モンゴルは、1990年代から日本との良好な関係が続いており、アジアにおいて親日感情が高い国のひとつです。2014年には日本との間で自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)が締結され、貿易と投資だけでなく、人の流れを増加させることでも合意しています。
モンゴル人力士の角界での活躍にみられるように、モンゴル人材はタフで目標達成への意欲が高いといわれ、企業からも注目が集まっています。
モンゴル人材の特徴や教育制度、有名大学をはじめ、モンゴル人材との上手なつきあい方、うまく働いてもらうための雇用時の注意についてまとめました。
モンゴルについての基本データ
モンゴルの正式名称は外務省ホームページの記載によればモンゴル国です。2020年1月現在のモンゴル国の基本データは以下のようになっています。
国名:モンゴル国(Mongolia)
面積:156万4100平方キロメートル(日本の約4倍)
人口:323万8479人(モンゴル国家統計局 2018年時点)
首都:ウランバートル(全人口の約半分 149万1375人)
民族:モンゴル人(95%)、カザフ人など
言語:モンゴル語(国家公用語)、カザフ語
宗教:チベット仏教など(1992年2月公布の新憲法で信教の自由を保障)
北にロシア、南に中国という2大国と国境線を接しているモンゴルは、地理的な背景と歴史的な経緯から、バランスの取れた外交感覚をもち、たくさんの国と友好関係を持つことに努めています。
モンゴル人材の特徴と性格
モンゴル人材はタフで目標達成への意欲が高いうえ、日本社会にもうまく適応してくれる可能性が高いといえます。モンゴル人材は以下のような特徴があるといわれます。
- 異なる文化や価値観も比較的よく理解して受容する
- コミュニケーションが得意
- 遊牧民文化の影響によりオープンな気質
- 視野が広く、対人関係はおおらか
- 家族を大切にする、客人を手厚くもてなす
- 自分や家族を守るためには立ち上がる
- 歌や踊りが好きな明るく社交的な国民性
男子には兵役があり、男子は徴兵制によって満18歳~25歳のあいだに1年間兵役につきます。PKOへの積極的な参加をする国としても知られます。
お礼とお詫びは仲が深まるとあまり言わない
モンゴルでは仲間うちのお礼やお詫びをしつこく繰り返すことがないため、日本人には少し物足りないかもしれませんが、「仲の良い相手にみずくさい」といった感覚であると理解してください。
貸し借りについても、仲がいいのだからいつか返せばいい、という感覚です。貸し借りに敏感な日本人の感覚で「借りを返さない」と思ってはいけません。恩義を受けた場合はずっと覚えています。
モンゴル人材は日本に慣れるまでサポートを
モンゴル人材には日本人のような外見の場合も少なくありませんが、中身も日本的であることを期待してはいけません。
モンゴルの食文化をふくむ生活習慣やコミュニケーションは日本とかなり異なります。日本に来たばかりのモンゴル人材がいたら、日本社会に適応できるまできちんとサポートしたほうがいいでしょう。日本のビジネスで好まれるコミュニケーションスタイルについては、最初にガイドラインをまとめてレクチャーするなど企業側の努力も必要です。
モンゴル人材に働いてもらうコツ
モンゴル人材を雇用するときには、本人に対して以下のような説明をしておくことです。
- どのような仕事を任せるのか
- どのような条件なのか
- 任せたいと思う理由は何か
- その仕事は会社と自分にどのようなメリットをもたらすか
モンゴル人材は目標達成への意欲が高いぶん、自分が仕事をしている目標が不明確だと不満を感じやすい傾向があります。上手にモチベーションを上げればパフォーマンス向上に繋がり、離職率の低下にも繋がります。
労働条件の交渉について
日本語ができて、日本文化も習得しているモンゴル人材が日本企業で働く場合、給与水準などの労働条件については妥協しないケースも多いといわれます。労働条件で本人の納得がいかない場合は、持ち前の能力を活かしたパフォーマンスが期待できない可能性もありますので、内定前にきちんと説明して交渉の機会を持ちましょう。
もともと社会主義国家であったモンゴルでは労働者の権利が強く、労働に関する法律も厳しいことを意識しておきましょう。
モンゴルの教育事情
モンゴルの教育事情や日本語学習事情、有名大学についてまとめました。
モンゴルの学校は「5-5-2」
モンゴルの義務教育は小学校が5年間、中学校が5年間の10年間です。小学校1年生から中学卒業までを1年生~10年生として数えます。中学校を卒業した後に進学する場合、高等学校でさらに2年間学びますので、高等学校卒業時には12年生ということになります。大学では学部が4年間、大学院修士課程が1.5~2年間、博士課程が3年間となっています。
モンゴルの学校の新年度は秋(9月)にスタートしますので、日本の4月スタートの新学期とは半年ほどずれます。
外国語教育には非常に熱心
モンゴルには、日本では探すことが難しい「母国語+英語+ロシア語」を話せる人材がかなりいます。英語が第1必修外国語、ロシア語が第2必修外国語とされており、日本の義務教育制度でイメージすると、小学校4年生から英語を学び、中学校3年間を通してロシア語も学んでいるのです。これにくわえて選択必修外国語または必修外国語として日本語、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語なども学ぶため、高学歴のモンゴル人材は母国語をふくめて数か国語を操るケースがあります。
モンゴルでの日本語教育
モンゴルにおける日本語の学習環境は、比較的整っているといえます。日本語を第三外国語として選べる学校も多く、国費留学先として日本を選ぶことも可能です。モンゴル国立大学の文学部日本語専攻科はモンゴル内で有名な日本語学習機関ですが、私設の日本語学校も増加しており、さまざまな教育機関をあわせれば、日本語教育が受けられる施設は100を超えます。とくに人口の約半分が住んでいる首都のウランバートルには日本語教育機関が多くあります。
モンゴルの有名大学
