域の事業をやっていますので、日本にいながら母国企業のマーケティングやインバウンド事業に関与できることもあるかもしれません。また、自分自身のアイデンティティと仕事を融合させていく機会がこの会社にあるかもしれません。
そういう環境を求めているのであればぜひ、当社に興味を持っていただければと思います。

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