特定活動ビザとは、在留資格「特定活動」のことです。特定活動ビザの具体的内容、2020年の最新情報(運用状況など)を法律上の定義とともに、申請取次行政書士がわかりやすく説明します。記事末に2020年6月17日時点での新型コロナ対応についても付記しました。
外国人の日本における活動は多種多様で、既存の在留資格にすべての活動を当てはめることはできません。特定活動ビザはこうした「活動に対して付与される一般的な在留資格に収まりきらない」活動の受け皿となっており、日本企業が若くて優秀な外国人材を採用する仕組みづくり進めるなか、非常に注目されている在留資格です。
特定活動ビザとは
特定活動ビザとは、在留資格「特定活動」のことを指し、日本で許される活動の内容について出入国管理及び難民認定法(入管法)の別表第一の五の表により、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と定義されています。
外国人が日本で仕事をするには就労ビザと呼ばれる、就労を許可された在留資格が必要です。就労ビザごとに、外国人が日本で許される就労活動の内容が定義されていますが、特定活動ビザは他と異なり、個々の外国人について個別に活動が指定されています。このため、就労の可否や在留期間がそれぞれに異なるという特徴があります。
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特定活動ビザの決定プロセス
日本の在留資格は法律にもとづいて決定されます。しかし、法律の改廃は国会の議決に基づいて、決定、交付、施行されるため、急速な入管行政の変更に対応しきれないことがあります。内閣が閣議決定等をもって新たな受け入れ態勢を迅速に構築しなくてはならない場合に、この在留資格「特定活動」が用いられます。
特定活動は何種類あるの?
特定活動は法務省の告示によって指定されているものと、指定されていないものとに分けられます。
- 告示によって指定された活動…49種類(最近改正2019年6月17日)※うち3種類は削除済
- 告示による指定はないが入管の運用上認められている活動…10種類以上と考えられる
最新の法務省の告示(最近改正 令和元年六月十七日法務省告示第四十号)によると、在留資格「特定活動」で許可される活動は、告示によって定められているものだけで49種類(うち3種類は削除済)あります。告示に掲げられてはいないが入管の運用上認められる活動を含めると60種類ほどと考えてよいでしょう。
特定活動ビザの実務上の運用
特定活動ビザは「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と定義されているものの、実際の運用現場で本当に法務大臣が全員の内容を決定しているわけではありません。前段落で説明したように、特定活動ビザは現時点で1号から49号(既に削除されている号もあり)の各号ごとに、取得のための明確なルールや許された活動内容が法務省告示により定められています。入管の各現場ではこのルールにもとづいて特定活動の在留資格を付与しています。
特定活動の対象となる外国人の活動
特定活動ビザの対象となる外国人の活動には、日本国内の在留資格変更などで申請するケースと、海外から来日するために在留資格認定証明書の交付を申請するケースがあります。
- 日本国内で在留中の外国人…在留資格変更許可申請
- 海外から来日する外国人…在留資格認定証明書交付申請
日本国内から「在留資格変更許可申請」により行うケース
法務省のホームページでは、日本国内で「在留資格変更許可申請」により行う特定活動の対象を以下のように記載しています。
- 外交官や領事官等の家事使用人
- アマチュアスポーツ選手とその家族
- 外国の大学生のインターンシップ、サマージョブ、国際文化交流
- 特定研究活動
- 特定情報処理活動
- 上記4又は5の外国人の扶養を受ける配偶者又は子
- 「EPA看護師候補者」から「EPA看護師」に変更を希望する者、又は、「EPA介護福祉士候補者(就労コース含む)」から「EPA介護福祉士」に変更を希望する者。もしくは日本国内での転職を希望する場合
- 「EPA介護福祉士候補者(就学コース)」から「EPA介護福祉士」への変更を希望する者、もしくは日本国内での転職を希望する場合
- 大学等を卒業した留学生が、卒業後に「就職活動」を行う場合
