日本語が話せる優秀な人材はベトナム、ミャンマーを含め、海外にはたくさんいらっしゃいます。韓国もその中のひとつです。
今回取材させていただいた神奈川機器工業株式会社様は、船舶の燃料油や潤滑油、ガスなど各種流体の高性能濾過器の開発・設計・製造・販売などを手がけており、船の安定性を保つバラスト水処理装置で成長中の企業様です。
船に使用する燃料が変わったり、常に世の中の流れが目まぐるしく変わる中で、世界に通用する人材の育成も大切であると考えていらっしゃるようです。
韓国の技術エンジニアであるOさんを採用されて半年が経過しました。日本語のコミュニケーションも十分にできるということで、仕事を円滑に一緒に進めることができるそうです。今後のOさんのご活躍に期待です。
今回は執行役員 兼 技術開発部 部長である堺 守俊様と、Oさんの直属の上司となる技術開発部 課長の小澤 隆之様にお話をお伺いいたしました。
外国人人材、韓国人材についてご検討されている企業様にはぜひ読んでいただきたい記事となっております。
【神奈川機器工業株式会社様について】
会社名:神奈川機器工業株式会社
所在地:神奈川県横浜市磯子区岡村8-19-1
代表者:卜部 礼二郎
URL :https://www.kanagawa-kiki.co.jp/
ーー御社の事業内容を簡単にご紹介いただけますか?
・堺様
主な事業内容は、船舶の燃料油や潤滑油、ガスなど各種流体の高性能濾過器の開発・設計・製造・販売が9割、残りの1割は陸用プラント向けとして飲料メーカーや化粧品メーカー向けの製造ラインにおける各種関連機器など、水陸両用で幅広く手がけています。
ーー人材育成として、実際に行っていることはありますか?
・堺様
当社では、人材育成とコミュニケーションを経営方針重要課題として掲げています。海外の取引先企業もいらっしゃるので、英語が重要になることもあります。希望者には外部の先生を呼んで英語の授業を取り入れたり、自己啓発のために外部の研修へ行きたいという希望などがあれば、積極的な補助も行っています。
ーー韓国からの採用でしたが、他の国も検討されていましたか?韓国人材の採用を決めたきっかけは何でしょうか。
・堺様
初めは外国人人材の採用は全く考えておらず、流体力学や材料力学など、基本的な単位を取っている日本人で理系大学を卒業した新卒を第一に希望していました。お付き合いのある大学など色々当たったのですが、なかなか採用ができませんでした。
そんな時にSMBC ヒューマン・キャリアさんから「国籍は問いませんか?」とご連絡をいただきました。弊社代表も私も国籍には拘わりませんでしたので「人物本位なので、どこの国が駄目ということはありません。」とご返答したところ、ワンテラスさんをご紹介いただき、外国人人材、今回は韓国人人材の採用のお話をいただいたのがきっかけでした。
初めにお伝えしたように日本人を一番に希望していましたが、韓国の方を面接して非常に良かったので、採用しました。
また、鉄鋼メーカー向けのマグネットフィルターを作るビジネスモデルもある中で、弊社のお取引先関係に韓国にある企業さんもいますので、ビジネス上の関係性を多少考慮したのもあります。
ーーコロナ禍での面接、採用でしたが、オンライン上での面接はいかがでしたか?
・堺様
本来であれば、対面でニュアンス的なこともわかった方が良いと思いますが、思いのほかZoomでも臨場感を伝えることもできますし、直接会わないと駄目だなという特段の違和感もありませんでした。
入社して半年が経過した現在も、面接会のZoomや入国前の打ち合わせで会話したときの感覚と違和感がないので、大変よかったと思っています。
韓国現地と繋いだオンライン面接会ということで、通常であれば日本と韓国の移動時間や旅費などがかかってしまいますが、オンラインを利用することで気軽に取り組むことができ、経済面でも非常に助かりました。
面接会当日には、我々の意図する日本語が通じない方も何名かいらっしゃいましたが、ワンテラスさんのコーディネーターから通訳をしていただきましたので、問題なく進行することができました。Oさんはコーディネーターがいなくても問題なくコミュニケーションをとることができたので、日本語も大丈夫だろうなと確信を持つことができました。
ーーOさんの第一印象はいかがでしたか?
