はじめに
グローバル化がますます進行する現代社会。
国際競争力がますます高まる昨今の現代社会においては、海外の優秀な人材をいかに獲得するかが焦点となっています。
本シリーズでは「外国人数のTOP7国別の特徴や接し方と日本語指導方法」と題し、日本に留学、永住、特定技能実習生として活躍する外国人材の国別の特徴や接し方と日本語指導方法をご紹介しています。
第六回目は「インドネシア人材編」です。
多言語国家と知られているインドネシアですが、世界第2位の日本語学習者数を誇っているのはご存じでしょうか。インドネシア人の在留資格別では、技能実習2号ロが最も多く、技能実習1号ロ、永住者、留学、技術・人文知識・国際業務と続きます。
本記事では、前半でインドネシア人の特徴や仕事観を、後半ではインドネシア人に効果的な日本語指導方法を解説していきます。
目次
はじめに
①インドネシア人から聞いたインドネシア人の特徴や考え方
1-1 インドネシア人気さくでマイペースである
1-2 インドネシア人は会社への帰属意識がそれほど高くはない
1-3 大学への進学者数が日本人以上に多い
②インドネシア人に日本語を教える上での有効的な方法
2-1 語彙は発音が似ているものから習得させる
2-2 具体的な場面を提示しながら適切な表現を体得させる
2-3 日本語の文は省略が多いことを理解させる
2-4 形態素を指導し辞書を用いた自律学習ができるようにする
まとめ
①インドネシア人から聞いたインドネシア人の特徴や考え方
1-1 インドネシア人は気さくでマイペースである
インドネシア人は気さくでマイペースです。
インドネシアは多民族国家で且つお互いの価値観を尊重しあう文化が根付いています。
マレー語はインドネシアで話されている言語で、その中に「Gotong Royong(発音:ゴトング ロヨング)」という言葉があり、これは「共同作業」を意味します。
この言葉からも伺えるように、インドネシア人は誰かが困っていたら手を差し伸べて助けることが自然にできる人々です。彼らの気さくな国民性はここからきています。
また、インドネシア人は南国の国民ゆえか、時間に対しては驚くほどマイペースです。
もちろん彼らは日本人ほど時間に厳格ではありません。ですので彼らが約束した時間にちゃんと来ることを期待するのは難しいかもしれません。
インドネシア人に対しては、日本人は時間をよく守る人たちであること、時間を守らないと日本人から信用を失うことなどを説き、彼らによく理解してもらうことが必要でしょう。
ポイント:インドネシア人は気さくで時間にマイペースな人々です
1-2 インドネシア人は会社への帰属意識がそれほど高くはない
インドネシア人は日本人ほど会社への帰属意識が高くありません。その理由は、彼らが仕事を仕事と割り切っていること、短期的スパンで働き方を考えていること、必要とあらば転職も厭わないことなどが挙げられます。
日本では、労働時間外に働く、いわゆるサービス残業をする人たちはまだまだ多いですが、インドネシア人にその価値観はありません。インドネシア人の国民性は日本人とよく似ており、素直で年長者を敬う精神を持っています。
しかし、こと仕事に関しては別で、彼らは日本人ほど、時間外まで仕事をしようとはあまり思わないようです。
また、インドネシア人は日本人ほど長期的に働くことを考えていません。たとえば10年後この会社でどんな働き方をしたいか、などと上司が聞いたら、彼らは答えに窮してしまうでしょう。
会社に属し、仕事で成果を上げ成長しようとする気持ちは日本人より薄いかもしれません。
ポイント:インドネシア人は日本人ほど会社への帰属意識が高くない人々です
1-3 大学への進学者数が日本人以上に多い
インドネシア人は大学への進学者数が日本人より多いことをご存じでしょうか。
インドネシア人は、25歳以下の割合が多く、国民の約半分を若者が占めています。
近年、インドネシア国内で大学へ進学する学生の数は増え続け、その数値は、日本人の二倍以上です。インドネシア人の高い教育水準がここから伺えます。
インドネシアの大学の講義などは、英語によるものも多く、英語を使いこなすインドネシア人学生も大勢いるようです。しかも彼らは大学に入学するまでに日本語にも触れています。
アジアの多言語国家、インドネシア。優秀な人材確保は今後ますます白熱しそうです。
ポイント:インドネシア人は日本人以上に大学へ進学する若者が多いです
②インドネシア人に日本語を教える上での有効的な方法
2-1 語彙は発音が似ているものから習得させる
インドネシア人学習者が日本語彙を習得しようとするときには、日本語の発音と似ているものから語彙を導入すると、学習者も親しみが持てるでしょう。
インドネシア語と日本語の発音が似ている例です。
