優秀なベトナム人材を採用するにはどうすればいいのでしょうか?日本における外国人労働者数は2020年現在166万人を超え、その中でもベトナム人材は急激な増加を見せています。ベトナム人材は日本における外国人労働者の約1/4を占め、いまや日本国内には40万人以上のベトナム人材が働いています。
ここでは、ベトナム人材採用のメリットや雇用時の注意点と、ベトナム人材への上手な指導方法などをまとめました。記事後半では、ベトナム人材が急激に増えているのはどのような背景があるのか、採用時の就労ビザなど手続き関連についてもご説明します。
ベトナムに日中韓が注目しつつある
日本で急増するベトナムの存在感ですが、じつはアジア全体においてもベトナムの存在感は高まっています。背景にあるのは中国に一極集中していた世界の生産拠点がベトナムなどの東南アジアに分散し始めたことが挙げられます。経済的成熟により中国の人件費が高まったことや、一極集中によるさまざまなリスクを避ける意味で生産拠点を分散する動きが強まったからです。
ベトナムはもともと水産資源、鉱物資源に恵まれているうえ、温暖な気候から農産物も豊富です。さらに工業化が進むにつれ、経済も好調(2018年度経済成長率は年平均で7.08%、物価上昇率は3.54%)となっています。これに加えてベトナム国民の平均年齢は32.5歳と若い人材が多いことも、まだまだ経済成長が続くと考えられる理由です。
- 成長する貿易相手国として
- 有望な投資対象として
- 若く優秀な人材の宝庫として
ベトナムの魅力は世界に認識されつつあり、日本だけでなく、中国や韓国の企業も積極的に投資を進めている現状です。
ベトナム人材の日本での就労数は大きく増えている
厚生労働省の発表している「外国人雇用状況(令和元年10月末現在)」を見ると、ベトナム人材の日本での最新の就労者数は、平成27年以降中国に次いで5年連続で2位であり、対前年増減比だけ見れば過去5年間でもっとも急激な伸びを見せています。
ビザからわかるベトナム人材の活動内容
「外国人雇用状況(令和元年10月末現在)」の別表1からは、ベトナム人材が日本において、どの在留資格(ビザ)でどんな活動をしているかわかります。
2020年現在、日本に長期滞在しているベトナム人材のおもな活動内容は以下となっています。
- 技能実習ビザを付与された技能実習生…約5割
- 留学ビザを付与された留学生…約3割
- 「技術・人文知識・国際業務」ビザを付与された人材…約1割
ベトナム人材が雇用されている産業は?
「外国人雇用状況(令和元年10月末現在)」の別表7からは、ベトナム人材がどの産業に多く従事しているかがわかります。
現時点で見れば「製造業、宿泊業、飲食サービス業、小売業、建設業」などで多くのベトナム人が雇用されている状況です。その多くは技能実習生や留学生の資格外活動(週28時間以内のアルバイト)と推定されます。
日本とベトナムのEPA(経済連携協定)とベトナム人材
2008年に締結された「日本・ベトナム経済連携協定(JVEPA)」には、日本がこれから積極的に受け入れようとしているベトナム人材が明記されています。
- ベトナム人IT技術者
- ベトナム人看護師、介護福祉士
現状日本で「医療、福祉」と「情報通信業」に従事するベトナム人材の割合は、それぞれ全体の1.2%にとどまっていますが(前出「外国人雇用状況」別表7より)、この領域に従事する人材採用もこれから増えていくことが予想されます。
ベトナム人材採用のメリット
ベトナム人材は以下のような特徴があると言われています。うまく日本企業になじんで定着してくれれば、気質と能力の高さから大きな戦力となります。
- まじめで仕事熱心、責任感が強い
- 穏やかな気質と細やかな仕事ぶり
- 向上心が高くスキルアップの勉強に熱心
- 同じ仕事を自分なりに工夫しようとする
勉強熱心な国民性で教育水準が高い
ベトナム人は教育熱心で、識字率が90%以上と非常に高いことで知られます。日本や中国、韓国に負けず劣らずの受験勉強をするため、ベトナム人材の教育水準はアジアでも高いといえます。また、2016年の新教育カリキュラム導入以降、ベトナムでは小学生にもパソコンや外国語の授業を行っており、若く優秀なIT技術者の輩出国となりつつあるのも注目です。
経済援助(ODA)と日本のテレビ番組で育まれた親日感情
