インタビュー

留学先は日本だけじゃない。だからアメリカ留学の準備校をはじめた

留学先は日本だけじゃない。だからアメリカ留学の準備校をはじめた

日本語学習者が少ない15年前から学習をはじめ、日本で就職した、Doan Dang(ドアン・ダン)さん。しかし、日本での仕事は「ストレスがいっぱい」だったという。

帰国後、現在はアメリカ留学の準備校を経営するDangさんに、日本とベトナム人の働き方の違い、「留学先の選択肢としての日本」について、伺いました。

ベトナムで学んだ日本語では越えられない「方言」の壁

――日本語を勉強しはじめたきっかけはなにですか。

自分自身、日本のことはあまり知りませんでしたが、日本の経済力に興味がありました。私が日本語を勉強し始めた15年前はまだ日本語学習者も、ベトナムにある日本の会社も少なかったように思います。

当時、今のうちに日本語を勉強しておけば、ベトナムにこれから日系企業が進出する中でいろいろな仕事ができるチャンスと考えて、日本語を勉強し始めました。

大学では、日本語学部に入学しました。当時は学生数も少なく、日本人の先生は大学で1人だけという環境。今よりも、日本語学習教材が少なく苦労しましたが、卒業時には、日本語能力試験(JLPT)のN2を取得することができました。

――たいへん努力されたんですね。卒業後の進路はどのようなものでしたか?

日系のメーカーに入社しました。資料の翻訳や日本人上司の通訳まで幅広く担当しました。その時は、さすがに日本の会社だなと思いました。電話の応対やメールの書き方などのルールが厳しく、特に専門用語の習得には苦労しました。

日本語レベルにはある程度自信があったのですが、学校で勉強したことと、実際に日本人が会話で使う言い回しやスピードが全然違いました。何よりも熊本出身の上司の方言は、本当に何を言っているかわかりませんでした。(笑)

日本語能力試験で高い成績をとっても、実際の現場では通用しないことにとてもショックを受けました。日本語を勉強した学生たちの間では、日本人の会話の半分がわかればできる方だと言われていました。

その後は、もともと興味のあった証券会社に転職しました。日本人顧客を相手にコンサルティングを行っていましたが、社内はベトナム人ばかりで日本語力の低下を感じ、日本への留学を決意しました。

日本留学を決意。アルバイト先でそのまま正社員登用。

留学先は日本だけじゃない。だからアメリカ留学の準備校をはじめた――留学生活はどうでしたか。

とても楽しかったです!

留学先には、関西弁のある大阪を選びました。喋るスピードが速い環境で学んだら日本語能力も鍛えられると思ったからです。(笑)

将来のビジネスにつなげるため、ビジネス日本語を勉強しました。そして、ビジネスのネットワークをつくりたいと考え、コンビニ店員から不動産会社、携帯電話販売代理店でのセールス通訳、ベトナムからの旅行団体や建設会社の通訳まで、さまざまなアルバイトをしました。

2014年当時は、コンビニで働くのにも日本語レベルN1相当が必要でした。ですので、アルバイトに採用されるまでがたいへんでした。今では人手不足でそんなことはないと聞いています。

留学後にはアルバイトをしていた不動産会社から実績を認めていただき、そのまま正社員として働くことになりました。留学生が急増していた時期だったこともあり外国人部門でベトナム人の賃貸を担当しました。お客さんはとても多かったです。

日本の会社はストレスがたまり将来も描けない   

――就職後、1年もたたずに帰国されたとお聞きしました。

はい。正直、日本での生活はつまらないと感じました。日本のサラリーマンはずっと会社のために働き、自分のやりたいことは、なかなか任せてもらえません。できたとしても、年功序列の制度なので出世にはかなり時間がかかります。残業も多く、土日も顧客に合わせて出勤していました。

貯金も思うようにできないし、土日出勤で余暇も身体を休めることしかできない。そしてノルマを達成しないと怒られるので、日々ストレスがたまりました。(笑)

上司の機嫌が売上げによって左右しました。これが「空気を読む」ってやつでしょうか。いやー、日本のサラリーマンはストレスが多いし、まったく将来が見えなかった。

留学前からいずれは自分でビジネスをやりたいという目標があり、ちょうどビジネスパートナーも見つかったので、帰国して自分のビジネスをするチャンスだと思いました。

もう日本は旅行に行くくらいがちょうどよいと思います。(笑)

――どうして日本は残業が多いままなのだと思いますか。

会社に対しての責任感だと思います。自分の仕事が終わっても上司が帰るまで待っているとか、日本人は終身雇用だから、自分の利益ではなく会社の利益を考えるのだと上司に聞きました。いちばん大事なのが「仕事」や「会社」という価値観ですね。

