外国人採用

なぜベトナム人の若者は日本で働くのか?コミュニケーションのコツ

日本におけるベトナム人の留学生や労働者は急増しています。厚生労働省の発表している「外国人雇用状況(令和4年10月末)」によれば、日本国内にいるベトナム人は46万人を超え、過去5年間でもっとも急激に増えている外国人です。

しかし日本人からすれば、ベトナムがどんな国で、そこに育つ若者がなぜ日本で働くのか、ほとんど知らない現状です。この記事ではベトナムの今どきの若者の特徴や、彼らがどんなキャリア観を持っているのかをご説明します。トラブルを避け、職場に定着してもらうためのコミュニケーションのコツも掲載しました。

ベトナム人の若者の特徴とは?

現在20代~30代前半のベトナム人は、インターネットやテレビの影響で、上の世代とくらべてライフスタイルや職業観が大きく異なります。

海外への憧れや留学志向が強い

テレビやインターネットで海外情報に触れながら育ったベトナムの若者は、ファッション、テクノロジー、環境、ジェンダーなど、あらゆる方面にわたって、上の世代よりもグローバルで先進的な考え方を持っています。

海外に行って外国人の友人を作りたいと考える人も多いため、大学や高等学校での留学説明会も年々増えています。海外に出ることで自分の人生にとって価値のある経験をしたいと考えている人が多いのです。

ベトナム人の人生観も変化しつつある

ベトナム人は世代を問わず家族思いですが、現代のベトナム人の若者にとって「学校を出て早く結婚し、安定的な仕事を見つけて落ち着く」というのは昔の考え方で、「若いうちに色々なこと体験し、知らないことをどんどん学んで、キャリアアップするべきだ。そのためには広い世界に出なくては」という新しい考え方が広がっています。

学校で教わる以外のことを学びたいと考え、ボランティアなどの学外活動に積極的に参加する若者もいます。

ベトナム人の若者はなぜ日本で働く?

ベトナム人が日本で急増している理由は、日本企業が人手不足で外国人採用に積極的であること、そして同時に、ベトナムの若者の来日意欲が高いことが挙げられます。なぜベトナム人の若者は日本に来るのか、その理由を見てみましょう。

ベトナム人は親日感情が高い

ベトナムは総じて親日感情が高めといわれます。電通総研が実施したジャパンブランド調査 2019※によると、「日本に1 年以内に渡航する予定がある」または「日程は決まっていないが、いつか行きたいと思っている」と答えたベトナム人は92.3%と、香港、インドネシア、フィリピンに次いで上位4番目となっています。

同調査は海外における日本のイメージに関するリサーチで、2014~2019年まで継続的に行われていますが、全期間の調査において、ベトナムは親日的な回答が多く、日本に好意的な国だということがわかっています。

※ベトナムにおける2019年度調査では、20~59歳の男女300人(中間所得層以上)に調査が行われました。

日本によるODAやベトナム投資

2013年にJICAが発表した「対越ODA再開20周年記念」のパンフレットによると、1992~2011年度に日本は累計で2兆円のODAを行っており、最大の援助国でした。

日本はベトナムに対して、世界で2番目に大きな投資国でもあります。ベトナム政府の「外国語教育国家提案機関」ホームページによると、日本は2019年末までにベトナムで4190の案件に投資し、その総額は579億USドルに相当します。

ODAや投資をきっかけに、日本企業のベトナムでの活動も活発化し、ベトナムでの人材採用増や日本語人材へのニーズが高まるという循環が生まれています。

出典:JICA「対越ODA再開20周年記念」パンフレットより抜粋出典:JICA「対越ODA再開20周年記念」パンフレットより抜粋

日本は欧米より留学も就労もしやすい

日本の大学や大学院はアジア人学生を積極的に誘致していますので、留学しやすさから日本を選ぶベトナム人の若者も多いようです。これに対して、欧米への留学はまだまだ学費や審査の面から厳しいといわれます。

「留学しやすい」ということは、条件の良い仕事に就くための大卒者向け就労ビザ(就労資格「技術・人文・国際」など)も取得しやすく、ベトナム人にとって日本は就労ビザ(在留資格)の選択肢が多く、就労できる職種も多い国といえます。

日本の就労ビザは何種類?2023年最新情報を行政書士が解説!