ベトナムの若者は親日感情が高いといわれます。日本のODAが社会インフラ構築に貢献したことや、テレビで日本のテレビ番組を見ていることが影響していると考えられ、テレビでは日本のニュース、ドラマ、アニメなどが放送され、日本語を勉強するきっかけとなることも多いようです。日本の小学生が大好きな青いネコ型ロボットのマンガはベトナムの子供たちにも人気があります。
ベトナム人材採用時の注意点
「ベトナム人材を採用したが、日本の常識が通じない…」ということがないように、ベトナムの働き方や職場の常識をまとめて見ていきましょう。日本の雇用慣行とは異なる点が多いので、知っておくことでスムーズにベトナム人材採用を進められます。
働き方は「朝型勤務」、お昼休みは日本より長め
ベトナムの会社は日本よりも始業時間が早く、朝8時から17時半、または8時半から18時までの勤務となります。昼休みは日本よりも長く、2時間も取れる会社もあります。昼休みの過ごし方はそれぞれですが、ベトナムには昼寝をする習慣があるので仮眠したり、昼休みを利用して子供のお迎えに行く人もいます。
ベトナムで残業してもらうには「割増賃金」が必要
ベトナム人は家族を大切にする国民性のため、基本的に残業はしません。就業時間が終わったら、独身の人は学校へ行ったりジムなどへ行ったりしますし、結婚している人はできるだけ就業時間内に仕事を終わらせて、家族と一緒に過ごすのがベトナム式のライフスタイルです。
ベトナムでは残業は割増賃金となり、平日でも定時勤務の1.5倍、土日であれば2.0倍、祝日であれば3.0倍を支給することが法律によって義務付けられています。それでも「残業で稼ぐ」という感覚はあまりなく、残業が多い業種や企業の離職率は高いといわれます。
ベトナムに「就活」という概念はない
大学新卒採用の採用活動日程が国によって規制されている日本とは違い、ベトナムでは各大学に許可を得て大学生の面接会場を設けます。公務員試験などをのぞき、採用試験はしないのが普通です。何度も面接を繰り返して内定までに時間がかかるのは好まれないため、1回面接したら1週間後には結果を通知するのが一般的です。内定した大学生にはすぐにインターンとして働き始めてもらい、卒業後はそのまま就職してもらうという流れです。
オファー内容や諸費用の負担は明確に
オファー時の給与提示は、手取り金額なのか、総支給額(税引前の額面金額)なのか、引っ越し費用やビザ申請費用は込みか別か、きちんと書面でオファーしましょう。ベトナムでは外資系企業は引っ越し費用、ビザ申請費用などの諸費用も負担してくれると思われています。日本企業はこれらを自己負担としていることが多いので、思わぬトラブルになりがちです。
ベトナム人材の上手な指導方法
ベトナム人材に限らず、外国人を指導するときには「その国の人の心に届く」コミュニケーションをしないと意味がありません。ベトナムの仕事文化や指導方法で、知っておきたいポイントをまとめました。
ベトナムの若者に「おせっかい」「飲ミニケーション」は嫌われない
ベトナム人は集団で過ごすことが好きで仲間との時間を大事にします。反対に職場で孤独を感じるとすぐ退職しまう傾向があります。ベトナム人材の雇用と定着には、「孤独を感じさせない」ことがポイントです。
近年、日本の若者は「飲み会が迷惑」「忘年会スルー」など、「飲ミニケーション」を敬遠する傾向もみられますが、ベトナム人材の雇用と定着においては、細やかな気遣いや多少のおせっかいは必要と考えたほうがいいでしょう。特に地方などでは社外のベトナム人コミュニティなども少なく、孤独を感じやすいため、採用当初に積極的に話しかけたり、飲み会を開いて誘ったりすることが必要です。
プライドを傷つけないように「もう一度聞く」
ベトナム人はプライドが高いといわれ、日本語の指示が理解できなくても「わかりません」と言い出さない傾向があります。「ちゃんとわかっているのか?」と問い詰めたりするよりも、「今の説明をもう一回繰り返してみてもらえるかな?」と、プライドを傷つけない形で確認したり、初回の作業をチェックしながら進める必要があります。
他人の眼前でひどく叱りつけない
他人の面前で怒鳴る、なじるなど、ストレスをかける指導方法は、ベトナム人からは、きちんとした職業指導であるとは受け取られません。仮に本人がミスをしていて怒られても「日本人同士ならこんな扱いはしない、ベトナム人だからいじめられる」と感じる傾向があります。声を荒げた指導方法は逆効果と心得て丁寧に指導するべきです。