・堺様
空港で初めて会った時にはビジュアル的には日本人のようで、異国の方という感じは全くありませんでした。海外に来て戸惑っているという感じもなく非常に真面目な青年だなと感じました。
メールやLINEのような電子メッセージの時代もあって日本人でもコミュニケーションがうまくできない若い人が多い中で、Oさんはこちら側が伝えようとしている内容を理解したり、認知する力が異国の人という違和感を感じさせないんです。わからない時にはちゃんと質問をしてくれますし、一緒に仕事をする際もスムーズに進行することができます。
・小澤様
今もそんなに変わりませんが、素朴な好青年というイメージです。
仕事も淡々とこなして、普通に良い人だなぁという印象があります。
一緒に仕事をする中で、Oさんは注意するところもないくらい優秀すぎるなと感じています。
ーーOさんの受入にあたり社員にはどのような周知を行いましたか。また、社員の方々の反応はいかがでしたか。
・堺様
例年通り今年はコロナウイルスのため新人歓迎会が開催できなかったため、夏休み前に納涼会と称して一緒に新人歓迎会を実施しました。Oさんにも全社員の前で挨拶をしてもらったり、各部署に連れて回って紹介をしたりということもしました。
特に社員からのマイナスな反応もありませんし、円滑に行っていると思います。
ーー入国準備に関して大変だったことをお聞かせください。
・堺様
やはり、コロナ禍での入国に必要となった厚生労働省管轄の「ERFS(エルフス)」(入国者健康確認システム)に一番苦労しました。3月からスタートしたシステムですが、開始当初は多くの方が殺到したようで、4月入社に間に合って欲しいということもあったのでなかなかログインできなかったり、申請も大変でした。
それから住居の手配です。なかなか外国人を受け入れてくれるところがなくて、会社で契約した上に個人の保証も入れて欲しいということで、保証人になったりするなどの手続きもありました。
Oさんが日本で働く上で必要になる、在留資格認定証明書(COE)を申請する際には、行政書士の先生には色々なアドバイスをいただきましたし、事前にワンテラスさんの方で入国に関するフローなども教えていただいていたので、滞りなく進めることができました。
ーーOさんの現在のお仕事内容を教えていただけますか。
・小澤様
当社の技術開発部は技術チームと開発チームにわかれていて、Oさんの所属は開発チームです。ただ、知識がなければ開発など当然できないので、技術チームで実際にどのようなことを行っているのかを勉強してもらっています。例えば油のフィルターですが、油をフィルターする前と後ではどれだけのゴミが取れたかなどの分析などです。分析などは1回教えただけで、もう今まで何十年もやってきた方の代わりになってしまうくらい、覚えが早く腕もいいです。フィルターの設計などはノウハウが必要なところなので難しいですが、結果に対する分析や、機械的業務のところを現在やってもらっています。
他には、外国の取引先企業様とのやり取りについて、英語で対応していたところを、現在は私に変わって担当してもらっています。
午前は技術チームで業務と勉強をしてもらい、午後は開発チームで仕事をしてもらっています。
・堺様
先ほどお話があったフィルターの分析に関しては、大分貢献してくれています。前任の担当者は50歳くらいの方で、その方しか対応できない作業だと社内認識があり、長年お願いをしてきたのですが、Oさんに教えたところ、1回で覚えてくれて、さらには十分にカバーできてしまっているので、Oさんの優秀さを感じています。
ーー 一緒に働いてみて、良かったと感じることはありますか?
・小澤様
Oさんのコミュニケーション能力は、やはり高いなと感じています。
一緒に仕事をしていてもスムーズに進行できますし、仕事の内容もおかしくなることもありません。先にもお話があったようにOさんの場合はこちら側が伝えようとしていることを汲み取る能力が高いので、伝えた意図がズレることがないんです。
わからない時には必ず確認や質問をしてくれますので、思い込みで仕事を進めることもありません。
・堺様
日本人だと主語が省略されることが多いので、行うアクションは間違っていないのですが、結果的に全然違う方向に進んでいるということがあったりします。
その点、Oさんはコミュニケーションがしっかりと取れています。
ーーでは逆に、困ったことはありますか?