日本語 | インドネシア語 |
名前 | nama(発音:ナマ) |
あんた(あなた) | anda(発音:アンダ) |
好き | suka(発音:スカ) |
行く | ikut(発音:イクッ) |
済んだ | sudah(発音:スダ) |
また、インドネシア語の母音の発音は日本語とほとんど同じです。日本語の5母音「あ」「い」「う」「え」「お」に対し、インドネシア語は6母音 /a/ /i/ /u/ /e/ /o/ /é/を持ちます。
日本語の母音「あ」「い」「え」「お」はインドネシア語/a/ /i/ /é/ /o/と近い音です。日本語の母音「う」はインドネシア語の /u/ とは大きく異なります。インドネシア語は唇を丸め、前に大きく出して発音するので、日本語の「う」では出せない音です。
また、インドネシア語の /e/ は日本語にはない音です。
インドネシア語と日本語の母音が似ていることを理解させ、学習者が話すときに少しでも抵抗感がなくなるように働きかけましょう。
2-2 具体的な場面を提示しながら適切な表現を体得させる
インドネシアには日本語学習者が多く、JLPT N2レベルの日本語力を保持する者も大勢いると聞きます。
国内で既に日本語を学んでいるインドネシア人学習者に対しては、実際の場面を提示しながら、状況に応じた日本語表現を教えるのが効果的です。
インドネシア国内で使われている日本語の教科書には「申し出表現」がよく取り上げられています。
しかしながら実際のインドネシア人学習者は、教科書に載っている表現そのものを覚えてよく理解していたとしても、適切な場面では使えていないようなのです。
ですので学習者が表現を覚えたら、その次は、実際の具体的な場面をイラストや写真などで提示しイメージさせながら理解させ、使って体得させることが大切です。
場面を見せながら表現を提示することで、日本人が実際にどんなシチュエーションで用いるのかがわかります。学習者の習得も確実に早くなるはずです。
2-3 日本語の文は省略が多いことを理解させる
日本語の文は省略が起こりやすいです。特に主語や目的語が省略されやすいので、インドネシア人学習者には、主語や述語を適宜補いながら指導するとよいでしょう。
看護師国家資格や介護福祉士国家資格取得を目指すインドネシア人材にとって、最難関となるのが日本語の試験です。
この試験問題はもちろん日本語で出題されますので、日本語で書かれた文章を正しく読み進めていかなければなりません。
日本語は主語や目的語を省略して意思疎通する言語といっても過言ではありません。慣れていない外国人学習者にとってはもちろん難しく感じます。
日頃から会話や文中で、日本語に触れさせていくことが大切です。
2-4 形態素を指導し辞書を用いた自律学習ができるようにする
教師が形態素を指導した上で、学習者が辞書を使って勉強できるようになるのが理想です。
技術を習得する目的で来日する外国人材は、仕事をしながら日本語を勉強しています。日本語を理解する上で、仕事をする中で分からない言葉や表現に出会ったら、都度自分で調べて覚えていく方法がいいのは言うまでもありません。
しかしながら外国人にとって、日本語は最小の意味のかたまりが捉えにくい言語です。日本語は英語のように単語が分かち書きされていないので、どこまでが一かたまりの単語なのか理解できない人も多いようです。
そこで有効的なのが形態素の指導です。
一かたまりの意味の最小単位を形態素と言い、辞書に掲載されている語彙を指します。日本語の文章を読んだり、書いたり、話したりする際には、学習者にこの形態素を意識させるとよいでしょう。
形態素がわかれば、学習者も辞書を使って自分でわからない言葉や表現の意味を調べることができるからです。
まとめ
本日は、インドネシア人材の特徴や接し方、インドネシア人の日本語指導方法についてお話してきました。
インドネシア人から聞いたインドネシア人の特徴や考え方は?
- インドネシア人は気さくでマイペースである
- インドネシア人は会社への帰属意識がそれほど高くはない
- インドネシア人は大学への進学者数が日本人以上に多い
インドネシア人に日本語を教える上での有効的な方法は?
- 語彙は発音が似ているものから習得させる
- 具体的な場面を提示しながら適切な表現を体得させる
- 日本語の文は省略が多いことを理解させる
- 形態素を指導し辞書を用いた自律学習ができるようにする
雇用主とインドネシア人材雇用者が円滑に仕事をしていけることが何より大切です。
インドネシア人材とコミュニケーションを取りながら、日々の業務を進めていきましょう。
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