旧正月は帰省を前提に仕事の調整を
ベトナム人が多い職場の旧正月(2月頭)はスケジュール管理に注意が必要です。日本に旧正月はありませんので忘れがちですが、ベトナム人にとっては家族が集う大切な時期で、日本におけるお盆やお正月と同じ帰省時期です。ほとんどの人が故郷に帰りたがります。職場のベトナム人がいきなり有給休暇を使って休んでしまうと困りますから、旧正月の前には帰省を前提として彼らの仕事を調整しておくほうがいいでしょう。
ベトナムの悪口を言わない
母国の悪口を言わないのは外国人雇用の最低限のルールです。とくにベトナム人は愛国心や、ベトナム人としての自意識が強いといわれます。これは社会主義の愛国教育の影響もありますが、近代から20世紀後半にいたるまで、度重なる戦争や混乱を生き抜いてきたことも関係あるかもしれません。ベトナムの悪口を目の前で言ったりすることは避けるべきです。
ベトナム人の大卒人材の採用の流れ
ベトナム人のエンジニアなどを採用するにはどうすればよいのでしょうか?ベトナム人大卒人材を採用するには大きく3種類の方法があります。
- 日本国内で新卒採用する
- 日本国内で中途採用する
- ベトナム現地で直接採用する
それぞれのやり方について見ていきましょう。
①日本国内でベトナム人の新卒採用する
日本国内にいるベトナム人の留学生は、文部科学省の発表した「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等についてというページによると2020年4月2日時点で7万3389人となっています。これは対前年比1035人増であり、1位の中国(12万4436人)に次ぐ人数です。
日本国内にいる留学生を採用するには以下のようなやり方があります。
- 民間主催の留学生向けジョブフェア
- 新卒採用サービスの利用
- 大学や研究機関との連携
- 留学生支援機関等の紹介
- 経済産業局の就職説明会参加
- ハローワークや外国人雇用サービスセンターの利用
②日本国内でベトナム人の転職者を中途採用する
日本国内ですでに働いている外国人を採用することも可能ですが、気を付けなければいけないポイントがあります。
- 就労ビザ(在留資格)の期限はじゅうぶんか?
- 就労ビザに認められた職務内容への転職か?
就労ビザ(在留資格)の変更は容易ではないため、これらのポイントをきちんとおさえ遵守しないと不法就労を助長したとみなされる可能性があります。
③ベトナム現地で海外直接採用する
ベトナム現地に赴いて優秀な大卒人材をリクルートする企業も増えています。日本国内で外国人留学生を採用したい企業が増えており、採用コストや競争率を考えると日本国内での採用に限界を感じる企業が増えているためです。
海外にいる外国人を採用するときには、日本の企業が作ってきた「雇用文化」がまったく共有されていないことを認識して、現地のルールや常識を学ぶことが必要となります。
また、外国人労働者を日本に呼び寄せる際には就労ビザ(就労が許可された在留資格のこと)取得が必要となります。就労ビザ取得には在留資格認定証明書と呼ばれる証明書が必要であり、これは入国の数か月前に手配を開始しなくてはなりません。
そもそも内定を出す前にも、その候補者が就労ビザを付与してもらえそうか事前調査が必要です。どうやって就労ビザを取得するのか、簡単に見ておきましょう。
日本の「働き方改革」とベトナム人材活用
ベトナム人材は仲間を大切にするため、いったん日本人の上司や同僚とコミュニケーションが成立して仲間意識が生まれれば、離職率がとても低くなります。
家族や仲間を大切にし、勤務時間外は人生をのびのびと楽しむという姿勢は、日本の目指す「働き方改革」にも通じます。ベトナム人気質を尊重しつつ、丁寧な指導をすれば、持ち前の器用さと頭の良さを活かして大きな若い戦力となってくれることでしょう。
ここまで見てきたようにベトナム人材は日本人と似ているところもあり、また全く常識が異なるところもあります。ベトナム人材採用にあたっては現地の情報に詳しく、信頼できる人材エージェントを利用するのもおすすめです。
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