・小澤様
正直なところ、入社して半年なので、まずは仕事に慣れてもらう部分で業務を依頼しています。本格的な業務には従事させていないというところがあるので、現状困っていることはないですね。
・堺様
今後、本格的に高難度な仕事を依頼した時に出てくることもあるかもしれないですね。ただ、取り組み姿勢がいいですし、本人自身は、我慢強い性格だと言っているので、言葉通り難度の高いいろんな問題に耐えてスキルを向上していけるかだと思います。1年経過してから、私たちの教育の部分と本人の努力をマッチさせられるかが課題だと思っています。、
・小澤様
あるとしたら、一緒にお酒が飲めたらいいのになと思うくらいですね(笑)
飲めないこともないみたいですが、怪我をしない飲み方をしているので、慎重な方ですね。
ーー異文化を感じる瞬間などはありますか。
・小澤様
私は、あまり感じないですね。
・堺様
そうですね、私も同じようにあまり感じていないですね。
以前に別の国の方がいた時は、挨拶などの言葉遣いで感じることはありましたが、Oさんは見た目も雰囲気も日本人のようなので、言われなければ全くわかりません。
逆に、異文化を感じさせてほしいなという気持ちがあります。
当社の若手社員に良い刺激を与える意味でも、慣れてきたら、ぜひガツガツと仕事をしていって欲しいなと思います。
ーーOさんのマネジメントにあたり、意識していることはありますか。
・小澤様
依頼した仕事を闇雲にやってもらうのではなく、「Oさんにお願いしている仕事は、今後、こんなことろでこんなふうに役立つんだよ」ということを伝えながら依頼をしたり、本人にもそのような意識で業務にあたってもらっています。
どの仕事も彼にとって経験になるので、まずはいろんな業務をやってもらえたらと思っています。
また、当社は70周年になるのですが、今までフィルターのノウハウなど、先輩技術者の方々に頼ってしまっていたところがあったと思います。これからの製品開発において、今までと同じように開発、制作していくのではなく、「どうしてこれはこうなったんだろう」など、常に疑問を持ちながら、自ら勉強して追求していく姿勢が必要だと思いますし、それは10年後に圧倒的な差がつくと思っています。
依頼された仕事を淡々とこなすだけではなく、そういった疑問に気づいてもらうために、お題を課しながら依頼していければと思っています。
・堺様
次世代の人材を育てていくということは、当社にとって重要課題だと思っています。次の世代を見据えた育成をしていくべく、2、3年でできる技術ではないですが、Oさんには非常に期待しています。
ーー社員の皆様とOさんとのコミュニケーションはいかがでしょうか。
・小澤様
現在は技術開発部に所属しているのですが、勉強のために製造の方でも数日間研修をしてもらっています。コミュニケーションが上手ということもあって、現場や幹部の人たちから可愛がられたり、周囲からの評判はいいです。
同年代だと3つ年下の派遣社員の方と一緒にお昼ご飯を食べに行ったり、バッティングセンターに行ったりしているみたいなので、若手社員とのコミュニケーションも特に心配はしていません。
ーー外国籍社員の方が活躍するにあたって、企業側が意識をすると良いこと、しておくと良いことはございますか。
・堺様
この国だから、あの国だからというような国籍は意識せず、人として、1人の若手技術者として接することが、双方にとっても良いのではないかと思っています。
社内では国際的な問題や政治的な問題など、ブラックユーモアな冗談であっても言わないようにと、全体で意識をして注意するようにしています。
ーー外国人材採用へ一歩踏み出そうか迷っている企業様へ一言メッセージを頂けますか。
・小澤様
海外には優秀な方がたくさんいらっしゃるようなので、採用のチャンスだと思います。ぜひ、前向きに検討されることをお勧めします。
・堺様
弊社も人材に対する投資を始めたばかりです。世の中の流れが目まぐるしく変わり、船で使用する燃料もC重油からアンモニア水素に変わりました。
このような世の中の回転の早さに乗り遅れないためにも、早めに人材育成や投資が必要だと感じています。
まずは、先入観に囚われず採用してみると、新しい世界やチャンスが出てくるような気がします。私はOさんを採用してみて、コミュニケーションに国境はないなと感じました。
海外ではいろんな国の人が普通にいるので、国籍などは関係ないと思うのですが、日本にはそのような文化がないので、難しいところもあるかもしれません。
しかし、世界とビジネスをしていくのであれば、今回の採用はいい機会になったと思っています。
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