外国人が日本で働くためには、原則として就労ビザが必要です。「就労ビザ」とは、日本における就労を目的とした在留資格の通称です。日本には2024年1月現在で30種類以上の在留資格がありますが、この記事では就労が可能な在留資格(就労ビザ)の種類とそれぞれの特徴、取得の流れや、就労ビザの種類を確認する方法を申請取次行政書士が解説します。
就労できない在留資格の種類や、許可によっては就労出来るビザ、新しく追加された在留資格などをふくめた最新情報をまとめました。
就労ビザとは?
「就労ビザ」という言葉は、日本における就労を目的とした在留資格の通称です。「就労ビザを取得する」とは、法務省によって日本国内において就労し報酬を得ることが許可される在留資格のいずれか1つを付与されることを意味します。
入管法の「ビザ(査証)」といわゆる「就労ビザ」は別物!
出入国管理及び難民認定法(入管法)によって規定されている「ビザ(査証)」と、世間一般でいう「就労ビザ」という通称は、別のものです。
・入管法でいう「ビザ(査証)」…海外に在住の外国人が、日本への入国許可を求める証明書のことをいいます。外国人本人が現地の日本の大使館や領事館に申請、外務省によって発行されます。
・通称でいう「就労ビザ」…外国人が日本国内での就労を目的とした在留資格の通称です。外国人本人や就労先企業などが日本にある管轄の入管で手続きを行い、得ることが出来る滞在許可であり、法務省によって発行されます。
日本で就労が許可される在留資格は何種類?
日本にいる外国人に就労が許可される在留資格は、2023年1月現在、以下のようになっています。
就労に制限がない「身分・地位にもとづく在留資格」
永住や結婚、歴史的な経緯や難民指定などにより得られた「身分と地位」にもとづく在留資格。就労するときに業種や期間の制約がありません。
名称 | 具体的な例 |
永住者 | 永住許可を受けた人 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者、日本人の実子等 |
永住者の配偶者等 | 永住者の配偶者、永住者の日本で出生した実子等 |
定住者 | 日系人、定住インドシナ難民、中国残留邦人の配偶者・子、外国で出生した永住者の実子、外国人配偶者の連れ子、その他日本への一定の定着性や在留の必要性が認められる者 |
「活動に対して付与される在留資格」のうち就労が許可されている、いわゆる就労ビザ
外国人が法務省から「日本で行う活動」を認められて付与される在留資格。このうち、就労できる在留資格(いわゆる就労ビザ)は下の一覧表のとおりになります。
名称 | 具体的な例 |
外交 | 外国政府の大使、公使等及びその家族 |
公用 | 外国政府等の公務に従事する者及びその家族 |
教授 | 大学教授、助教授、助手など |
芸術 | 作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、写真家など |
宗教 | 僧侶、司教、宣教師等の宗教家など |
報道 | 新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど |
高度専門職 | ポイント制による高度人材。1号と2号がある。 |
経営・管理 | 会社社長、役員など |
法律・会計業務 | 日本の資格を有する弁護士、司法書士、公認会計士、税理士など |
医療 | 日本の資格を有する医師、歯科医師、薬剤師、看護師など |
研究 | 研究所等の研究員、調査員など |
教育 | 小・中・高校の英語教員など |
技術・人文知識・国際業務 | 理工系技術者、IT技術者、外国語教師、通訳、コピーライター、デザイナーなど |
企業内転勤 | 外国の事務所からの転勤者 |
介護 | 介護福祉士の資格を有する介護士など |
興行 | 演奏家、俳優、歌手、ダンサー、スポーツ選手、モデルなど |
技能 | 外国料理の調理師、調教師、パイロット、スポーツ・トレーナー、ソムリエなど |
特定技能 | 技能実習生(特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能、熟練した技能を要する産業に従事するもの)1号と2号がある。 |
技能実習 | 技能実習生(海外の子会社等から受け入れる技能実習生、監理団体を通じて受け入れる技能実習生) 「技能実習生イ」と「技能実習生ロ」がある。 |
