外国人採用

外国人採用国別データ:ベトナム人材編

ベトナムで事業拡大を目指す日本企業は増え続けています。JETROによる海外ビジネス調査(2020年2月発表)によると、海外進出をする日本企業の約4割はベトナムでの事業拡大を希望しています。いまや日本にとってベトナムは中国に次ぐビジネスの相手国です。

この記事ではベトナムに関する基本データ、ベトナム人の特徴、ベトナム人の職業観や離職率、学校制度や有名大学などの信頼できるデータを掲載します。記事末には優秀なベトナム人の大卒人材の採用方法についてもまとめました。

ベトナムについての基本データ

ベトナムの正式名称は外務省ホームページの記載によればベトナム社会主義共和国です。2020年6月現在のベトナム社会主義共和国の基本データは以下のようになっています。

国名:ベトナム社会主義共和国
面積:32万9241平方キロメートル
人口:9620万8984人(2019年12月越統計総局発表)※1
首都:ハノイ
民族:キン族(越人)約86%、国内に53の少数民族をもつ
言語:ベトナム語
宗教:仏教、カトリック、カオダイ教など

※1 2020年時点で9700万人を超えたという海外の統計データもある

ベトナムの国土は南北に長く、複数の国との国境を接しています。古くから東南アジアの交通の要衝として栄え、異文化とのコミュニケーションに長け受容性の高い国民性を形成したといわれます。

ベトナムの気候や地理

近年は観光地としても人気が高まっているベトナムですが、日本と同じように南北に長いという地理的特徴があります。日本に東京と大阪、京都があるように、ベトナムにも北に首都ハノイ、南に経済都ホーチミン、そして古都フエーがあります。

首都ハノイとホーチミン市の違いとそれぞれの特徴

首都ハノイとホーチミン市の違いとして、まず気候が違うことが挙げられます。ベトナムの国土は南北に細長く、北緯でいえばハノイは香港と同じぐらいです。このため季節によってはかなり寒い日もあります。ホーチミンはもっと南国の亜熱帯気候であり、常夏の街という印象です。

JETRO(日本貿易振興機構)などのオフィスもハノイとホーチミンの2か所にあります。それぞれの都市は地理的に離れていることもあり、特徴や存在感が異なります。

ハノイの特徴とハノイ人気質

首都ハノイは約千年前から首都であった歴史から、建築などにベトナムらしさを感じます。政治と文化の中心地といわれ、交通インフラやITインフラの整備など大規模な都市再開発が行われつつあります。

ハノイっ子のイメージは「真面目で、礼儀正しく、家族に大切する」です。

ホーチミン市の特徴とホーチミン人気質

ホーチミン市は昔フランス領だったため、建築物は欧米風で「東洋のパリ」と表現されることもあります(旧名サイゴン市)。

インターナショナル色の強い街で外資系企業の支社が多く、周囲には工業団地群が形成されています。駐在員やその家族も多いため、彼らが生活しやすいように多国籍のレストランがあり、ショッピングセンターやナイトライフ施設なども充実しています。インターナショナルスクールや駐在員コミュニティも多数存在します。

ホーチミン市の人のイメージは「元気、寛大、親切」です。

ベトナム人材の特徴と性格

ベトナムは異文化とのコミュニケーションが多かった歴史をもちます。このためベトナム人は自分と異なるものを理解して受入れようとする姿勢があります。好奇心が強くて世界各国に興味を持っているため、異文化をよく学び、自分なりに工夫して活かすことが得意です。

ITや製造業で活躍するベトナム人材

ベトナム人は真面目で繊細な人が多く、細かなところまで行き届いた作業をします。手先が器用な人が多いことも特徴です。このためITや製造業のエンジニア職など、細かな作業を正確に行わなくてはならない仕事で活躍します。

エンジニアは仕事のために知識や最新技術を学び続けなくてはなりませんが、ベトナム人は非常に学習意欲が高く、向上心も強い傾向があります。

一緒に働きやすいオープンな性格

ベトナム人は穏やかでオープンな気質なので、周りに溶け込みやすく、一緒に働きやすいといえます。あまり忖度(そんたく)をしないで自分の意見をどんどん述べる傾向があります。目上の人の発言を待ち、それにあわせる日本人の感覚からすれば最初は少しびっくりするかもしれません。

裏表の少ないストレートな気質に慣れてしまえば、かえって風通しの良い、気楽な信頼関係が築けるでしょう。

ベトナム人の仕事観

ベトナム人と日本人は仕事観が少し異なります。ベトナム人の仕事観をくわしく見ていきましょう。

ベトナム人材の労働時間

ベトナムの会社は日本よりも始業時間が早く、8時から17時半まで、または8時半から6時までの8時間労働が一般的です。昼休みも日本より長く、最大2時間あります。昼休みを利用して子供を迎えに行く人もいますし、暑いベトナムでは昼寝をする習慣もあります。ベトナム人は家族を大切にする国民性のため、残業はほとんどしません。