周りと同調しなければ組織で認められない。みんな頑張っているから、やりたくないことでもみんなと同じように自分も頑張らないとならない。ストレスがいっぱいです。

ベトナム人の働き方は家族が中心

――では、ベトナム人の働き方はどのようなものでしょうか。

ベトナム人は自分のアイデアやスキルを活かして働くことを望みます。しかし日本では年功序列のため、偉い人や先輩が優先されます。また、日本の会社で働いても給料は上がりにくいと思います。

ベトナムでのプライオリティは家族です。家族と幸せに過ごすことが優先です。自分も日本にいた時は忙しくて家族に連絡することができませんでした。

日本に行くベトナム人は増えているけれど、今後は減っていくかもしれないです。ずっと長く日本にいたいというベトナム人も減っているのではないかなと思います。

――ベトナム人の仕事観を教えてください。

ベトナムの有名なことわざに、「商売をしなければ金持ちにはなれない」というものがあります。ベトナム人はずっとサラリーマンをすることは考えていません。能力のある人はいつか自分の会社をつくって経営したいと考えています。

ずっと同じ仕事をやっていてもつまらないし、せっかくお金をためても死んでしまったら意味がない。仕事はあくまでもお金を稼ぐ手段であって、人生のプライオリティではないんです。

日本語が話せるベトナム人が増えてきたので、以前に比べて希少価値がなくなり、ベトナム人の給与が下がってきています。日本の企業はベトナム人に対して、能力ではなくて素直に従う人材を求めていると思います。

自分のアイデアやスキルを活かして働くことを望むベトナム人にとっては、日本や日系企業で、我慢して働く意味やメリットはあまりないのではないでしょうか。

――ところで、ベトナム帰国後はどんな仕事をされたのですか。

商社に勤務後、友人と日本語学校を設立しました。日本留学も視野に入れていましたが、今後の見込みに疑問を感じたためすぐに撤退し、アメリカ留学のための準備校に業態をシフトしました。日本関連では、エンジニアへの日本語教育のみ続けています。

ベトナムでは実際にアメリカに行きたい人が圧倒的です。その次の選択肢として日本、韓国、シンガポールを選ぶという感じです。

――なるほど。現在は日本ではなくアメリカ向けの仕事がメインなのですね。いろいろあったとは思いますが、正直、日本に行ってよかったですか?後悔していますか?

いいことも悪いこともたくさんありましたが、全て良い勉強になったので、行ってよかったと思っています。日本の実際の生活や仕事を経験してみたかったのでそれは達成できました。まあ、思ったより仕事は大変でしたが。(笑)

日本だけが選択肢じゃない。留学先をよく考えて  

留学先は日本だけじゃない。だからアメリカ留学の準備校をはじめた

――これから日本を目指す人たちに向けてアドバイスをお願いします。

後輩たちにはこんな風にアドバイスしています。

「目的や自分のやりたいことをよく考えて、計画を立てること。」

計画を立てないと失敗します。最初はリスクを、それから常に利益を考えたうえで頑張ること。日本という1つの選択肢に囚われすぎない方がいいかもしれません。

日本に行くことのメリットとデメリットをよく考えて、それでも行きたいと思うなら、自分のやりたいことと日本の会社や文化が本当に合うのかをよく考えて決めてほしい。

日本に行く事はリスクを伴うことであると理解して、他の選択肢も考えるべきですね。選択肢を増やすという意味では、英語力を身につける方がいいかもしれませんね。新聞やインターネットの情報だけに惑わされず、自分でよく調べ、先輩に聞いて考えることをアドバイスします。

――インタビューメモ――

編集では割愛したが、実際のインタビューでは「日本は変わらなければいけない」と何度も言われました。日本での技能実習を終えた後に、今度は韓国に働きに行く人もいるという。また、シンガポールや欧米などの英語圏への留学のほうが今は圧倒的に人気だそう。彼らには日本以外にも多くの選択肢がある。

日本が選ばれる理由はどこにあるのかを真剣に問う時期が来ていると感じました。

Dangさんからは、計画とリスクを常に考える経営者ならではの意見を聞くことができました。挑戦することはもちろん大切ですし、自分の中で多くの選択肢を持っておくことで、リスクヘッジをしておくことも同様に重要なのかもしれません。

ABOUT ME
鈴木萌
すずきもえ・ライター | 旅行と空芯菜炒めをこよなく愛す。ベトナム好きが高じて大学在学中にOne Terraceベトナムで1年間インターン。復学した現在も、ベトナムを中心に、日本と関わりながら働く外国人のリアルを取材しています。
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