「やさしい日本語」は、「優しい」「易しい」日本語のことを言います。
1995年1月に起きた阪神・淡路大震災をきっかけに、「やさしい日本語」を広めるための取り組みが本格的に始まりました。
日本には、多くの外国人が暮らしています。
出入国在留管理庁によると、2020年12月時点で日本に居住する外国人は、2,928,940人で約293万人、これは日本の総人口の約2%に相当します。
「日本に在住する外国人は、日本語を介して上手にコミュニケーションできるのか」
この問いに対する答えは、おそらくNO(ノー)でしょう。
上手にコミュニケーションできるかというのは、もちろん感覚的なところもあるので、人によって異なるでしょうが、しかしながら、日本語が母語ではない外国人にとってみれば、世界一習得が難しいと言われている日本語を身につけることは、決して楽ではありません。
本作は、前回に引き続き【やさしい日本語シリーズ】の第2回目です。
今回は、「世間からみたやさしい日本語」についてお話しておきます。
世間の人々が捉えている、やさしい日本語とは何でしょうか。
世間からみたやさしい日本語とは何か?~東京都生活文化局の調査結果を参考に~
それでは、世間からみたやさしい日本語とは何かについて考えていきます。
早速ですが、ここで、日本国内の都道府県別在留外国人の総数をみてみましょう。
出入国在留管理庁の2020年12月の調査によれば、都道府県別に人口が多いのは、上から、東京都(560,180人)、愛知県(273,784人)、大阪府(253,814人)、神奈川県(232,321人)です。都府県を中心に在留外国人が集中していることが分かります。
今回は、この中で最も在住外国人数が多い東京都、都庁は東京都生活文化局の施策を、世間の取り組みの一つとして、焦点を充てていきます。
東京都生活文化局とは?
東京都生活文化局とは、都庁にある部署の一つです。
この局では、「都民の日常を豊かにする、生活や文化に関するサービスを提供していく」と題し、広報・広聴活動、地域活動・多文化共生の推進、法人の許認可、男女平等参画の推進、消費生活の向上、私学振興、文化振興など、さまざまな施策を展開しています。
東京都生活文化局の役割に、地域活動・多文化共生の推進がありますが、やさしい日本語に関する施策は、この中の一環です。
直近では、2021年3月に、新型コロナウイルスワクチン接種について、やさしい日本語でチラシを作成したり、4月には、緊急事態宣言について「東京都から都民へのお願い」の主旨をやさしい日本語でまとめたりするなど、日々、多文化共生の推進を行っています。
やさしい日本語に関する調査を行っている
東京都生活文化局は、2020年末に、東京都と都外の関連機関に向けて、やさしい日本語に関する調査を行いました。
この調査は、東京都内の区市町村(62自治体)、東京都内の国際交流協会(22団体)、都外の国際交流協会(15団体)、東京都内の社会福祉協議会(62団体)を対象に、やさしい日本語の活用状況やニーズを把握、情報の共有と連携の強化を図り、東京都の施策充実に向けた検討に活用する目的で行われました。
以降で、こちらの調査結果について詳しくみていきます。
やさしい日本語の活用・取り組み状況と具体的な内容
調査から、やさしい日本語の活用と取り組み状況が明らかになりました。
まず、やさしい日本語を活用し取り組んでいる団体は半数以上であること。とりわけ、国際交流協会に関しては、86.4%の驚異的な数値を出しています。
どんな取り組みをしているのかについては、上から順に、HP、SNS、ニュースレター等の広報紙、防災リーフレット、生活ガイドなどが挙がりました。
印象的だったのは、多くの関連団体がやさしい日本語に関する講座や研修を実施してはいるものの、やさしい日本語で普及啓発動画を制作したり、手引き等を作成したりといった、対外的に何かを出すところまでは至っていない、ということです。
やさしい日本語に取り組んだ効果は?
やさしい日本語に取り組んだことで得られた効果をみていきます。
以下のように、やさしい日本語に取り組んだことで驚くべき効果が出ています。
- 外国人からも内容がわかりやすくなったという声が多く寄せられてきていること
- SNSでのやさしい日本語での投稿は他の記事に比べてリーチ数が高いこと
- 日本人と外国人双方のコミュニケーションの向上し理解につながっていること
- 外国語を苦手とする市民が、外国人に対して声をかけるハードルが低くなったこと
やはり、やさしい日本語に取り組んだことで得られる効果は大きいようです。
やさしい日本語の問題点や課題は?
やさしい日本語の活用を進める上での問題点や課題についてみていきます。
- やさしい日本語はそもそも知られていない認知不足であること
- 必要性は感じているが、どのように取り組めばいいか分からないこと
- 意義や有用性は認知しているが知識・ノウハウの不足により活用が進まないこと
- 団体内の連携が難しいこと
- 推進するマンパワーの不足があること
「やさしい日本語はそもそも知られておらず認知不足であること」これが圧倒的多数で、全体の70%を占めていることが明らかになりました。
現状はやさしい日本語の取り組みが急務
やさしい日本語の取り組みは、早急に対応すべき課題です。
とりわけ医療や防災分野は、昨今の状況も考えれると、本当に急がなければなりません。
医療に加えて、社会保障、子育て、税なども、外国人向けの生活相談に寄せられることが多いので、やさしい日本語を積極的に活用していくことが現場では求められています。
外国人とのコミュニケーションが必要となるあらゆる場面おいて、「最初の入り口はすべてやさしい日本語にするほうがいいのではないか」と考える人もいるほどです。
現状は、自治体によって、やさしい日本語の取り組み状況は様々ですが、間違いなく言えることとしては、「やさしい日本語のニーズは大いにある」ということです。
何より大切なことは、真の意味でのやさしい日本語というのは、外国人にとっても、制作する側の日本人にとっても、お互いに「やさしい」と感じられることです。これを抜きにしては、やさしい日本語の完成は到底叶わないでしょう。
次回はシリーズ最終回。外国人からみたやさしい日本語×世間からみたやさしい日本語について、お話ししていきます。
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