日本人の仕事観も働き方改革で変化してきているとはいえ、まだまだ仕事を第一に優先しがちです。しかし、ベトナム人にとっては家族や友人が何よりも大切です。

ベトナム人材の職場への定着

ベトナムの若手人材は「自分の専門にあうか、給与や福利厚生はどうか」で就職を決める傾向がありますので、職務内容や給与面に配慮することが安定雇用への第一歩です。納得できる待遇や給与で働き始め、きちんと定着すると離職率は低まります。

社会人経験を積んで家族を持つ年代になると、人間関係が良く安定した職場に定着する傾向があります。

ベトナム人の離職率は約20%

ベトナムの有力転職サイト「anphabe.com」のアンケート調査によると、2019年度のベトナム国内の離職率は約24%となっています。

このアンケートは24業界674企業に1年以上勤務する7万6000人ものベトナム人を対象としているので、かなり信頼度の高いものといえます。同調査によればベトナム国内の離職率は、2017年約19%2018年約20%でした。平均してだいたい20%前後ということがわかります。

日本人の離職率と比べてみると…

参考までに日本国内の離職率を見ておきましょう。厚生労働省の発表した「平成 30 年雇用動向調査結果の概況」によれば、日本人の離職率は(性別や雇用条件により異なりますが)10~15%程度となっています。

  • 雇用期間の定めなし(正社員が多いグループ)…男女平均10.1%
  • 常用労働者全体(パートタイムや「期間の定めがある雇用」含む)…男女平均14.6%
  • 日本人の大学新卒「就職後3年以内離職率」…過去20年以上にわたり30%以上

ベトナム国内と日本では雇用慣行も職場環境も異なりますので、日本の感覚だけでベトナム人の離職率が高いとは言い切れないでしょう。

外国人のよくある退職理由とは?離職率が高いって本当?

ベトナムの教育事情

ベトナムは2020年時点で平均年齢が32.5歳の若い国であり、教育は国の将来にとって重要な課題となっています。ここからはベトナムの教育制度や日本語教育事情について詳しくみていきましょう。

ベトナムの学校は「5-4-3制」

ベトナムの義務教育は小学校が5年間、中学校が4年間の9年間です。義務教育期間は公立の学校がほとんどで、教育訓練省(日本の文部科学省にあたる)が管轄しています。

小学校は5年制(6~11歳)、中学校は4年制(11~15歳)、高等学校は3年制(15~18歳)となっています。高等教育機関は短期大学が3年制、大学は4年制、大学院は修士課程2年と博士課程2年となっています。大学の医学部などは6年制です。

IT教育と英語教育の両立を目指す

ベトナムではIT教育が盛んです。若い世代にとってIT業界は給与待遇が良く、働きやすい憧れの業界であり、高等教育機関でもITに力を入れる大学などが増えています。

ITの教育において重要となるのが英語教育です。就職後もほとんどのITグローバル企業が英語を使ってコミュニケーションや開発を行っていることを考えれば、IT教育と英語教育の両立を目指すことが必要なのです。

ベトナム外国語能力フレームワーク(KNLNN)

ベトナムは2003年からベトナム外国語能力フレームワーク(Khung Năng Lực Ngoại Ngữ、KNLNNと略される)という習熟度の目安を導入し、若い世代の外国語教育に力を入れてきました。KNLNNレベルは1から6まであり、小学校ではレベル1、中学校ではレベル2、高等学校ではレベル3の修得を目指しています。

ベトナムの日本語教育事情

日本企業のベトナム進出や、ベトナム人材採用がさかんになるにつれ、就職などのために日本語を学ぶ人も増えています。2015年度日本語教育機関調査によれば、ベトナムにおいて日本語を学習する人は約6万5000人(世界8位)であり、2019年12月に行われた日本語能力試験の受験者も3000人を超え、東南アジアで最大の受験者数となっています。

第一外国語として日本語も選べる

ベトナムでは義務教育における第一外国語として日本語を選択することが可能です。この選択制は2003年に始まり、ここ10年でだんだん広がりつつあります

日本語を第一外国語として選択できる中学校では、在学中の4年間にわたり、週に90分~135分の授業があります。小学校への導入も2016年に5校で始まり、3年生進級時から5年生で小学校を卒業するまでの3年間に、週160分の日本語授業をしています。

ただし、大学受験の外国語科目は英語であるため、日本語や中国語、韓国語などを第一外国語として選択した生徒は、英語も同時に学ばなくてはならない現状です。

ベトナムの有名大学(公立、私立)

ベトナムの有名大学を公立と私立に分けてご紹介します。ベトナムの公立大学には、国立大学(教育訓練省の管轄)、国家大学(政府直轄)、各省庁が管轄する専門に特化した大学(日本の防衛大学校や気象大学校のイメージ)という3パターンがあります。

