外国人の会社選びのポイントはなんでしょうか?日本企業でもグローバル化と人手不足をうけ、外国人社員の採用が増えていますが、採用活動や採用後の定着に問題があったりするケースも少なくありません。
育った文化やバックグラウンドが異なる外国人にとって魅力的な日本企業とはどんなものか、日本で行われている留学生への就職調査と、世界中の転職サイトのアドバイスをまとめました。記事の後半では日本の外国人雇用における現状と問題点について説明します。
世界共通の「仕事選びのポイント」とは?
日本にいる外国人労働者の出身国では、仕事選びのときにどのようなアドバイスを受けるのでしょうか?各国の転職情報やインターネットの転職アドバイスから「仕事選びのポイント」をまとめると、以下のようになります。
- 給与は良いか
- 福利厚生は良いか
- 労働時間は適正か
- 企業文化が自分にあっているか
- 熱意のあるチームで働けるか
- 学ぶ機会はあるか
- 歴史ある安定企業か
日本の就職情報サイトと同じようなアドバイスも多いのですが、国によって少しずつ異なるアドバイスもあります。日本に多い外国人材の出身国別に転職アドバイスを見てみましょう。
中国人気サイトに見る会社選びのアドバイス
日本で働く外国人でもっとも数が多いのは中国人材です。中国人材はもともと中国語で漢字を使って教育を受けているため、日本語のビジネス文書の読み書きに強いという特徴があります。ビジネスシーンでの対人コミュニケーションも上手なため、中国の取引先クライアントだけでなく、日本国内でのクライアント対応をしている人材も少なくありません。
中国国内の人気サイトにある会社選びのアドバイスを見ると、「上司やリーダーを選ぶように」とアドバイスする姿勢が目立ちます。
- 働きたい上司(リーダー)がいるか
- どれだけ企業トップに近いポジションで働けるか
- 社風が良ければ悪いリーダーは淘汰されるはず
中国でのビジネスは人間関係重視の傾向があり、その姿勢は仕事選びにも現れるようです。
ベトナムの就職情報サイトに見られるアドバイス
日本で働く外国人で2番目に多いのはベトナム人材です。ベトナム人材は穏やかで真面目な気質と、教育の高さから、多くの日本企業が「今後採用したい」と考えている人材です。ベトナムの就職情報サイトでは一般的な転職アドバイスの他に、以下のようなアドバイスが見られます。
- ワークライフバランスはとれそうか
- 退職金制度は充実しているか
ベトナム人材は自分にあった働き方を重視しますので、企業を規模やネームバリューだけで選ぶという感覚はありません。大企業には大企業の良さ、中小企業には中小企業の良さがあると考え、自分の求める条件と合う会社で働くことにメリットを感じるようです。人材不足に悩む中小企業にとっても、とくに注目の人材層ということができます。
米国の転職サイトに見られた特徴的なアドバイス
米国の転職サイトには、「仕事をすることで自己実現しよう」というメッセージが垣間見えるアドバイスが見られます。日本人も「給料よりもやりがいのある仕事を選べ」というアドバイスをしますが、海外の仕事選びのサイトのうち、求める労働条件を妥協しても「やりがい」を選ぶようにアドバイスするサイトが多いのは米国です。
- 成長機会はあるか
- 昇進のチャンスはあるか
- 成功への道のりが見えるか
中国と同じように「一緒に働く上司やリーダーを選ぶように」というアドバイスや、「入社前にはその会社の離職率をチェックするように」という具体的なアドバイスをするサイトもあります。自国のサイトに情報が足りない時、英語サイトをチェックする人は多いため、米国発のこういったアドバイスも世界中で読まれていると考えていいでしょう。
外国人材の考える「学べる職場」とは?
「成長機会がある仕事」や「学べる職場」を選ぶようにというアドバイスは、具体的にどんな仕事や職場を指しているのでしょうか?
自分の市場価値を高めたい、「ポータブルスキル」がほしい
企業研修やOJTが手厚くても、その職場を離れたら学んだ内容が使えなくなってしまうのは、外国人の若者には好まれません。日本語で「手に職をつけなさい」というアドバイスがよく聞かれるように、海外でも「ポータブルスキル」といい、職場が変わっても同じ仕事で同じパフォーマンスを出せるスキルを身に着けるようにというアドバイスは多いようです。
自社の社員がどこに行っても通用するスキルを磨くことは、自社で長く働いてほしいと考える企業からすると矛盾をふくみますが、ポータブルスキルの重視は世界中で若いビジネスパースンが直面している状況と関係しています。
「キャリアは1本道ではない」が常識となりつつある
若いビジネスパースンは、自分たちの親世代が経験した「1社で勤め上げる」スタイルの働き方が難しくなっています。ビジネスの新陳代謝がどんどん早くなっているため、企業や職業の存続期間がどんどん短くなっているからです。このため若いビジネスパースンは、自身のキャリアをいくつかの企業で過ごすことを前提にして、スキルもどんどんアップデートしなくては、という危機感を持っています。
また、2010年代後半に提唱された「人生100年時代」というコンセプトも若者の職業観に影響していると考えられます。日本では「人生100年時代構想会議」など 、長寿社会の再設計を促すコンセプトとして捉えられがちですが、もともとは人生100年を生き抜くために一人ひとりが「中年以降の学び直し」やキャリアチェンジに積極的に取り組み、人生の転機に備えなさいという考え方です。 短いキャリアをいくつも重ねなくては100年間は生き抜けないというのは、世界の若者の間で共有されつつあります。
日本企業の外国人雇用における現状と課題
ここからは日本への留学生と日本で働いている外国人へのアンケートから、日本企業が外国人雇用をする上での課題をざっと見ていきましょう。
平成26年度産業経済研究委託事業「外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査」によると、「できるだけ長く」働いてほしいと考える日本企業の意図とは逆に、3年~5年で約7割が離職する外国人社員の姿も浮かび上がります。
一番下の棒グラフ(図表2-64)からも、外国人材の半数近くは入社前から転職の可能性があると考えていることがわかります。一度雇えばずっと働いてくれるという終身雇用文化は、どこの国の人材にとっても当たり前というわけではありません。
完璧な日本語と日本人化を求める日本企業
外国人が日本企業で働くことの大きなハードルとなっているのが日本語です。日本企業が外国人社員に求める日本語レベルは非常に高いのが一般的で、株式会社ディスコの「2020 年度 外国人留学生の就職活動に関する調査結果」によると、外国人社員に求められる日本語レベルは大部分がネイティブレベルからビジネス上級レベルとなっています。日本語能力試験のレベルでいえば6割が最高レベルのN1を保有しています。
また、平成26年度産業経済研究委託事業「外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査」によると、日本企業に定着する外国人材は「日本人化が進んでいると思う」というアンケート結果があり、外国人であっても自国文化を前に出すことなく、日本人に同化して働くことが好まれる現状があります。
「職務内容をはっきりさせる」ことも必要
外国人の離職だけを一方的に責めるわけにはいかない、もう一つの大きな理由もあります。文部科学省の「外国人留学生の就職支援について(平成30年3月7日)」によると、日本企業が求める人材像や職務内容が外国人にとって不明瞭なことも指摘されています。
日本企業では若い社員の入社時に職務内容と達成すべき成果目標を明記したジョブディスクリプションを提示することは多くありません。しかし今後、専門性を磨くことを重視する外国人の採用や、雇用した外国人の定着を進めるためには、求める人材像と職務内容を明確にすることが求められそうです。
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