「活動に対して付与される在留資格」のうち就労と就労以外の目的が混在しているもの
特定活動のビザは、入管法上「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」とのみ定義されており、具体的にどのような在留許可を得ている資格なのかは、外国人一人ひとりのパスポートに貼付された「指定書」の記載内容を確認する必要があります。就労が許可されている内容の場合と、そうでない場合が混在します。
名称 | 具体的な例 |
特定活動 | 外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー入国者、報酬を伴うインターンシップ、EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者など |
就労を許可されていない「活動に対して付与される在留資格」
就労以外を目的として付与された在留資格では、基本的には就労が許可されていません。資格外活動許可を受ければ、一定の範囲内の就労が認められるものがあります。
名称 | 具体的な例 |
文化活動 | 「我が国特有の文化又は技芸」について専門的な研究や修得を行う人 |
短期滞在 | 観光、商用、知人・親族訪問などのために90日以内の滞在をし、報酬を得る活動をしない短期滞在者 |
留学 | 大学、専門学校、日本語学校などの学生 |
研修 | 研修生 |
家族滞在 | 就労ビザなどで日本に来た外国人の配偶者や子供 |
- 留学生のアルバイトは「資格外活動」を申請することで可能に
日本に留学している外国人学生は、基本的には就労は認められていませんが、資格外活動許可を申請して認められれば、週28時間以内のアルバイト、夏休みや春休みなど長期休暇中は1日8時間(かつ1週40時間以内)までの就労が認めらます。留学生が卒業後日本で就職する場合は留学ビザから就業ビザに切り替える必要があります。
日本で就労ビザを取得する流れ
日本に上陸する外国人は、到着した空港や港に常駐する法務省の入国審査官に、自国内の日本国大使館や領事館で発行してもらったビザを提示し、入国審査を受けます。
日本国内に正式に入国が認められ、一定期間の在留を許可されると、32種類の在留資格(2024年1月現在。数え方については諸説あります)から、いずれかひとつの在留資格と在留期限を付与されます。
入国審査時の在留資格の認定がスムーズに行われるように、外国人は入国に先立って在留資格認定証明書の交付を申請しておきます。実務上は雇用先の企業が外国人本人の代理人として日本国内で申請をしますが、法律のプロである申請取次者(行政書士など)に依頼することもできます。
在留資格(就労ビザ)の確認方法
外国人は付与された在留資格ごとに、就労できる業務内容や在留期間が異なります。雇用にあたってはこれらが記載された在留カードの確認が必要となります。
パスポートに貼付された上陸許可印には、初上陸時に入国審査官によって決定された在留資格と在留期限が記載されています。しかし、上陸後に在留期間を更新したり、就労できる業務内容を変更した場合は、パスポートの上陸許可印だけでは確認が出来ません。かならず在留カードを提示してもらってください。
付与された在留資格ごとに正しい外国人雇用を
少子高齢化による人手不足やビジネスのグローバル化により、日本企業も専門的分野や技術的分野に優秀な外国人を雇用する機会が増えています。
外国人においては、一人ひとりの在留資格により就労できる業務内容と在留期間が違うので、これを遵守して雇用をしないと、雇用した企業側も入管法違反による厳しい刑事罰を受けます。
外国人一人ひとりに付与された在留資格と在留期間を確認し、正しい雇用をするように心がけたいものです。
参考サイト:外務省ホームページより日本での就労や長期滞在を目的とする在留資格、出入国管理庁ホームページより在留資格一覧表(令和6年1月現在)
参考資料:行政書士明るい総合法務事務所 提供資料「在留資格(ビザ)について」
初めての外国人採用、外国人雇い入れ時に読む冊子シリーズ、人事向けビジネス英語フレーズなどのお役立ち資料をご自由にダウンロードいただけます。
資料についてのご質問はお問い合わせぺージよりご連絡ください。