ベトナムの有名国立大学

Vietnam National University, Ha Noi (VNU)
ベトナムの近代化のために人材を輩出し、研究を行うことを目的とした大学です。他の大学と異なり、政府直轄の高等教育機関であるため、より国家プロジェクトに沿った教育を行っています。

Vietnam National University Ho Chi Minh City (VNUHCM)
1995年に設立された国立科学技術大学です。学部は7つ(工学、科学、社会科学、人文科学、国際学、情報技術、経済法学、環境資源研究)あります。

Ha Noi University of Science and Technology(HUST)
1956年ベトナム初の工科大学としてハノイに設立され、教育と研究に大きな影響を持つ大学です。学部生2万8000人、修士博士課程5000人、毎年5500~7000人の新入生が入学します。

Foreign Trade University(FTU)
ハノイとホーチミンの二大都市にキャンパスがあります。経営や経済に強い人材を輩出することを目的としています。

The University of Da Nang(UD)
ダナン大学はベトナムでも名門大学として知られ、教員の質の高さで知られます。ダナンは治安が良く美しい都市であり、域内にあった4つの大学が連携統合してダナン大学となりました。

ベトナムの有名私立大学

FPT University
マイクロソフト、Amazon、GE、東芝など、グローバル企業との産学協力体制が構築されており、卒業生の就職率が高いことで知られます。また、卒業生の約2割は海外渡航して就職するなど、インターナショナルな気風も強い学校です。

Ton Duc Thang University(TDTU)
今年に入って米国「the Web of Science database」の「2019年ASEANにおけるTOP10科学研究大学」や英国The Times誌「影響力のある大学ランキング」に立て続けにランクインしています。三菱電機などの日系企業や北欧企業とのつながりもあり、ベトナムでいま国際評価が一番高い大学です。

Duy Tan University(DTU)
風光明媚なダナンに位置し、幅広い専攻科目と高い卒業生就職率(約9割)を誇る国際的な大学です。学内に留学生を迎え入れることや、自国の学生を海外留学させることにも熱心です。

どうやってベトナムの大卒人材を採用する?

ベトナム人を採用するには、どのような求人方法があるのでしょうか。現在、日本で大卒ベトナム人材を採用するには、3つのパターンがあります。

  1. 日本国内にいるベトナム人を採用、日本で勤務してもらう
  2. ベトナムで現地採用後、日本で勤務してもらう
  3. ベトナムで現地採用後、ベトナムで勤務してもらう

それぞれの流れを見てみましょう。

①日本国内にいるベトナム人を採用、日本で勤務してもらう

①の場合、ベトナム人の留学生新卒を日本で採用するか、日本で働いているベトナム人を中途採用することになります。いずれの場合もビザの更新や切り替えが必要だったりしますので、会社としてきちんと管理する体制を作っておきましょう。

就労ビザ更新の必要書類と手続き、在留資格の変更はどうする?

②ベトナムで現地採用後、日本で勤務してもらう

留学生新卒の採用は争奪戦が過熱していますので、②のベトナムの現地採用に目を向けてもいいかもしれません。この場合は現地での採用ノウハウや、就労ビザ取得のサポートに慣れた、実績のある人材紹介会社などを利用するのが近道です。なお、この場合の給与水準や待遇は同じ仕事をする日本人人材と同じでなくてはいけません。

(ベトナム人の雇用をもっと詳しく)ベトナム人材採用のメリットと注意点

③ベトナムで現地採用後、ベトナムで勤務してもらう

③のベトナム国内で働くベトナム人スタッフを採用する場合は、地元の取引先からの紹介や、現地の人材紹介サイトなどを利用することも可能です。

③のケースでは就労ビザの手続きは要らないものの、採用活動前からベトナム現地の労働法を学び、きちんと遵守する必要があります。労働法に関する疑問や不安についてはベトナム人の弁護士や、JETROなど公的機関に相談することも選択肢のひとつです。

(参考記事)外国人材の求人方法と採用コストの削減

優秀なベトナム人採用は情報収集から

ベトナムとのビジネスが急拡大し、現地での市場開拓などのために優秀なベトナム人材採用を希望する日本企業が増えています。しかし、ベトナムでのビジネスや人材採用に関する正しい情報や最新情報はネットに少ないのが現状です。

ベトナム人材の採用を成功させるためには、現地にきちんとしたネットワークを持つ人材紹介会社を利用し、正しい情報を得るようにしてください。

ABOUT ME
Ho Vu Anh Hai
(ホ ブ アン ハイ)ベトナムのホーチミン市出身、2012年9月に来日。人材紹介コンサルタントとして日本で勤めている。ベトナムや世界各国の優秀な人材に日本の良い職場を紹介し、いいキャリアをスタートしてもらい、日本の高度人材不足も解決して社会貢献したい、という夢を持つ。趣味はサッカー。通称ハイさん。
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