日本には多くの外国人が暮らしています。
出入国在留管理庁によれば、2020年12月時点で日本に居住する外国人は、2,928,940人で約293万人、これは日本の総人口の約2%にあたります。
2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、福島第一原子力発電所事故により、日本国内の外国人数が一時期は減少しました。しかしながら、訪日外国人の増加に伴い、2013年以降、日本国内における外国人の数は増加傾向にあります。
世界中がグローバル化し、英語が世界共通語になったとはいえ、残念ながら、日本国内においては、英語を話せる日本人がそう多くはありません。単一国家の島国である日本は、諸外国のように陸続きでなかったために共通言語が生まれず、そこで暮らす日本の人々も外国語を習得する必要性はなかったからです。
ですので、英語が十分に話せない日本人と日本に居を構える外国人が、英語だけでやりとりをしていくことは難しいでしょう。
そうなると、必然的に、後者が日本語を習得する必要性が出てきます。日本語を介して、日本人とコミュニケーションがとれるくらいの日本語力を求められているのです。
ですが、日本語が母語ではない外国人にとって、日本語の習得は楽ではありません。
彼らが日本語を簡単に覚えられる方法はないのでしょうか。
果たして、日本語が母語ではない外国人にとっての「やさしい日本語」とは何でしょうか。
本記事では、「外国人から見たやさしい日本語」について考えていきます。
「やさしい日本語」とは何か?
「やさしい日本語」は、「優しい」「易しい」の二つの意味が込められています。
「やさしい日本語」は、1995年1月に起きた阪神・淡路大震災をきっかけとして、取り組みが始まりました。
書く時は、文章をわかりやすく書いたり、漢字にルビを振ったりする。
話す時は、ゆっくりわかりやすい言葉で話したり、丁寧語で話したりする。これらが「やさしい日本語」の特徴です。
言語学者の庵功雄さんによれば、「『やさしい日本語』とは、日本語の語彙を絞って、漢字を減らし、文のパターンを30種類ほどにするといいです。かなりの内容が伝えられます」
「国内に住む外国人を対象にした国立国語研究所の調査では、英語よりも日本語のほうが『わかる』と答えた人が多いという結果が出ています。長期定住者は日本語のほうが理解しやすい」
「多言語といっても、定住外国人の多くが話す主な言語だけでも20近くあり、すべてに応じるのは現実的ではありません。
自動翻訳にはまだ問題が多く、正確に伝えるには母語話者によるチェックも必要で、現状では限界があります」
なるほど、長期定住者にとっては、むしろ日本語のほうが理解しやすいのですね。
しかしながら、自動翻訳にはまだまだ問題が山積みだと。
果たして、外国人からみた「やさしい日本語」とは何でしょうか。
外国人からみた「やさしい日本語」とは何か?
公益財団法人横浜市国際交流協会のホームページには、「やさしい日本語」について外国人のみなさんの声と題して、いくつかの意見が掲載されています。
台湾の出身者は、
「『やさしい日本語』は情報を伝えるための手段です。『やさしい日本語』=『子どもの言葉』ではありません。『やさしい日本語』は一方的な言葉でもありません。
『やさしい日本語』には正解もありません。」
インドネシアの出身者は、
「『やさしい日本語』は外国人としてはやさしいと便利と思います。さらに誰も頼りなく自分の足で出かけられる。
日本語も勉強なります。言葉を覚えると住みやすくなると思います。」
ブラジルの出身者は、
「敬語は使わないことです。基本、外国には礼儀などはあっても敬語という概念はありません。敬語で話されると変に緊張して会話が成り立たない経験がありますので、気軽に話しかけるのが良いと思います。」
このように、様々な意見があるようです。
改めて、「やさしい日本語」について考えてみます。
すべての外国人にとって、やさしいと感じる日本語は、何でしょうか。
出身国によって「やさしい日本語」は異なるはず
どの国の出身者かによって、「やさしい日本語」の認識は異なるのではないかと思います。
たとえば、中国や台湾など漢字圏の人々の場合、彼らにとっての「やさしい日本語」とは、漢字を使うことを意味します。
ヨーロッパ諸国から来た人々の場合、彼らは非漢字圏ですから、英語交じりの日本語で伝えたほうが伝わりやすいでしょう。
このように、相手がどの国の出身者かによって、「やさしい日本語」の捉え方は異なるはずです。
次回は、現状、世間一般での「やさしい日本語」について述べていきます。
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