- 日本の病院などに入院して治療を受ける外国人とその付添人
- 大学等を卒業した留学生が、卒業後に「起業活動」する場合
- 日本国内における1年を超えない期間の観光、保養などを希望する外国人とそれに同行する配偶者
- 本邦大学卒業者※とその家族
- 大学等の在学中又は卒業後に就職先が内定し採用までの滞在を希望する場合
※本邦大学卒業者とは、日本の大学、大学院を卒業後、日本語が必要とされる職場で就業している外国人のこと
海外から「在留資格認定証明書交付申請」により行うケース
法務省のホームページでは、海外から「在留資格認定証明書申請」により行う特定活動の対象を以下のように記載しています。
- 外交官や領事官等の家事使用人
- アマチュアスポーツ選手とその家族
- 外国の大学生のインターンシップ、サマージョブ、国際文化交流
- 特定研究活動
- 特定情報処理活動
- 上記の5又は6の外国人の扶養を受ける配偶者又は子、同居し扶養を受ける扶養者の父母又は配偶者の父母
- 「EPA看護師」又は「EPA介護福祉士」としての活動を行う外国人の扶養を受ける配偶者又は子
- 日本の病院などに入院して医療を受ける外国人とその付添人
- 日本国内における1年を超えない期間の観光、保養などを希望する外国人とそれに同行する配偶者
- 本邦大学卒業者とその家族
ワーキングホリデービザ
特定活動ビザにはワーキングホリデーの活動もふくまれますが、法務省のホームページには手続きに関する掲載がありません。基本的にワーキングホリデービザは、日本の入管(法務省の管轄)に在留資格を申請せず、外国人本人が日本国在外公館(外務省の管轄)に直接申し込むことが通常だからです。
特定活動ビザの確認のしかた
在留資格「特定活動」が許可され、かつ許可される在留期間が90日を超える場合、原則として在留カードが交付され、パスポートには法務大臣が指定する活動を記載した「指定書」が貼付されます。「特定活動」にて外国人ごとに許されている活動の内容は在留カードの記載だけでは情報が足りず、別途パスポートに貼付されている「指定書」の記載内容を見る必要があります。
企業の外国人採用で注目される「特定活動」3つ
特定活動ビザはここ数年で企業の外国人採用に大きな影響を持つビザとなりつつあります。若くて優秀な外国人材を日本企業がスムーズに採用するための仕組みづくりをすすめるなかで、以下のようなケースの受け皿となっているのです。
- 外国人学生のインターンシップ
- 留学生の就職活動のための滞在
- 日本の大学を卒業した外国人材雇用
これらについて、法律や法務省ホームページのオリジナルの記載をふまえ、くわしく内容を見ていきましょう。
インターンシップ
「特定活動ビザ」で外国人の大学生(通信制大学をのぞく)が日本企業において1年以内のインターンシップを行うことが可能です。
インターンシップについて、入管法では以下のように記載しています。
外国の大学の学生(卒業又は修了をした者に対して学位の授与される教育課程に在籍する者(通信による教育を行う課程に在籍する者を除く。)に限る。)が、当該教育課程の一部として、当該大学と本邦の公私の機関との間の契約に基づき当該機関から報酬を受けて、一年を超えない期間で、かつ、通算して当該大学の修業年限の二分の一を超えない期間内当該機関の業務に従事する活動
出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成二年五月二十四日法務省告示第百三十一号)
最近改正令和元年六月十七日法務省告示第四十号
大学卒業後の留学生の就職活動
日本の大学や専門学校に所属し、卒業前より就職活動を継続している留学生は、在留資格を「留学」から「特定活動」に変更することにより、卒業後も日本で合法的に就職活動を継続することが可能となります。また、内定から入社するまでの期間も滞在が許可されます。
大学卒業後の留学生の就職活動について、法務省のホームページでは以下のように記載しています。
大学等を卒業した留学生が、卒業後、「就職活動」を行うことを希望する場合
※対象は、次のいずれかに該当する者となります。
1 継続就職活動大学生
在留資格「留学」をもって在留する本邦の学校教育法上の大学(短期大学及び大学院を含む。以下同じ。)を卒業した外国人(ただし、別科生、聴講生、科目等履修生及び研究生は含まない。)で、かつ、卒業前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的として本邦への在留を希望する者(高等専門学校を卒業した外国人についても同様とします。)