モンゴルの有名大学のうち、いくつかをご紹介します。英語でのホームページを持つ学校も多いため、学校名で調べるときは日本語ではなく、英語のほうを参照してみてください。
National University of Mongolia
モンゴル最初の国立大学。1942年創立
Mongolian University of Science & Technology
ウランバートルにある科学技術系の国立大学
The Mongolian National University of Medical Sciences
Khovd University
モンゴル西部の都市ホブドに1979年創立
Mongolian University of Life Sciences (Mongolian State University of Agriculture)
ウランバートルにある農業大学
Ulaanbaatar University
1995年ウランバートル国際大学より改名。韓国のミッション系私立大学
Mongolia International University
ウランバートルにある私立大学。100%英語による授業を行っている
モンゴルと日本の交流史と親日感情
モンゴルと日本の交流は、1972年の国交樹立から始まりました。モンゴルは日本への親日感情が高い友好国としても知られています。
親密な二国間関係は1992年の民主化以降
モンゴルは1911年の辛亥革命時に独立し、1924年に人民共和国となってから約70年にわたり社会主義国でした。日本との国交樹立は1972年ですが、モンゴルが社会主義を放棄して民主化、市場経済化を導入した1992年以降に日本との関係が進展しました。日本からモンゴルへのODAによって、モンゴル経済は活性化し、日本の民間企業のモンゴル進出も増え、日系企業で仕事を得るために日本語を習得しようとするモンゴル人が増えるという好循環が生まれたのです。
親日感情が高いのは日本の援助が経済成長に貢献したから
モンゴルが1990年代に市場経済化した際、各国からの援助や国際通貨基金(IMF)の資金援助がなされました。なかでも日本は最大の経済援助国であったこともあり、モンゴルでは親日感情が高いことが知られています。
相撲界での力士の活躍も両国関係に貢献
大相撲の力士が日本で活躍し続けていることも、モンゴル国民の親日感情に貢献しているといわれます。1990年代から日本との結びつきが高まったことにより、モンゴルにおける日本語学習者や、モンゴルから日本への留学生も急増しました。モンゴル人力士の活躍に先鞭をつけた朝青龍も1997年に日本へ相撲留学しています。モンゴルはその後も白鵬など多くの角界を担う力士を輩出しています。
モンゴル人材が日本に興味を持つ、日本に留学し日本で活躍する、それを見たモンゴル国内でさらに親日感情が高まるという、良いサイクルが回っている例といえます。
モンゴルの経済と貿易構造
ここからはモンゴルの経済と、日本とモンゴルの経済的関係について見ていきます。
モンゴルの主要産業
モンゴルの伝統産業は牧畜であり、日本からの最初の大きなODAもゴビ地方のカシミヤ工場でした。しかし近年、モンゴルの対日輸出の8割近くを占めるのは鉱工業製品です。石炭を中心とするエネルギー資源と鉱物資源(蛍石やレアアース、金銀、ウランなど)が経済の大きな柱となっている資源大国なのです。
日本からモンゴルへの主要輸出品
日本からモンゴルへの輸出は自動車と機械(建設用や鉱山掘削用)が大部分を占めています。サービス産業や飲食業などの分野において進出も進んでいます。資源が少なく技術力の高い日本と、資源大国で成長余力の大きなモンゴルはお互いを助け合ってともに成長をしてくことができるパートナーといえるでしょう。
自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)
モンゴルの経済成長にともない日本からのODAは縮小し、二国間で貿易、投資、共同事業を行うためのより幅広い枠組みが必要となりました。このため2014年に自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)が結ばれ、経済連携協定や二国間の貿易と投資、そして人の流れを促進することで合意しています。
日本とモンゴルの協力分野と人的交流が促進される項目
日本とモンゴルがこの経済的連携協定により協力する分野は9つあります。人的交流が明記されている項目を前出の共同声明ページにつづく資料部分から抜き出すと以下になります。
1.農業、林業及び漁業
専門家の交流及び職業訓練の実施
2.製造業
工業団地及び技術団地の開発
3.貿易及び投資
貿易及び投資に関する知識の普及及び改善のための専門家、研修生及び研究者の交流の奨励
4.公共基盤、建設及び都市開発
技師及び技術者の能力の開発
5.金融サービス
人材養成並びに経験及び技能の交流のための研修の実施
6.教育及び人材養成
高度な知識及び技術を有する人材の養成
専門家、学者及び教員の交流の奨励
技師及び技術職員の技術訓練及び職業訓練の提供
大学において得る教育又は経験の認定の奨励
7.環境
(明記はないものの、環境保全技術の提供全般において人的交流が期待される)
8.保健
人材養成
共同研究開発の奨励
医療専門家の交流及び研修の奨励
9.情報通信技術
高度な知識及び技術を有する人材の養成
共同研究開発の奨励
科学者、技術者その他の専門家の交流の奨励
じっさいには、すべての活動において人的交流が生まれると予想され、これからも日本とモンゴルの人材交流は多くなっていくことでしょう。
モンゴル人材に大きな戦力として働いてもらうために
モンゴルと日本の関係は、かつてはODAによる援助国と被援助国というものでした。しかし今、モンゴルと日本は対等なパートナーシップを築こうとしています。
モンゴル人材が日本企業で働くときにも、きちんとしたモチベーション管理と評価制度を取り入れることで大きな戦力となってくれることでしょう。
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