日本文化が好きな若者も多い

日本のアニメやマンガ、テレビドラマが好きという理由で来日するベトナム人の若者も少なくありません。ベトナムでは最近人気のドラマやアニメだけではなく、日本人にとっても懐かしいテレビ番組などがたくさん放送されてきました。

外資系企業人気と若者に高まる起業熱

ベトナム国内の若い世代は、外資系企業への就職や、自ら起業するという積極的な生き方を選ぶ人が増えています。その理由を詳しくご説明します。

外資系企業がベトナム人の若者に人気の理由

外資系企業がベトナム人の若者に人気がある理由は、「給与、人間関係、昇進」という3つの要素がそろっているからです。

①能力に応じた高い給与がもらえる

外資系企業の給与水準は、ベトナム国内企業2~3倍が普通です。ボーナスも高いため、能力が高い人は外資系企業に勤めてしっかり稼ぎたいと考えるのです。

②人間関係がフラットで働きやすい

外資系企業では上下関係が強固に固定的ではなく、基本的には能力主義で評価されるため、比較的フラットです。年功序列による弊害が少なく、能力を過小評価されてしまうことがありません。

③キャリアアップのチャンスが多い

外資系企業はジョブディスクリプション(職責範囲)がはっきりしていますので、プロフェッショナルな働き方ができます。専門性を伸ばすトレーニング体制がしっかりしている企業も多いため、職業人としての価値が高まります。

ベトナム現地の求人サイトを見ると、多くのグローバル企業が急成長するベトナムで積極的に採用を進めていることがわかります。日本企業もベトナム人にとっては外資系のひとつですので、条件や待遇などを同じ土俵で戦わなくてはならないのです。

ベトナム人の若者が起業を考える理由

日本でも若い世代の起業家が増えていますが、ベトナムの若者の起業への熱意はとても高く、起業関連の番組やトークショーが増えています。ベトナムの若者が起業するのは、以下のような意見があります。

  • やりがいのある仕事、自分の生き甲斐を自分で創り出せる
  • 自分で職場、同僚、出勤時間が決められる
  • 安定的な仕事をするより、チャレンジすれば能力や経験を倍増できる
  • 成功すれば、収入も高く有名になれる
  • 社会や業界に貢献できる

若者の起業の業種としては、資金が少なくても参入しやすいインターネット上のサービス(Saasなど)を立ち上げたり、インターネット通販を始めるケースが多いといえます。

ベトナム人起業家インタビューはこちら

ベトナム人の若者とのコミュニケーション

大学を卒業して日本に来る優秀なベトナム人の若者は、自分を成長させてくれる環境を求めて日本に来る人が多い傾向があります。コミュニケーションをする際には次のような注意が必要です。

指導は具体的に、怒鳴らずに

日本の企業では厳しい上下関係や、今となっては理由のわからない伝統的なルールが存在することもあります。体育会系といわれる社風では「頭で考えるより身体で覚えろ」という指導が取られることもありますが、これは日本特有の文化と覚えておいたほうがいいでしょう。指導は具体的に、丁寧に説明するのが鉄則です。

おせっかいを焼きながら人間関係をつくる

ベトナム人は人間関係を大切にします。日本に来たばかり、職場に来たばかりのタイミングに周囲が声がけや世話焼きをすることが、早期の定着と長期雇用につながります。ベトナム人が自分だけしかいない職場では、孤独を感じて離職しやすいといわれますので、同時に数名のベトナム人採用をすることも離職防止対策として有効かもしれません。

ベトナム人とベトナムの悪口を言わない

日本人が思う以上にベトナムは急成長をしており、そこで育つ若者たちも広い視点で世の中を見ています。ベトナム人は愛国心も強く、最近のベトナム事情を知らずにベトナムのことを悪く言う人には心を閉ざしてしまいます。自分たちが日本に対していいイメージを抱いていた反動で、とても失望する若者もいます。

ベトナム人の若者は真面目で勤勉

ベトナム人の若者を雇用した日本企業の経営者からは「昔の自分たちのように真面目で勤勉だ」といった感想が聞かれることがあります。高度成長期に日本を支えた世代にとって、今がまさに成長真っ盛りのベトナムから来た若者は、頼もしく懐かしい印象があるようです。

日本人にとって一緒に働きやすいベトナム人の若者ですが、仕事以外に日本語や日本企業の社風やしきたりをゼロから理解して取り組まなくてはならない困難があることを忘れず、うまくサポートしていきたいものです。

ABOUT ME
Ho Vu Anh Hai
(ホ ブ アン ハイ)ベトナムのホーチミン市出身、2012年9月に来日。人材紹介コンサルタントとして日本で勤めている。ベトナムや世界各国の優秀な人材に日本の良い職場を紹介し、いいキャリアをスタートしてもらい、日本の高度人材不足も解決して社会貢献したい、という夢を持つ。趣味はサッカー。通称ハイさん。
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