2 継続就職活動専門学校生
在留資格「留学」をもって在留する本邦の学校教育法上の専修学校専門課程において、専門士の称号を取得し、同課程を卒業した外国人で、かつ、卒業前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的として本邦への在留を希望する者のうち、当該専門課程における修得内容が「技術・人文知識・国際業務」等、就労に係るいずれかの在留資格に該当する活動と関連があると認められる者
法務省ホームページ 特定活動9【大学等を卒業した留学生が,卒業後,「就職活動」を行うことを希望する場合】
本邦大学卒業者
日本の大学や大学院を卒業した外国人材が、特定活動ビザを使うことで、日本で就職し配偶者と子、夫婦の両親を呼び寄せて日本で生活することができます。
こういった外国人材を本邦大学卒業者といい、入管法では以下のように記載しています。
別表第十一に掲げる要件のいずれにも該当する者が、法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて、当該機関の常勤の職員として行う当該機関の業務に従事する活動(日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事するものを含み、風俗営業活動及び法律上資格を有する者が行うこととされている業務に従事するものを除く。)
<別表第十一>
- 本邦の大学(短期大学を除く。以下同じ。)を卒業し又は大学院の課程を修了して学位を授与されたこと。
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
- 日常的な場面で使われる日本語に加え、論理的にやや複雑な日本語を含む幅広い場面で使われる日本語を理解することができる能力を有していることを試験その他の方法により証明されていること。
- 本邦の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること。
出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成二年五月二十四日法務省告示第百三十一号)
最近改正令和元年六月十七日法務省告示第四十号
特定活動ビザは日本企業の外国人採用の受け皿
特定活動ビザは、日本企業が若手の外国人材を採用できるように、適用範囲を広げている現状がお伝えできたでしょうか。じつはこれまで、日本で留学を終えた優秀な外国人留学生がいても、日本企業に就職が出来ずに帰国せざるえない状況が多くありました。
特定活動ビザはこうした「専門性を持ち、日本語のコミュニケーションもできる外国人留学生」に日本社会にとどまって活躍してもらうことや、過去に母国に帰国せざるえなかった優秀な外国人材の日本への再来日を促す意味でも、大きな役割を果たすことが期待される在留資格なのです。
新型コロナ対応にも活躍する「特定活動ビザ」
(2020年6月17日付記:2020年5月21日以降の最新の取り扱い)
新型コロナウイルスの影響により帰国が困難になった外国人が多数いる現状において、在留資格「特定活動(6カ月)」が付与される緊急措置が取られています。
「特定活動(6カ月)」には就労可と就労不可の2種類があります。
特定活動(就労可)6カ月
「特定活動(6カ月)」のうち、「就労可」の対象となるのは以下の2つのグループに属する外国人となります。
- 在留資格「留学」で在留していた、または在留しており、就労を希望する外国人
- 在留資格「技能実習」および「特定活動」で在留していた、または在留しており、就労を希望する外国人
特定活動(就労不可)6カ月
「特定活動(6カ月)」のうち、「就労不可」の対象となるのは以下の2つのグループに属する外国人となります。
- 前出の2つのグループに属する外国人のうち、就労を希望しない人
- その他の、中期在留資格、長期在留資格で帰国を希望する外国人
特定活動ビザは今回のコロナ対応でも活用されたように、緊急時の外国人保護対応にも利用されるなど、機動性や汎用性の高い在留資格といえます。
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